土曜日の午後は音楽の話題。そして絵画や版画を制作する最中に聴いているBGMの話題である。
これまで40年以上、聴き続けてきたJAZZだが、50才前後を境目として同じJAZZでもそれまで聴いてきた激しくアグレッシブな演奏ではなくシットリマッタリ?系の演奏へと趣味が変わってきたという話は以前にした。
例えば、最近ではビル・エバンスのピアノ曲やジョー・パスのギターソロ曲などを聴いていることもご紹介してきた。その流れでここ数か月間ではまっているのが『トロンボーン』による演奏なのである。
管楽器はモダン・ジャズの花形と言えるが、煌びやかなトランペットの音や激しくブローするサックスの音に比べると同じ管楽器と言っても決して華やかな存在とは言えない。だが、他の管楽器には真似することができないゆったりと伸びやかな音の魅力があるのである。そして1950年代には「3管セクステット」という6人編成のスタイルも確立しているのである。つまりトランペット、サックスにトロンボーンを加えた3管編成にピアノ、ベース、ドラムスというリズム・セクションによるゴージャスな編成である。この形式、ファンキーやハード・バップと言われたモダン・ジャズスタイルの中でさかんに演奏され、数多くの名盤が生れたのである。
話は変わるが、20代後半まで住んだ千葉の街にジャズのライブハウスがあった。小さなお店だったが、ここにはピアノの山下洋輔、アルト・サックスの坂田明といった当時売れっ子のプレーヤーたちがライブ演奏に来ていて、30代頃まで、よく通っていた。その中に日本を代表するトロンボーン奏者の向井滋春さんがいた。ライブを聴きに行って終了後に同席してお酒を飲みながらお話しする機会があったのだが「トロンボーンは日本人には向いていない楽器なんだよ。何故かと言うと欧米人よりもリーチが短いのでスライド管を目いっぱい延ばす動きに苦労するんだ」ということを言っていて興味深かった。向井さん自身もリーチは短い方だという。それでもライブハウスで聴いた演奏はいつも素晴らしいものだった。その時、僕は「コンプレックスを情熱によって克服した人間は強い」と妙に納得できたのをよく覚えている。
さて、肝心の推薦プレイヤーと推薦盤である。1人目はやはり1950年代~1960年代にかけてのこの楽器のパイオニアとも言える名手、J.J.ジョンソン。『トロンボーンのディジー・ガレスピー』などとあだ名もついているほどの華やかな演奏スタイルである。推薦盤はその華やかさとは少し違うが、ワン・ホーン・カルテットによる『ブルー・トロンボーン』(
CBS)がこの楽器の伸びやかな音の特徴を生かし、リラックスした好アルバムとなっている。
もう一人もJ.J.とほぼ同時代のプレイヤーだが、ファンキーなムードの演奏を得意とするカーティス・フラー。推薦盤はテナー・サックス奏者で名コンポーザーとして知られるベニー・ゴルソンと組んだジャズ史に残る名盤中の名盤『ブルース・エット』(サヴォイ)である。ゴルソン作曲の名曲<ファイヴ・スポット・アフター・ダーク>や表題曲の<ブルース・エット>などのベテランコンビならではの快演を聴くことができる。
ちょっと、長くなったが、ブロガーのみなさんも是非、秋の夜長にトロンボーン・ジャズを聴いてみてください。
画像はトップがJ.J.ジョンソンのポートレート。下が向かって左からJ.J.ジョンソンの推薦盤『ブルー・トロンボーン』、カーティス・フラーの推薦盤『ブルース・エット』、同じくカーティス・フラーの1970年代録音の『クランキン』の各CDジャケット。
これまで40年以上、聴き続けてきたJAZZだが、50才前後を境目として同じJAZZでもそれまで聴いてきた激しくアグレッシブな演奏ではなくシットリマッタリ?系の演奏へと趣味が変わってきたという話は以前にした。
例えば、最近ではビル・エバンスのピアノ曲やジョー・パスのギターソロ曲などを聴いていることもご紹介してきた。その流れでここ数か月間ではまっているのが『トロンボーン』による演奏なのである。
管楽器はモダン・ジャズの花形と言えるが、煌びやかなトランペットの音や激しくブローするサックスの音に比べると同じ管楽器と言っても決して華やかな存在とは言えない。だが、他の管楽器には真似することができないゆったりと伸びやかな音の魅力があるのである。そして1950年代には「3管セクステット」という6人編成のスタイルも確立しているのである。つまりトランペット、サックスにトロンボーンを加えた3管編成にピアノ、ベース、ドラムスというリズム・セクションによるゴージャスな編成である。この形式、ファンキーやハード・バップと言われたモダン・ジャズスタイルの中でさかんに演奏され、数多くの名盤が生れたのである。
話は変わるが、20代後半まで住んだ千葉の街にジャズのライブハウスがあった。小さなお店だったが、ここにはピアノの山下洋輔、アルト・サックスの坂田明といった当時売れっ子のプレーヤーたちがライブ演奏に来ていて、30代頃まで、よく通っていた。その中に日本を代表するトロンボーン奏者の向井滋春さんがいた。ライブを聴きに行って終了後に同席してお酒を飲みながらお話しする機会があったのだが「トロンボーンは日本人には向いていない楽器なんだよ。何故かと言うと欧米人よりもリーチが短いのでスライド管を目いっぱい延ばす動きに苦労するんだ」ということを言っていて興味深かった。向井さん自身もリーチは短い方だという。それでもライブハウスで聴いた演奏はいつも素晴らしいものだった。その時、僕は「コンプレックスを情熱によって克服した人間は強い」と妙に納得できたのをよく覚えている。
さて、肝心の推薦プレイヤーと推薦盤である。1人目はやはり1950年代~1960年代にかけてのこの楽器のパイオニアとも言える名手、J.J.ジョンソン。『トロンボーンのディジー・ガレスピー』などとあだ名もついているほどの華やかな演奏スタイルである。推薦盤はその華やかさとは少し違うが、ワン・ホーン・カルテットによる『ブルー・トロンボーン』(
CBS)がこの楽器の伸びやかな音の特徴を生かし、リラックスした好アルバムとなっている。
もう一人もJ.J.とほぼ同時代のプレイヤーだが、ファンキーなムードの演奏を得意とするカーティス・フラー。推薦盤はテナー・サックス奏者で名コンポーザーとして知られるベニー・ゴルソンと組んだジャズ史に残る名盤中の名盤『ブルース・エット』(サヴォイ)である。ゴルソン作曲の名曲<ファイヴ・スポット・アフター・ダーク>や表題曲の<ブルース・エット>などのベテランコンビならではの快演を聴くことができる。
ちょっと、長くなったが、ブロガーのみなさんも是非、秋の夜長にトロンボーン・ジャズを聴いてみてください。
画像はトップがJ.J.ジョンソンのポートレート。下が向かって左からJ.J.ジョンソンの推薦盤『ブルー・トロンボーン』、カーティス・フラーの推薦盤『ブルース・エット』、同じくカーティス・フラーの1970年代録音の『クランキン』の各CDジャケット。