長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

253.『ジャズ喫茶という文化』 その二 -札幌編- 

2016-07-20 18:23:11 | JAZZ・ジャズ

北海道の放浪旅(そーだっけ?)は、さらに続く。先月27日、朝から夕方まで野幌森林公園を野鳥を探して徘徊した後、一度札幌のホテルに戻った。今晩は一人なのでシャワーを浴びて一休みしてから地下鉄に乗って「すすきの」まで夕食に出ることにする。

そーだ、今日は有名な「ラーメン横丁」に行って、道産子ラーメンを食べることにしよう。すすきのに到着、地下鉄の階段を上って外に出ると中心街。派手な電飾のネオンサインがピカピカと眩しい。ラーメン横丁のゲートをくぐってお店を物色。もちろんどの店がどんな特徴の味なのかさっぱり解らない。こういう時は行き当たりばったりが一番。ということで一番奥に近い店の暖簾を「えいっ」とくぐった。座席についてメニューから「味噌ラーメンと焼き餃子をください」と定番を注文し、辺りを見回すとサイン色紙が一面に張ってある。僕の目の前を見ると、なにやら見かけたようなローマ字が目に入ってくる。名前は判読しずらいがプロ野球のセ・パのチーム名が書いてあった。よーく見るとごひいきのチームの選手のものもある。ここはパの「北海道日本ハムファイターズ」の本拠地札幌ドームが近い。おそらくペナントやセパ交流戦で試合に訪れた選手がここに立ち寄ったのだろう。「いや、これだけサインがあるということは球界で評判のお店なのかもしれない」などと勝手に想像を膨らませるのでした。肝心のラーメンと餃子、さっぱり系で美味。満足して夜の街に出た。

まだ、宿に変えるには早い。ここでまた独り言、「きれいなお姉さんが横に座ってくれるお店でも探すか」 いや…やめておこう。一人旅、年甲斐もなく、うっかり地元の事情を知らずに入ってボったくられるのが関の山だ。ここで一つ閃いた。「そうそう最近また盛り返してきたジャズ喫茶通い、札幌にも名店が残っているかもしれないから探してみよう」ということに決定する。今はほんとに便利な時代である。ここでスマホの登場。「札幌・ジャズ喫茶」で検索するといくつか出てきた。ドラえもん状態。その中で『1971年創業の老舗ジャズ喫茶 すすきののBossa』というコピーが目に留まった。ジャズ喫茶の黄金時代の1970年代から続く老舗である。興味津々である。きっと期待に応えてくれるに違いない。ということで決定!! 地図をチエックして歩き始めた。

お店は大通りに面した解り易い場所にあり、極度の方向音痴の僕でも反対側の歩道からすぐに看板を見つけることができた。黒地に赤文字のなんともジャジーな看板。ワクワクする気持ちの高まりを抑えられない。足早に階段を上り2階に上がると、これまたありがちな重々しいドア。ゆっくり開けて中に入ると、さらにありがちな薄暗~い照明。そのアンダーグランドな空間に4ビートのジャズが大音響で流れていた。客は平日のためか2人。空いている席に着いて生ビールを注文。居心地がすこぶる良い。店の中を観察すると置かれている静物や貼ってある写真・ポスター類のセンスがとても良い。すぐに寡黙そうな、お姉さんが生ビールを運んで来てくれた(空いているしね)。うまい!ここまで来て日中の「森林歩き」の疲れがどっと出てきた。失敗したラーメン横丁をこの店の後にするんだった。そーすればもっとビールがおいしく飲めたのに…。

さて、ここからジャズ喫茶のセオリーどおり、何かアルバムをリクエストしなければ。せっかく北海道に来ているのである。北国の夜に似合う曲をリクエストしたい。「あれでもない、これでもない…そうだっ!あれだ、あれしかない、あれに決定!」決定するや否や、すっくと席を立ち、つかつかとレコードのコーナーに移動。ちょっとボクサーの具志堅洋行に似ているマスターに「あの…リクエストはできますか?」といつものように切り出した。背後には大きな本棚のようなLPレコードのコレクションである。その数4000枚以上とか。「ええ、どうぞ」というお返事。「アートファーマー・カルテットの”To sweden with love(和題:スウェーデンに愛をこめて)”のA面をお願いします」とリクエストした。このアルバムは1964年に北欧を訪れたトランペットの詩人、アートファーマーがスゥエーデンに古くから伝わるトラディショナル・フォークの数々の美しいメロディーに心惹かれて吹き込んだものである。潤いを含んだ北欧のメロディーと、ファーマーが奏でるフリューゲルホーン(柔らかい音の出るトランペット)が実にロマンチックな響きで伝わってくるものだ。いろいろなジャンルのジャズを聴いてきたけれど、最近は年齢のせいか「心に染み入って来る音」がいい。

ここでまた独り言「北国の夜にぴったりの選曲だなぁ…」と自画自賛し、詩人ファーマーの心の奥深く微染み入る音に涙するのでした。すっかり心地よくなってきたところでボチボチ宿に帰る時間帯となった。ここでお開き。最後にかかっていたのは、好きなベーシスト、ロン・カーターのリーダーアルバムから名曲”ノー・ブルース”が送り出してくれた。ほろ酔い気分で繁華街の喧騒の中を歩いて行くと頭の中ではまだ北欧の美しいメロディーが響いていて、思わず口笛で真似をしてみるのでした。また札幌に来ることがあったら、少しレトロで落ち着いたBossaに立ち寄ることにしよう。画像はトップがBossaのレコードコーナー。下が向かって左からすすきのの電飾看板、ラーメン横丁の入り口ゲート、Bossaの看板と店の中のカット3枚、今回リクエストしたアートファーマーのCDジャケット。

 

                   

 

 

 



最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございました。 (uccello)
2016-07-23 15:52:16
ブロガーのみなさん、いつもマイブログにお立ち寄りいただきありがとうございます。いいね!をいただいた方々、感謝します。
返信する

コメントを投稿