長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

196. 水彩画『応竜(おうりゅう)』を描く。

2015-06-22 20:50:09 | 絵画・素描

今月は前半に仕事が集中し、今までブログの更新ができなかった。ひさびさである。今月、絵画作品として『応竜(おうりゅう)』を主題とした水彩画を制作した。応竜は中国の古い地理書である『山海経(せんがいきょう)』の中に記載されている幻獣である。竜の1種とされ、四霊の一種として伝えられている。

中国神話では、竜は、帝王である黄帝に直属していた。4本足でコウモリ、あるいはタカのような翼があり、足には3本の指がある。天と地を自由に行き来することができ、水を蓄えて雨を降らせる能力がある。黄帝と敵対する軍勢が争った時に嵐を起こして黄帝軍を援護したとされている。しかしこの戦いで殺生を行ったために邪気を帯びてしまい、神々の住む天に上ることができなくなり、以降は中国の南方の大地に棲んだとされている。このことによって、応竜の住む南方の地域には降雨量が多いのに、その他の地域は干ばつに悩むようになったということだ。また『述異記』という書物によると「泥水で育ったマムシは五百年にして雨竜となり、雨竜は千年にして竜となり、竜はさらに五百年にして角竜となり、角竜はさらに千年にして応竜となり、年老いた応竜は黄竜と呼ばれる」と記載されている…つまり、応竜の先祖はマムシであり、竜の進化形であるということになるようだ。

西洋のドラゴンは悪魔の手先であり、古典絵画には「聖ゲオルギウスのドラゴン退治」に代表されるように聖人たちに打ち負かされる存在である。二元論的な正義と悪の象徴なのだろう。いっぽう、中国や日本など、東洋では竜は神聖な天部の使いで人類を救済してくれる聖獣としてのイメージが強いのだ。確かに東洋画に登場する天空を舞う竜の姿は昔から雄大で、神々しく人類の力強い味方として描かれている。今回の手漉きの和紙に描いた僕の『応竜』も伝統を模範にして神聖なイメージを持つように気をくばった。背景には神聖さがより強調されるように金泥の顔料を膠で練って塗ってみた。

季節は梅雨。降ったりやんだり、うっとうしい日々が続く。最近はこれに加え、環境破壊による地球温暖化の影響なのか、雷雨注意報や竜巻警報などが頻繁に繰り返され落ち着かない。いや、ひょっとすると、これは自然界を飛び回りそのパワーをコントロールする竜たちの人間界への無言のメッセージなのかもしれない。画像はトップが制作中の水彩画『応竜』の部分。下は同じく部分画像と制作で使用した画材の一部(画像の色が黄ばんでいるのはライティングによるもの)。

 

   



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1 コメント

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ありがとうございました。 (uccello)
2015-06-26 22:34:14
ブロガーのみなさん、いつもお立ち寄りいただきありがとうございます。いいね!をいただいた方々、感謝します。
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