宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

太陽光で小惑星が動く?

2012年06月07日 | 宇宙 space
NASAが探査ミッションに備えて行った小惑星の軌道測定から、
“ヤルコフスキー効果”を直接測ることに成功しました。


“ヤルコフスキー効果”とは、太陽の影響で天体の動きがわずかにずれる現象なんですねー
19世紀のロシアの技術者イワン・ヤルコフスキーが提唱しています。
実際には太陽光の吸収と熱放射のために発生するわずかな推進力で小天体が動くことを言います。

今回の観測では、アメリカ版“はやぶさ”ともいえる“オシリス・レックス”ミッションに備えて、
目標の小惑星“1999 RQ36(小惑星ベンヌ)”の軌道を詳しく調べています。

1999年と2005年、そして2011年に、アメリカの“ゴールストーン”とプエルト・リコ“アレシボ”で、
“1999 RQ36(小惑星ベンヌ)”を電波観測したんですねー

すると12年間に、重力計算で得られた軌道から160kmもズレている事が分かりました。
このズレが“ヤルコフスキー効果”によるものです。

“ヤルコフスキー効果”が最も大きくなる近日点(太陽に最も近づく位置)でも、
その力は地球の重力が10数グラムの物質に及ぼす程度のものなんですねー

なので、その小さな力が約6800万トンもの小惑星に及ぼす影響を知るには、
長期間にわたっる精密な測定が必要になります。

2011年の観測では、
地球から約3000万kmまで接近した小惑星までの距離を300mの誤差で測定しています。
これはニューヨークからロサンゼルスまでの距離を数cmの誤差で測定するようなものなんですねー
天体や観測所自体の大きさも計算に入れなければならいようです。

この新しい測定結果から1654年から2135年の間に“1999 RQ36(小惑星ベンヌ)”が、
地球から750万km以内に接近する機会は11回あることが分かったんですねー

しかも天文衛星“スピッツァー”の赤外線データと合わせると、
この小惑星がとても軽く水とほぼ変わらない密度であることも分かりました。

この事から岩石がゆるく集まってできた、
ラブルパイル天体(rubble pile:瓦礫の積み重なり)であるとことを示唆しているんですねー 
ちょうど表面物質の採取に適しているようです (^^

“オシリス・レックス”は2016年に打ち上げられ、
2019年に小惑星“1999 RQ36(小惑星ベンヌ)”に到着、
サンプルを採取したあと2023年に地球に帰還する予定です。

かなり先の話ですが、成功して無事に帰還するとイイですねー