宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

銀河より速く成長するブラックホール

2012年06月21日 | 宇宙 space
銀河の中心で恒星が集まる“バルジ部”と、そのさらに中心にある超大質量ブラックホールは、共に成長すると考えられてきました。



銀河の外観図
銀河円盤の中心にある膨らみが“バルジ”
全体を球状に包むのが“ハロー”と呼ばれる部分
画像はM104“ソンブレロ銀河”


でも、ブラックホールの成長だけが異様に速い銀河が見つかったんですねー
NASAのX線天文衛星“チャンドラ”の観測で、銀河の外からは影響を受けていないことがわかりました。

天の川銀河など多くの銀河の中心にはブラックホールがあるのですが、その質量は“バルジ部”に含まれる天体の層質量の約0.2%程度というのが一般的です。

でも銀河“NGC 4342(おとめ座)”と“NGC 4291(りゅう座)”の中心にあるブラックホールは違ったんですねー
典型的な質量のブラックホールの10倍から35倍も質量があります。





“チャンドラ”が観測したNGC 4342(左)とNGC 4291(右)
X線画像と赤外線画像を合成している


2つの銀河は約7500万光年と、約8500万光年の距離にあり、銀河としては近い部類に入ります。
これらの銀河の中心にあるブラックホールが、銀河自体と比較して重いことは以前から知られていました。

重い理由には「かつて接近してきた別の銀河の重力で、一部の恒星が引き剥がされた」が考えられるのですが、
引き剥がし現象が起これば恒星だけでなく、
銀河を囲む“ダークマター(暗黒物質)”のハローも引き剥がされるはずなんですよねー

そこでハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームが、“チャンドラ”を用いて銀河のハローの量を探りました。
銀河周囲の高温ガスが発するX線から、銀河内の重力の働きを推測して“ダークマター・ハロー”についての情報を得ます。

その結果、高温ガスが“NGC 4342”と“NGC 4291”の周りに広く分布していて、非常に多くの“ダークマター・ハロー”が存在することが分かりました。
なので、別の銀河による引き剥がしは無かったんですねー

このことから、銀河自体より速い速度で成長するブラックホールの存在が確認できたのですが、
どうしてブラックホールが、銀河全体より早く成長できるのか? っという疑問が残ります。

研究チームはブラックホールが成長する初期の段階に、大量の燃料補給があったと考えています。

銀河中心をゆっくり回っていた大量のガスを燃料に、ブラックホールは成長すればするほど成長の速度も速くなり、引き寄せて飲み込めるガスの量も大きくなります。

そうなると強いジェットが放出され、星の材料となるガスを吹き飛ばしてしまうんですねー
そして新しい星は誕生しにくくなることに…

要はブラックホールの成長が、銀河の成長を遅らせることになっていたんですね。