宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

地球から最も遠い銀河“SXDF-NB1006-2”を発見

2012年06月10日 | 宇宙 space
ハワイにある“すばる望遠鏡”と“ケック望遠鏡”を用いた観測から、地球から最も遠い129.1億光年かなたの銀河“SXDF-NB1006-2”を発見しました。  ビッグバンから、たった7.5億年後に作られた銀河なんですねー

この観測から、129.1億年前の宇宙空間おける中性水素ガスの割合が、現在に比べて多いことも確認されています。

137億年前ビッグバンによって宇宙は誕生したのですが、その直後の宇宙空間は水素原子が電離した陽子と電子のプラズマ状態でした。
約40万年後には宇宙の膨張により温度が下がり、陽子と電子が結びついて中世水素原子となります。

その後数億年間は中性水素ガスに埋もれた宇宙の暗黒時代が続くことにるのですが、
約2億~5億年後には、水素ガスの濃い部分から宇宙最初の星や銀河があちこちで作られるんですねー

中性水素は作られた星々が放つ紫外線により、再び陽子・電子のバラバラの状態に電離したプラズマ状態になります。
これが太古の宇宙における大イベントの一つ“宇宙再電離”で“宇宙の夜明け”ともいわれています。

この“宇宙の夜明け”はビッグバンから3億~10億年の間に起こったと推測されているのですが、メカニズムは今もよく分かっていません。
「いつどのように起こったのか」、「どのような種類の天体が引き起こしたのか」っといった具体的な事が分かってないんですねー
これは宇宙最初の星・銀河の性質や形成過程に深く関わる大きな問題になっています。

“宇宙の夜明け”を詳細に調べるには遠方の銀河を探し、見つかった銀河の数・明るさを測定することが効果的です。
これは宇宙空間に存在する中性水素ガスによって遠方の銀河からやってくる光が暗くなり、銀河の見かけ上の数が減るからなんですねー

つまり、宇宙の歴史の各時代で銀河の数・明るさを比較することによって、再電離の起きた時代を特定することができる っということです。

暗く、数少ない遠方の銀河を効率的に発見できるのか心配になりますが、
これは一度に広い視野を観測できる主焦点カメラ“Suprime-Cam”を持つ“すばる望遠鏡”の得意技なんですねー
これまでに数々の最遠方銀河の記録を塗り替えてきた実績があります。

でも、より遠くの銀河からの光は、宇宙の膨張と共にその波長が伸びています。
赤方偏移といい、放たれた直後は青かった光が、赤くなってしまうんですねー

なので赤外線に近い波長帯での観測が必要となるのですが、“Suprime-Cam”では赤方偏移7を越える遠方銀河の発見が難しく感度を上げる必要がありました。

従来に比べて約2倍の感度を持つ新たな検出器が“Suprime-Cam”に搭載されたのが2008年、そして“SXDF-NB1006-2”を発見することができたという訳です。

これにより宇宙の歴史を遡るにつれて中世水素ガスの割合が増えることが確認されました。
129.1億年前には水素ガスの約80%が中世の状態である可能性があるようです。

一方、遠方の宇宙における銀河の数を正確に調べるためには、さらに広い視野を観測する必要があります。
“すばる望遠鏡”では“Suprime-Cam”の7倍もの視野を観測できる新装置“Hyper Suprime-Cam”を取り付けようとしています。

“Hyper Suprime-Cam”による広視野の銀河探索によって赤方偏移7以上の遠方の銀河が数多く発見できます。
夜明け間際の宇宙の姿や、初代天体の物理的性質が解き明かされるのが楽しみです (^^