宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

電波望遠鏡群で超巨大ブラックホールに迫る

2012年10月03日 | 宇宙 space
天の川銀河を含め、宇宙に無数に存在する銀河の多くには、中心に超巨大質量ブラックホールが存在します。

その中でも活発なブラックホールは、最大で高速の99%まで加速されたプラズマ粒子の非常に細いジェットを噴出してるんですねー
でも、ジェットがブラックホールの近くからプラズマ粒子が、どのようにして放出・加速されるかは詳しく解明されていません。








超巨大質量ブラックホールから出る
ジェットの創造図





今回の研究は、ブラックホール半径の数倍程度という非常に近い領域を観測し、ブラックホールから噴出するジェットの根元の大きさを初めて測定することに成功しています。
これによりジェットの形成・放出に、ブラックホールの回転が関わっている可能性があることが分かったんですねー

“おとめ座”の方向約6300光年かなたにある“M87銀河”は、高速ジェットを噴出するブラックホールを持つ銀河としては最も近くにあります。(中心にあるブラックホールの質量は、太陽の約62億倍もあります。)
なので、ジェットの放出・形成を調べるのに格好の対象なんですねー

研究では、アメリカの離れた3か所にある電波望遠鏡のデータを、VLBI(超長基線電波干渉計)という技術で合成しています。
これにより巨大望遠鏡に匹敵する解像度を得ることができるんですねー
これまで技術的に難しかった1.3ミリという短波長の電波で観測することで、よりブラックホールに近いジェットの根元まで見通すことが可能になりました。

観測の結果、ブラックホールのジェットの根元の大きさが、ブラックホール半径の5.5倍だという結果が得られています。

ブラックホール半径の7倍というのが、ブラックホールが回転していない場合に予測される根元の大きさです。
観測の結果がやや小さいので、回転するブラックホールであることが推測できるんですねー

また、観測から得られた値は、より長い波長で見たジェットの大きさや、電磁流体力学の理論に基づく予測とも合致しているようです。




“すばる望遠鏡”による“M87銀河”の
光学画像(上)
波長15センチの電波望遠鏡によるジェット
(右下)
波長7ミリの電波望遠鏡によるジェット
(左下)


今回の研究はジェットの形成・放出に、
ブラックホールの回転や磁場が関わっている可能性を示唆するものです。
今後、アルマ望遠鏡など高感度の電波望遠鏡を追加することで、観測網をさらに拡張するとか…

ブラックホールの直接撮像や、ジェットの放射・加速機構のさらなる解明が期待できますね。