宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

民間宇宙船の開発は、ボーイング社とスペースX社に決定。

2014年09月25日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
NASAが支援してきた、
国際宇宙ステーションへ、宇宙飛行士を輸送する宇宙船の開発。

この開発企業にボーイング社とスペースX社が選ばれ、
早ければ、2017年にも有人飛行が実施されるかもしれないんですねー
ボーイング社の“CST-100”

NASAではかねてより、
国際宇宙ステーションへの物資や宇宙飛行士の輸送を、NASAのロケットや宇宙船を使わずに、民間企業に委託しようという構想を持っていました。

その後2006年に、
「商業軌道輸送サービシズ」と名付けられたプログラムが立ち上げられ、構想を実現に移す動きが始まります。

これまで、無人の補給船については計画が達成されていて、
スペースX社が、ファルコン9ロケットとドラゴン補給船を、
オービタル・サイエンシズ社が、アンタレス・ロケットとシグナス補給船の開発に成功しています。

また、両社は実際に国際宇宙ステーションへ、
貨物を輸送する契約をNASAと結んでいて、
その契約の下で、現在も定期的に輸送船が打ち上げられています。

一方、貨物輸送とは別に、
有人宇宙船と、それを打ち上げるロケットの開発プログラムも、
並行して進められてきました。
スペースX社の“ドラゴンV2”

このプログラムでは、
これまでに2つのラウンドを経て、ボーイング社とスペースX社、シエラ・ネバダ社の3社が残り、第3ラウンドで、それぞれ宇宙船の開発を進めてきました。

そして今回、NASAが発表したのが、
第3ラウンドの勝者となる、ボーイング社とスペースX社なんですねー

この2社は、第4ラウンドへの参加資格を得た企業で、
NASAからのさらなる資金提供を受けつつ、
実際に国際宇宙ステーションへ向けて打ち上げられる、
有人宇宙船とロケットの開発を、さらに進めることになります。
シエラ・ネバダ社の“ドリーム・チェイサー”

なお、敗れたシエラ・ネバダ社からは、
今のところコメントは出ていないので、
これまで開発を進めていた宇宙船ドリーム・チャイサーを、今後どうするのかは分かっていません。

JAXAとの開発協力が伝えられていたので、
生き残ってくれれば、リフティングボディーの機体が、宇宙へ行くチャンスがあるのかもしれません。


ボーイング社は、
CST-100と呼ばれるカプセル型の宇宙船を開発していて、
打ち上げにはロッキード・マーティン社が開発した、
アトラスVロケットが使用される予定。

スペースX社が開発しているドラゴンV2もカプセル型の宇宙船で、
こちらは自社開発のファルコン9ロケットを使い打ち上げられます。

また契約には、
自社による最低1回の有人宇宙飛行を実施することが定められています。

これは、宇宙船とロケットの打ち上げから軌道変更、
国際宇宙ステーションへのドッキング、地球への帰還、
といった一連の流れを実施し、
NASAに機能や性能、安全性などを証明するためのものです。

どちらが先に打ち上げられるかは、まだ分からないのですが、
初打ち上げは2017年に予定されています。


そして、この試験が完了し、NASAによる評価も完了すれば、
いよいよ本番。有人宇宙飛行が実施されることになるんですねー

スペースシャトルの引退後、
NASAは宇宙飛行士の輸送を、ロシアのソユーズ宇宙船に任せてきました。

なので、これらの宇宙船が開発されれば、
その依存から抜け出すことになり、
何より、アメリカの地から、
再び有人ロケットの打ち上げが行われることにもなります。

小さな銀河の中心に、超大質量のブラックホールを発見!

2014年09月24日 | 宇宙 space
ハッブル宇宙望遠鏡を用いた観測で、
超小型の矮小銀河の中心に潜む、「超大質量」のブラックホールが見つかりました。

超大質量ブラックホールが存在する銀河としては、
観測史上最小になるようです。
矮小銀河を観測するために、
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像。

この超大質量ブラックホールは、
超小型ながらもひじょうに高密度で、星が凝集している銀河“M60-UCD1”の中心部で発見されました。

地球から約5000万光年にある“M60-UCD1”には、約1億4000万個の星が詰まっているのですが、直径は天の川銀河の500分の1に当たる300光年しかないんですねー

ブラックホールは、
光さえも外に出られないほどの、極めて強力な重力を持つ天体です。




超大質量ブラックホールは、
これまで天の川銀河を含む大型銀河の中心でのみ見つかっていて、
これほど小型の銀河で発見されたのは、今回が初めてのことでした。

驚いたことに、このブラックホールの質量を算出したところ、
“M60-UCD1”銀河の全質量の15%に上るという結果が出ることに…

このブラックホールは、太陽の2000万倍、
天の川銀河の中心にあるブラックホールの、5倍に相当する質量を持ってたんですねー

なぜ小さな銀河に、これほど大きなブラックホールがあるのでしょうか?

考えられる説明の1つとして、
はるかに大型の銀河の一部たった“M60-UCD1”が、
銀河が分裂して、ブラックホールを含む部分が残されたというものです。

もし、この説が誤りで、
「超コンパクトな矮小銀河の内部には、一般的に超大質量ブラックホールが潜んでいる」
ということが、さらなる観測によって判明した場合には、
学説の再考が求められることになるそうです。

さらに今回の発見は、天の川銀河を含む宇宙の領域に、
これまで観測されていた数の2倍のブラックホールが、
存在する可能性があることを意味するそうですよ。

青い星が物語る、黄色超巨星が超新星爆発を起こす理由。

2014年09月23日 | 宇宙 space
ハッブル宇宙望遠鏡の観測によって、
3年前に超新星が出現した場所に、明るい青色の星が発見されました。

でも、この超新星の元になったのは、
これまで、重力崩壊型の超新星爆発を起こさない考えられてきた、
黄色超巨星だったんですねー
子持ち銀河M51。
(左)超新星“2011dh”出現前(2009年撮影)と、
(右)出現後(2011年7月8日撮影)。

超新星“2011dh”は2011年6月に、子持ち銀河の愛称で知られている銀河M51に現れました。

重力崩壊型に分類されるこのタイプの超新星爆発は、赤色超巨星か、青色のウォルフ・ライエ星の一生の最期に、起こると考えられてきました。

でも爆発前の画像で、その場所にあったのは、黄色超巨星だったので、論議を巻き起こすことになります。


爆発後の経過のイメージ図(上)と、ハッブル宇宙望遠鏡での観測画像(下)。

ただ、黄色超巨星でも連星系を構成している場合なら、
外層を伴星にはぎ取られて黄色超巨星になったところで、
超新星爆発を起こす可能性があるようです。

これを裏付ける材料の1つとして、
まず、2013年にハッブル宇宙望遠鏡の観測から、
黄色超巨星が爆発後に消えていることが確認されています。

もう1つの材料は、超新星の残光が収まった後に、
黄色超巨星の伴星だった青い星を見つけることでした。

そして、超新星の出現から3年後になる今年8月、
ハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラを使って、
紫外線観測が行われました。

すると超新星の跡に、
予想通りの青い高温の星が観測されたんですねー

今回の研究により、
超新星の進化の過程を満足いく形で説明できました。

理論予測と観測とを密接に組み合わせた今回の研究は、
重力崩壊型超新星や連星系の進化の理解に、
大いに役立っていくようですよ。

NASAの新宇宙船オリオン、試験機は12月に打ち上げ

2014年09月22日 | スペースシャトル ~ SLS, オリオン
今年12月に実施予定のEFT-1ミッションで使用される、
オリオン宇宙船の試験機が公開されました。
オリオンは現在NASAとロッキード・マーティン社が開発中の宇宙船で、
NASAの宇宙船としては、スペースシャトルの後継機にあたります。

ただ、地球の低軌道までにしか人を運べなかったスペースシャトルとは違い、
オリオンはアポロ宇宙船のように月へ、
そして、さらにその先の火星や小惑星にも人を運ぶことができる宇宙船として開発が進められています。

オリオンの最初のミッションは、探査飛行試験1(EFT-1)と名付けられていて、
大型の人工衛星の打ち上げに使われているデルタIVへビーロケットに、
無人のオリオンを搭載して打ち上げられることになります。

今回完成したオリオン試験機は、
ケネディ宇宙センターのペイロード・ハザーダス・サービシング施設に移され、
燃料の充填が行われた後、上から被せるような形で打ち上げ時の緊急脱出システムが取り付けられます。

それが終われば、いよいよデルタIVヘビーの上に搭載され、打ち上げです。
なお、ロケットはすでに到着していて、こちらも並行して準備作業が進められている段階なんですねー

EFT-1では打ち上げ後に、地球の軌道に乗り、まず地球低軌道を1周します。

その後、デルタIVの第2段エンジンを再点火し軌道の高度を上げることに…
約5800キロに達した後、地球の大気圏に向けて落ちていくことになります。

そして大気圏に再突入後、パラシュートを開いて太平洋上に着水し回収される予定です。


大気圏再突入時の速度は秒速約9キロにもなり、
耐熱シールドが受ける温度は摂氏約2200度に達するんだとか…

この試験により、オリオンの電子機器や耐熱システム、パラシュートなどが、
設計通りに機能するか確認するんですねー

ただ、EFT-1で使用されるオリオン試験機には太陽電池は搭載されず、
内蔵バッテリーでの駆動になるようです。

また、生命維持システムやスラスターなども搭載されず、
サービス・モジュール部は、実質的に形だけのものになっています。
このEFT-1が完了した後、
得られたデータから、さらにオリオンの開発が進められ、
2018年11月に探査ミッションEM-1が実施される予定です。

EM-1でもオリオンは無人なんですが、
打ち上げに使用されるロケットには、現在オリオンと並行して開発が進められている、
新型ロケットのスペース・ローンチ・システムが使われることになります。

EM-1では地球から月まで行き、
月の裏側を回って地球に帰還するルート(自由帰還軌道)での飛行が行われ、
オリオンの全システムと、スペース・ローンチ・システムの能力が試験されます。

そしてEFT-1とEM-1が無事に完了すれば、
いよいよ次はオリオンに宇宙飛行士を乗せた、有人飛行が行われるようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 超大型ロケット“スペース・ローンチ・システム”の開発が正式決定!

彗星への着陸探査、第1候補地点が決定。

2014年09月21日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
彗星探査機“ロゼッタ”に搭載された着陸機“フィラエ”による彗星着陸探査の
第1候補地点が決定しました。
彗星に着陸する“ロゼッタ”探査機の“フィラエ”着陸機。

“ロゼッタ”は、打ち上げから10年かけて今年の8月6日に、
“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”の軌道に到達。

その後、彗星を周回し観測しながら、
史上初となる、彗星核表面への着陸探査のための候補地点選定を進めていました。

“ロゼッタ”が100キロ以内に接近して、
次々と送られてきた“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”の画像からは、
2つの物体が合わさったと思われる彗星の表面が、
ゴツゴツしている様子が明らかになっています。
“ロゼッタ”が8月16日に撮影した彗星。
白く囲んだ場所が“フィラエ”の着陸候補地。
2つの分かれた塊のうち、小さい方に3か所、大きい方に2か所ある。

そして、地形や表面の物質の科学的価値などを考慮して、
5つの着陸地点が候補になります。
彗星の頭部に位置する「J」地点。

第1候補となった「J」地点は、
直径が約4キロの彗星の頭部の中では、もっとも幅が広い部分に位置しています。

「J」地点の探査からは、彗星の始原的な物質を分析することができ、
彗星核の特質や、活動のプロセスの解明につながると期待されていて、
この場所を第1候補とする決定は、満場一致だったそうです。

第2候補となるバックアップ地点は、
彗星の体の部分にある「C」地点になっています。

今後は、“ロゼッタ”に搭載された航法カメラとOSIRISカメラの観測データを組み合わせ、
着陸地点の3次元高低差モデルを作成して、着陸に備えることになります。

彗星と地球との距離が遠いので、
“ロゼッタ”との間には長い通信タイムラグが発生します。
なので、着陸ミッション中の“フィラエ”や“ロゼッタ”と、
リアルタイムで通信することはできないんですねー

“フィラエ”は自律的に動作するようになっているのですが、
楕円形に広がを持つ着陸予定地点の中で、
ピンポイントに降りる場所を指定することは難しいことになります。

設計段階では、
“フィラエ”は多孔性の氷の表面からダスト状の地形まで検討されていて、
45度までの勾配にも耐えられるようになっています。

でも、降りた場所に岩やクレバスが存在し、
“フィラエ”の姿勢が安定しない可能性も考えられます。

また、活動中の彗星の表面からガスが噴き出して、
降下中の“フィラエ”の位置が変わってしまうといった懸念もあります。
“フィラエ”の着陸が成功すれば、
搭載した太陽電池が十分に発電可能な間は、探査ミッションを続けることができます。

彗星が太陽から2天文単位の距離まで接近する、
2015年3月末まではミッションを継続できるようですよ。