akikoの「活動」徒然記

活動弁士佐々木亜希子の身の周りの出来事やふと感じたこと

23日、茅ヶ崎館での『浮草物語』

2006-04-25 | 活弁
茅ヶ崎館での『浮草物語』活弁上映、いらして下さった方々本当にありがとうございました。
他とは一味違った茅ヶ崎館での食事付き上映会、一度は皆さんに足を運んでいただきたいと思っています。四季折々、小津監督が愛でた花々が咲き、旬の食べ物が楽しめます。

芸人や芸能人は、今でこそ地位やイメージが上がり卑下することなどない立派な職業ですが、昔はいくら歌舞伎の高島屋の流れを汲んでいても、いくら人気があっても、どさ回りの旅芸人などしょせん浮草稼業のやくざな商売という風潮がありました。そんな中、息子だけは学を身につけさせ堅気にしたいと、父親と名乗らずに旅から旅へ、仕送りをしながら息子を見守り続ける一座の座長、喜八(坂本武)。昔の女であり息子の母親であり今も喜八の良き理解者であるかあやん(飯田蝶子)、喜八と現在いい仲の一座の姐御(八雲理恵子)と、娘役の妹分(坪内美子)。愛憎悲喜こもごもの人情劇に、特に年輩の方々が目をうるませていらっしゃったようです。

上映後は食事をしながら皆さんに御挨拶をさせていただきましたが、どのテーブルでも次々と質問や感想が飛び出し時間が足りないくらいでした。一期一会、いろんなお話ができ、とても楽しかったです。感謝申し上げます。

今回は、せっかく風情と歴史のある茅ヶ崎館で『浮草物語』を語るのだしと、初めて着物で語らせていただきましたが、馬子にも衣装で予想以上に喜んでいただき、甲斐がありました。
実はこれまで、帯で締め付けてしまうと語る時に声の変化がつけにくくなるため多少敬遠していたのですが。渋い粋な黒の江戸小紋は、(先日ブログで紹介しました)染師の友人、岩下江美佳嬢の手掛けたものです。感謝です。

着物好きで着付けをなさっているお客さまなどは、作品の中でも見方が違いました。
「昔の女優さんのどの着物も、またそれぞれの着方もとっても素敵ね!姐御おたかも、清純派の妹分おときも、舞台の衣装と楽屋裏での普段着とまた違って素敵だったわ」
かあやんの着物もそう、それぞれの衣装の細部まで、多分小津監督はしっかりこだわっています。それぞれの役柄と個性をうまく演出する着物を選んでいると思いますし。
小津監督は、その人の個性や持っている芸をそのまま生かして作品を作るのが得意な人だったと思います。役者の個性からイメージを膨らませて、脚本を練り上げていくという作品作りもしばしばでした。
姐御のおたか役、八雲理恵子(昭和8年恵美子から改名)は、幼少から芸事に親しみ、17才で山村流舞踊の名取りに、その後大阪南地で名妓と言われていました。立ち居振る舞いや、着こなしが板に付いていて、艶っぽいのはもっともです。ちなみに、妹役の坪内美子は、銀座でホステスをやっていたのをスカウトされ松竹入り、しっとりした美貌とさわやかな色気がある女優さん。
今回は「二人の女優さんもなかなか素敵で気に入りましたねえ」という感想もいただきました。

これらの登場人物のイメージを生かせるように、と思いながら語らせて頂きましたが。さて。

皆さんが帰られた後は、茅ヶ崎館の若旦那森さんと遅くまで小津映画、茅ヶ崎館でのエピソード、芝居等々の話で盛り上がり、これまた楽しい思いをさせていただきました 。

茅ヶ崎へお越しの際は、ぜひ立ち寄って、宿泊してみて下さい。どの季節もお庭には花があり、百七年になる木造の建物は、落ち着いた気持ちになります。海外での小津監督の映画祭ポスターなども時々張り替られています。
全国から小津ファンがわざわざやってくる宿です。関心のある方とは、森さん(イケメンです。あ、すいません)、おしゃべりが止まらなくなるみたいです。

次回はトーク付きにしようというお話も。また次回の茅ヶ崎館活弁公演にも足を御運び下さいね。
コメント (5)
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