入院中見舞いのお返しを持って、兄夫婦が久しぶりにわが家を訪れた。
先月、兄夫婦はそろって病気し、同じ病院に入院した。大変だったようだ。兄は肺に水がたまる病気でl呼吸困難に、その原因、最初はよく分からなかったようだ。一方兄嫁は大腸がんの手術。
3つ年上の兄はいたって元気だった。毎日グランドゴルフに行くのが楽しみと言っていた。ところが、病院に見舞うとすっかり様子が変わっている。元気な兄の姿はすっかり影を潜めていた。
話を聞くと、最初は掛かり付け医に、次は専門医、最後は大病院と次々に回されたようだ。検査が大変だったという。
最後の病院ではドクターに職歴を聞かれたという。「過去に「トラックの運転をされていませんでしたか」と。「かなり以前のことですがトラックの運転手でした」と答えたところ。
ドクターの診断が下された。「中皮腫です。この病気の原因はアスベストによるものです」。
運転していたのは多分30年くらい前のこと、今にしてアスベストの被害に遭うとはと、ビックリ仰天したという。中皮腫や肺がんは全国で多数発生しており、中皮腫1人に対して、肺がん2人の割合、原因はそのほとんどがアスベスト(石綿)を吸うたためとの国際会議の報告もある。
トラック運転でなぜアスベスト。不思議に思ったが、道路に散ったアスベストはトラックの走行のたびにタイヤ付近にたくさん付着するそうだ。仕事を終えたときには必ず掃除をする。そのためトラック運転手がアスベスト被害にあう機会が多かったそうだ。
治療も大変だったようだ。肺の水を入れ替える内視鏡の手術、部分麻酔での出術は耐えられないほどの痛みがあったという。
入院中の兄を見舞ったときの疲れた姿を見て、随分と心配になったものだ。
今日は顔色も随分良くなっている。だが、以前の元気さはあとかたもなくなくなっている。歩行も困難になっている。
退院のさいにドクターが、労災申請をしても中皮腫では多分認められないでしょう。介護保険の認定申請はしておきますとおっしゃったそうだ。
兄は、近いうちに介護保険の認定を受けることだろう。いよいよ寂しい限りだが、明日は我が身とよそ事には思い得ない。