昨日は兄夫婦が訪れ、会話不足のわが家がほんの一時、賑やかになった。
今日も引き続き珍客が訪れた。
朝散歩に出かけようと玄関を開けると、羽化したばかりのカブトムシが背中を下にして足をばたつかせている。透き通った薄い2枚の羽根はまだしまわれていない。
遠い昔の少年時代を思い出した。朝早く近くのクヌギ林にカブトムシを求めてよく歩き回ったものだ。残念なことに1匹も捕まえた記憶がない。
そのカブトムシが家の前に転がっている。それもコンクリートの石畳の上に。どこからやってきたのだろう。
先日は羽化したばかりのセミが玄関の呼び鈴のそばに転がっていた。紅葉の植わった土のあるところまではかなりの距離がある。
無邪気な子どものように嬉しくなって、そっと小さなお客様を手のひらにのせた。そのお客様、逃げ出そうと力一杯もがいてくる。その力の強いこと。羽もだんだんとお尻の下に仕舞われてくる。
カブトムシがいたよと“うちの奥さま”にご報告。奥さま籠を探してこようといわれる。
だが、籠に入れれば必ず死ぬことになるだろう。短い時間だが老人夫婦を楽しませてくれたお客様だ。そっと紅葉の木に這わせてやった。
お客様、上の方に昇るだろうと見ていたら、下の地面に向かって降りてゆく。その早いこと早いこと。終いには木の根のところにはえている苔の中にもぐりこみ、消えてしまった。
また、来てくださいね。今朝はほんとうにご苦労さまでした。と、思わず“うちの奥さま”と顔を見合わせた。