電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響モーツァルト交響曲全曲定期演奏会Vol.9で「小夜曲」やホルン協奏曲等を聴く

2010年02月14日 06時42分20秒 | -オーケストラ
ようやくスケジュールが空いた週末の土曜日、山形交響楽団によるモーツァルト交響曲全曲定期演奏会Vol.9 を聴きました。妻と二人、早めに会場の山形テルサに行き、今回は二階のバルコニー席を確保、少し時間があるので、妻は手芸用品店へ、私は駅ビル内の書店とCDショップとをのぞきます。時間をみて会場に入ると、戸外は冷えていても内部はぽかぽかです。足台のついた、ゆったりとした椅子にすわり、気持ちもほっとします。

恒例の指揮者によるプレコンサートトークでは、音楽監督の飯盛範親さんが本日のプログラムについて解説をしてくれました。それによれば、前半は弦楽合奏による曲目で、ディヴェルティメント ニ長調 K.136、アダージョとフーガ ハ短調 K.546、そしてセレナード ト長調 K.525「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の三曲、後半はホルン協奏曲第3番とK.95のニ長調の交響曲というものです。

今日は、別の面で変化もありまして、コンサートマスター席には、長岡京室内アンサンブル(*1)の音楽監督で、高木和弘さんやヤンネ館野さんの先生でもある、森悠子さんが座ります。森さんは、パイヤール室内管弦楽団などヨーロッパで長く活躍され、五年ほど前に日本に帰って来られたそうで、飯森さんのご縁で客演と指導をお願いしたのだとか。

さて、楽員が登場します。最初は弦楽合奏だけの曲目ですので、編成は小規模に、8-8-6-5-3、すなわち第1・第2ヴァイオリンがそれぞれ第4プルトまで、ステージの左右に対向配置で、右奥にヴィオラが第3プルトまで、左奥にチェロが5、中央奥にコントラバスが3、というものです。モーツァルト定期らしく、女性奏者はカラフルなドレスで、視覚的にも華やかです。

最初の曲目、ディヴェルティメント ニ長調 K.136 は、耳馴染みのある音楽です。うーん、何かのテーマ音楽に使われたような気がしますが、思い出せません。第1楽章:アレグロ、第2楽章:アンダンテ、第3楽章:プレスト。たしかに、とても澄んだ音で、繰り返しを実行して弦楽合奏の魅力をいっぱいに味わいました。

続いて「アダージョとフーガ」ハ短調K.546 です。チューニングのあと登場した指揮者は、会場が完全に静まるまでじっと待ちます。低弦がリードする劇的なアダージョ。なるほど、ハ短調の響きです。緊張感に満ちた音楽はやがて全休止してフーガへ。ただし、バッハ風というよりは、ところどころ小刻みにふるえるような音を配し、たしかにヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの刻印が記されています。

前半の最後は セレナード ト長調 K.525「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、いわゆる「小夜曲」です。第1楽章:おやおや、飯森さん、指揮棒なしです。山響としても、スクールコンサートなどで頻繁に演奏する曲目の一つでは?百人をこす規模の大オーケストラで聴く豪華なセレナードもよいけれど、30人くらいの弦楽アンサンブルで聴く「アイネクライネ」もいいものです。第2楽章:ロマンツェ、アンダンテ。ここからは指揮棒を持って。繊細なサワサワいう音が印象的。第3楽章:メヌエット、アレグレット。軽やかで短い曲です。第4楽章:ロンド、アレグロ。バランスを取りつつ、大きな音、強い音も聴かせます。たいへん楽しく聴きました。

指揮者は、1st-Vn、2nd-Vn、Vla、Vc のそれぞれトップを立たせて拍手を受け、そして楽員全員が起立して聴衆の拍手を受けます。紫色の上下の森さんは厳しくもあり、また心やさしい方のようで、犬伏さんと時々言葉をかわしながら、うれしそうです。

ここで15分の休憩です。当記事も、前半で休憩です。以下は、夜に追記したものです。

演奏会の後半、指揮者とともに本日のソリスト、山響主席ホルン奏者の八木健史さんの登場です。モーツァルトのホルン協奏曲第3番、第1楽章アレグロはオーケストラだけで始まり、ホルンは「お待ちかね!」といった風情で開始します。ところがこれが、朗々と鳴る音に思わず魅了されるという仕掛けです。カデンツァの部分も、ラッパの内部に突っ込んだ右手を駆使しているのでしょうか、ちょっとヴァイオリンの重音みたいな面白い音を出しています。ご本人はいたって普通の顔で、安定して吹いていますので、思わずすごいぞ~と感嘆!
第2楽章:ロマンツェ、ラルゲット。音域の広いホルンの奏者は、モーツァルトにとって愛すべきキャラクターなのでしょうか、それともロイトゲープという奏者が愛すべきキャラクターだったのでしょうか。楽器を自在に操り牧歌的な旋律を歌う八木さんの様子は、堂々たる貫禄なのですけれど。
第3楽章:アレグロ。楽しい狩りのロンドです。オーケストラに対し、ホルンが強い音で主張したかと思うと、ぐっと弱い音でリズミカルなフレーズを吹きます。しかも、やすやすと吹いているように見えます!いやー、素晴らしい!思わずブラボーの声が飛び、山響の管楽器セクションの奏者の皆さんもニコニコです。

協奏曲の醍醐味を味わった後で、こんどは 交響曲ニ長調K.95 です。ステージ中央にフルート(2)、オーボエ(2)、バロック・トランペット(2)が加わります。おやおや、解説ではティンパニが入るとありますが、実際にはティンパニは加わらず、ファゴットの高橋さんが加わります。
第1楽章:アレグロ、ニ長調、2分の2拍子、ソナタ形式。
第2楽章:アンダンテ、ト長調、4分の3拍子。第2ヴァイオリンの持続音を背景に、フルートが明るく活躍します。弦の上に乗るフルートの音色は、あくまでも素直です。
第3楽章:メヌエット、ニ長調、4分の3拍子。けっこう活発な生気に富む音楽だと思っていると、一転して表情を曇らせ、また生気を取り戻したように、オーボエ、ファゴット、トランペットが身振りのはっきりした旋律を奏します。
第4楽章:アレグロ、ニ長調、4分の2拍子。フルートはお休みで、弦楽に加えてオーボエ、ファゴット、トランペットが働きます。ちょいと後年のモーツァルトを思わせるような力強さを持った、晴れやかで明快な音楽のフィナーレです。こういう言い方もなんですが、モーツァルトの少年時代、現代ならば中学生頃の作品とはとても思えない、けっこう面白い立派な作品ですね~。気持ちよく堪能いたしました。



終演後、例によってファンの集いが開かれました。なんだか今回はずいぶん人数が多いような気がします。もしかすると、森悠子先生目当ての弦楽器ファンや、ホルン協奏曲の感激さめやらぬ学生吹奏楽部員なども混じっているのでしょうか。ずっと後ろの方から、ようやく写真が撮れました。



そうそう、配布されたチラシの中に、うれしいニュースもありました。以前、ベートーヴェンの七重奏曲を聴く機会を得た「パストラーレ室内合奏団」が、第2回めの演奏会を開くというのです。4月1日というから、まさかエイプリルフールではないでしょうが、曲目がなんとシューベルトの八重奏曲!たしか、前回のリクエストに書いたような気がします。もう一つは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第3番。6時45分、文翔館議場ホールにて。一般は前売2,000円、当日2,500円。うーん、行きたいぞ~。年度初めの平日、さて間に合うかどうか?

(*1):長岡京室内アンサンブル
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