電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形弦楽四重奏団第72回定期演奏会でモーツァルト、ベートーヴェン、クーラウを聴く

2019年07月18日 13時56分09秒 | -室内楽
梅雨寒の言葉どおり涼しい日が続いたのが一転して蒸し暑い陽気になった七月第三週の水曜日、山形市の文翔館議場ホールで、山形弦楽四重奏団の第72回定期演奏会を聴きました。
開演前のトーク担当は倉田さん。子供の頃に家族の影響で時代劇が好きだった話から始まり、曲目の解説を。

  1. モーツァルト(?) 6つの前奏曲(序奏)とフーガK.404aより第1番ニ短調
  2. L.v.ベートーヴェン セレナード ニ長調 Op.8
  3. クーラウ フルート五重奏曲イ長調Op.51-3

これが今回のプログラムですが、いずれもヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの弦楽三重奏をベースに、フルートともう一人のヴィオラを加えて成り立つもので、たしかに通常の弦楽四重奏団のプログラムには乗りにくい内容です。

メンバーが登場、楽器の配置は、ステージ向かって左からヴァイオリン(中島光之さん)、ヴィオラ(倉田譲さん)、チェロ(茂木明人さん)となっています。
最初の曲目は、モーツァルト(?)の「6つの前奏曲とフーガ」K.404aより第1番。プログラムの解説によれば、ウィーンのスヴィーテン男爵を囲むサークルで、「ヘンデルとバッハの音楽に接したモーツァルトが、自身のコレクションのためにバッハのフーガを弦楽三重奏に編曲し、自作の前奏曲をつけたと言われてきた」作品とのこと。残念ながら自筆譜が見つからないために真偽が確定していないのだそうですが、弦楽三重奏による神秘的な響きが印象的な第1楽章:アダージョと、いいフーガだなあと感じさせる第2楽章:アンダンテ・カンタービレと指示のあるフーガが、実にいいですね〜。

第2曲、若いベートーヴェンのセレナード、ニ長調 Op.8 です。解説によれば、1796〜7年頃に書かれたもので、作曲家26歳頃、約半年にわたる第二回プラハ旅行で足を伸ばしたベルリンからウィーンに戻り、意欲的に作曲していた時期の作品だそうな。他の資料で調べてみると、当時出入りしていたリヒノフスキー侯爵邸にはおかかえのシュパンツィヒ弦楽四重奏団がおりましたので、このメンバーのために、Op.9 の三つの弦楽四重奏曲、Op.11のピアノ三重奏曲と続く室内楽作品のうちの一曲のようです。セレナードとはいうものの、野外の娯楽的な機会音楽ではなくて、純然たる室内楽作品を志向したものらしい。
第1楽章:行進曲、アレグロ。
第2楽章:アダージョ
第3楽章:メヌエット、アレグレット
第4楽章:アダージョ〜スケルツォ、アレグロ・モルト
第5楽章:アレグレット・アラ・ポラッカ(ポロネーズ風に)
第6楽章:Thema con Variazioni Andante quasi Allegretto(主題と変奏、アンダンテと言ってもほとんどアレグレットに近い速さで)
第7楽章:行進曲、アレグロ
この楽章の構成を見ると、はじめと終わりの楽章がアレグロで行進曲と指示され、入退場の音楽のような雰囲気でもあります。演奏は純然たる室内楽作品として取り上げられていましたが、昔はなにか野外音楽のセレナードを模して運用されていたのかもしれません。

ここで15分の休憩です。今回も関西からお越しの某さんにお会いして、すっかり定年農家と化している当方の近況などを話題に。ブログを読んでいると、ほとんど仙人のような生活がほぼ丸見えです(^o^;)>poripori

今回のプログラム最後の曲は、F.クーラウ(Kuhlau,1786-1832)のフルート五重奏曲イ長調、Op.51-3 です。51-3 ということは、作品番号51-1とか2とかの曲もあるということでしょう。今回演奏する曲は、ゲストの一人、山響フルート奏者の小松崎恭子さんの提案だったようで、私も初めて耳にしました。プログラムの解説によれば、クーラウはベートーヴェンと同い年の作曲家兼ピアニストで、ナポレオンの侵攻によりデンマークに亡命、コペンハーゲンで没しているそうです。

楽器配置は、ステージ左からフルート(小松崎さん)、ヴァイオリン(中島さん)、ヴィオラ1(倉田さん)、ヴィオラ2(田中知子さん)、チェロ(茂木さん)というもので、作曲家はフルートの高音に対して弦楽器では中低音に厚みをもたせる編成にしたのでしょうか。
第1楽章:アレグロ・コン・フォーコ
第2楽章:スケルツォ、アレグロ・アッサイ・クヮジ・プレスト。独特の響きです。ピツィカートを多用。
第3楽章:アダージョ・マ・ノン・トロッポ。弦が交互にやり取りする中にフルートも。
第4楽章:フィナーレ、ヴィヴァーチェ。うーむ、いい曲だ〜!
フルートがどちらかといえば明るく華やかな音色で活発に動きまわるように演奏されるのに対して、二本のヴィオラが厚みを加えた弦楽が、時にピツィカートを多用しながら、かなりロマンティックな音楽を作っています。演奏される機会はあまり多くはないのでしょうが、これはなかなか充実したいい曲です!

演奏後には大きな拍手が送られました。たしかに、一般的な有名曲を含まないごくマニアックなプログラムでしたが、良い音楽に接したという満足度の高い、充実した演奏会でした。次回の第73回定期演奏会は、

    2019年10月20日(日) 18:30〜、文翔館議場ホール
  • F.シューベルト ピアノ五重奏曲イ長調 D.667「鱒」
  • F.シューベルト 弦楽三重奏曲変ロ長調 D.471
  • W.A.モーツァルト 6つの前奏曲とフーガ K.404aより第3番ヘ長調

の予定とのこと。さっそく前売り券を入手しました(^o^)/



備忘のために、クーラウの曲はこんな音楽です。
YouTube より、フルート五重奏曲の第1楽章と第2楽章;
Friedrich Kuhlau - Quintet No. 3, I-II

続いて第3楽章と第4楽章;
Friedrich Kuhlau - Quintet No. 3, III-IV



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