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「娘仇討ち白石口説」「団七踊り」と「姉妹敵討」:茶谷十六さんのお話は良かった。舞台も印象深く!

2012-08-29 09:59:00 | 琉球・沖縄芸能:組踊・沖縄芝居、他

                         (洒落が描いたお信、団七、宮城野、他浮世絵)

芸能のの伝播と生命力がこのように全国で近代の帳を象徴する浄瑠璃や歌舞伎、音頭、口説の中に息づいていることは驚きだった。

「仇討白石口説」が史実であったか否かはもう問題ではなく、実録体小説、ナンフィクショナルなフィクションとして人気を得た秘密が『武士の不当な仕打ちに対するかよわい百姓娘姉妹による健気な闘い(父親の無礼討ちに対する仇討)』の主題だった。

1723年に「仙台女敵討ち」として流布し、実録小説体として「奥州白石噺」が成立、写本として多くの民衆に読まれていって、多くの似たような写本が出回り、1780年には浄瑠璃『碁太平記白石噺』として初演され、森田座では歌舞伎として舞台化された。物語の違いは客受けするように姉娘宮城野は父親が年貢を納めることができず水牢に入れられたことが忍びず吉原の芸者に身を落としている。妹と再会し二人で父の仇を打つため武芸者の由井正雪の弟子になり薙刀と鎖鎌の修行をつみ藩主の了解を得て父の敵団七を討ち果たす物語である。

その物語に民衆が熱狂し、今でも100箇所ほどで団七踊(なぎなた踊)や音頭、口説、神楽、盆踊り、狂言、にわか、人形芝居、組踊、歌舞伎、浄瑠璃として様々な芸能の形態の中で引き継がれていることは驚きである。1720年代の風評か史実か定かではない物語が舞台芸術として花開いたことの意味することはなんだろう。茶谷さんは論文の中で、「民衆文化」であり、民衆の夢が具現化されていると見ている。

それは「民衆自らの手によって新しい民族文化・国民文化創造の作業がすすめられていたことの証」であり、「その芸能の誕生と伝播の経過をたどり、そこにこめられた人々の意識や思想をさぐることは、~日本の民衆文化、民族文化の根源とその本質をさぐることに大きくかかわるものであるかもしれない」と結んでいる。

 

(茶谷さんの情熱にうたれた!)

さて1800年に登場したとされる組踊「姉妹敵討」が明らかに「娘仇討白石口説」や「団七」のもどきであることは確かだろう。『奥州白石噺』に近い。大夫(ジュリ)になる姉が登場しないので、歌舞伎からの翻案ではないのだろう。薩摩や種子島での一連の物語りの芸能公演が多いところからすると、薩摩辺りでその芸能を観た首里士族が組踊の形態に翻案した作品ということは明らかで、かなり1609年以降、薩摩、江戸登り(立ち)の中であちらの芸能を焼き直してきた琉球と日本の関係性が炙りだされてきている。

百聞は一見にしかずで、それはさもありなんである。戦後の沖縄芝居の戯作者でもあった名優真喜志康忠氏の作劇の方法からみても、そこに類似性がみられる。そこは一つ論稿で推論を実証してみたいと思う。

《国立劇場おきなわの宜保榮治郎氏(芸能研究家、常務理事)を囲んで!『姉妹敵討』の上演資料集をいただいた。宜保先生、感謝です!》

《民衆の手に渡って読み継がれた奥州白石噺》

二時間に及ぶ「姉妹敵討」は「忠孝婦人」ほどの面白さはない。おまけに15分の休憩まで入れてしまった。通しでやった方がいいと思うがなぜかよくわからない。発見はいろいろあった。一部の方は退屈な場面もあったが、二部は動きが早く面白みがあった。今あるテーマが気になっているが、それが見事に提示されていて、面白いと思った。船の場面など味わいがあったし、間のものの大湾、金城コンビはとても面白かった亀松・乙鶴の東江・新垣は卒がなく、団七役の悪(謝名の大主)玉城盛義もなかなか、悪ぶりが良かった。ただ四間四方とはいえ大勢の人数の登場ゆえに舞台は狭く感じた。三方から見れる仮設舞台ならもっと迫力がまし、また掛け声もかけられ、面白いのだろうが、国立劇場の空間の狭さがいつも気になる。

姉妹敵討が敵討ちの中での異色である理由がわかった。矢野輝雄氏の日本の古典に通じた感性はそのルーツをしっかり認識していたことにあらためて感心した。芸能のルーツなり影響関係は人間の五感が飛びかうので、意外と共通項が多いのかもしれないね。さりとて翻案でもまったくコピーではないところがいいですよね。それぞれの文化規範なり伝統なり根っこの味を出していくのが興味深い。

今年9月30日に本部の備瀬でも村踊の中で上演するとのことである。実際に仮設舞台での広々とした姉妹敵討を見たいと思う。台詞はあまり変わらないだろう。何しろ王府の組踊台本の写本が廃藩置県前から出まわっていたのである。

それにしても琉球・沖縄の芸能の歴史にまた新たなページが付け加えられたのである。拍手!茶谷さんのパッションは凄いね!


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