「イタリアの魅力を発見 - 歴史、文化、芸術を巡る旅 ALLA SCOPERTA DELLE MERAVIGLIE D'ITALIA - ラヴェンナ- モザイクの街」のセミナーに参加しました-2回目/前半(2021.6.12)@リンガビーバ・イタリア語教室
第1回に引き続き 世界遺産「ラヴェンナの初期キリスト教建築物群」についてのセミナーの第2回 前半です:
1.アリアーニ洗礼堂(il Battistero degli Ariani)
アリアーニ洗礼堂(il Battistero degli Ariani)はは 325年に開かれたニカイア公会議(コンスタンティヌス帝自らが開いたキリスト教教義を決定する最高会議)で異端とされたアリウス派(arianesimo)の洗礼堂です
東ゴート王国の創始者テオドリック王(il re ostrogoto Teodorico)によって建てられた 現存するアリウス派の数少ない建造物の大変貴重な遺構ですが 556年にユスティニアヌス帝(Giustiniano)によって 聖母マリアに捧げる正教会(ortodossi)の礼拝堂となり 今は Chiesa dello Spirito Santoとなっています
洗礼堂にはキリストの洗礼が描かれ ネオン洗礼堂(Battistero Neoniano)と似た構図となっていますが ネオン洗礼堂とは違って輪郭線が明確で 平面で動きのないものとなっています
外部は両方ともシンプルで装飾がなく 煉瓦(laterizi)でもって八角形(ottagonale)に造られています
8という数字は キリストが7日間で世界を創造し さいごに復活(resurezione)した日を入れた大切な数字なのですね
地盤沈下(subsidensa)によって地面から2,30メートルも沈んでいます 内部は部分的にはがれているものの豪華です
19世紀のフェリーチェ・キーベル(Felice Kibel)という修復家によって ひどい修復(ほとんど改ざん)をされているのがひどく残念ですね
← キリストの洗礼
キューポラ中央のメダリオンには キリストの洗礼(il Battesimo di Cristo)のモザイクが描かれています このキリストは若くて髭がなく(imberbe) 半身がヨルダン川に浸かっています (トップの写真参照)
右には洗礼者ヨハネ(San Giovanni Battista)がキリストの頭を押さえ 左には老人に擬人化されたヨルダン川(la personificazione del fiume Giordano)が そして頭上には 聖なる魂のシンボルであるハト(colomba)が キリストに水を吹きかけています
メダリオンのまわりには12使徒(12 apostoli)が 放射状に描かれています
手にかけたヴェール(vela)には gammadieというギリシャ文字が描かれており キリスト論におけるモノグラムです 聖人たちの顔はすべて正面を向いており 初めて後光(aureola)が描かれているとのこと
2.サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂(la basilica di Sant’ Apollinare Nuovo)
* 一番上の写真は外観
サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂 は 490年頃にテオドリック王が作ったアリウス派の聖堂です
東ゴート王国は ユスティニアヌス帝によって滅ぼされ ラヴェンナもビザンツ帝国の支配下に入りますが その中でユスティニアヌス帝は異端とされたアリウス派の聖堂を全て没収し 補修を司教アグネルス(vescovo Agnello)に命じましたが 彼は異教徒と戦った聖マルティヌス(San Martino di Tours)に捧げる聖堂に改修し アリウス派を想起させるモザイクなどの装飾は 修正されてしまったそうです
856年に司教ヨハネス7世によって ラヴェンナの外港であったクラッセ(サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂のある場所)から 聖アポリナリス(Sant’Apolinare)の聖遺物(reliquie)がもたらされ サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂(新聖アポリナリス聖堂)と呼ばれるようになったといわれます
身廊(navata centrale)と それを取り囲む側廊(navate laterale)からなる 標準的な3廊式(tre navate)バシリカ教会堂で 身廊と側廊は12本のコリント式列柱(colonne in marmo greco)によって仕切られています
ファサードには 大理石の二連窓(bifora)がありますが これはルネサンス期のものだそうです
隣にある38mの煉瓦の鐘楼(campanile)には 片開き窓(monofore) 二連窓(before) 三連窓(trifore)があり これは構造を軽くするためとのこと
アプシス(l’abside)は725年の地震で壊れ のちに再建されました
← 上の窓の横は16人の聖人像 その下は参列のモザイク
最上段はキリストの奇跡と受難の26場面が画かれ 中でも当時は悪魔を描くことはされておらず 代わりに3匹の豚(maiale)が川に泳いで逃げるシーンが描かれています キリストは老いて(maturo)ひげを生やしています これは苦しみや弔意(lutto)を表しています
その下の高窓部分には16人の聖人像が配置されていますが 特定はされていないそうです
圧倒されるのはその下部で 北側には 3人のマギに導かれてクラッセの外港を出立する22人の聖女の殉教者たちの参列が 南側には 聖マルティヌスに導かれてラヴェンナの王宮から天使に囲まれたキリストに至る26人の殉教者(26 santi martili)の参列がモザイクで画かれており圧巻です この王宮は上下逆の透視図法(prospettiva ribaltata)で描かれています
ラストにある東方三賢人(tre Magi)は 馬から降りたばかりのようにとてもダイナミックに描かれていて興味深いです 例のフェリーチェ・キーベルがまたしても所々を改変しており残念…
← 東方三賢人(tre Magi)
セミナーは こちら
第2回後半へ つづく
* 素晴らしいセミナーを開催してくださいましたリンガビーバ・イタリア語教室様に 心よりお礼申し上げます
写真は 2のサンタポリナーレ・ヌオーヴォ聖堂の外観