日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

講演会「新古典主義時代のローマ」を聞きに行きました(2023.6.13)@イタリア文化会館

2023年07月12日 | イタリアの美術館・博物館

講演会「新古典主義時代のローマ」を聞きに行きました(2023.6.13)@イタリア文化会館

 

9月から開催される「永遠の都ローマ展」(於東京都美術館)にちなんだ「新古典主義時代のローマ」という講演会を イタリア文化会館に聞きに行きました:

イベント要旨:

 18世紀のローマは変化し続けていました

当時の教皇たちはカトリック教会の普遍主義を広め  教皇庁の権威を高めるために町のインフラを近代化し  建造物を修復し  古典古代を規範とした芸術を普及するという野心的な計画に着手しました

その革新的な取り組みは 公的な博物館の建設や 絵画  彫刻 建築などの国際コンペなど さまざまな分野に及びました

その結果  ローマは新古典主義の中心地となり  グランドツアーの主要な目的地となりました

各国から芸術家  旅人  文人が訪れ  なかには長期滞在した人もいました

その間  教皇庁の宗教上や政治的な意図にもかかわらず  ローマの町は世俗化し  そのイメージは大きく変化したのです

この講演会では18世紀初頭からナポレオン時代までの 町に関わる主要なプロジェクトや 社会の変化を分析・検証し ローマのイメージの変遷を辿りました

 

 

永遠の都ローマ展より: 

永遠の都ローマ  ――  二千年を超える栄えある歴史と比類なき文化は  古代には最高神をまつる神殿がおかれ  現在はローマ市庁舎のあるカピトリーノの丘を中心に築かれました

その丘に建つカピトリーノ美術館は  世界的にもっとも古い美術館の一つに数えられます

同館のはじまりは  ルネサンス時代の教皇シクストゥス4世が ローマ市民に4点の古代彫刻を寄贈したことにさかのぼります

古代遺物やヴァチカンに由来する彫刻   またローマの名家からもたらされた絵画など  その多岐にわたる充実したコレクションは   古代ローマ帝国の栄光を礎に  ヨーロッパにおける政治  宗教  文化の中心地として発展したローマの歩みそのものにも重ねられます

    *      *      *

 

この講演会はまず ローマのカピトリーノ美術館(il museo Capitolino di Antichi)の紹介から始まりました 

Clemente XⅠⅠ(クレメンス12世)が1734年に美術館として公開した (一般市民に公開された美術館としては世界最古の事例とのこと)カピトリーノ古代美術館)には古代の彫刻等が置かれており 真の公共施設でした 

中でもアレッサンドロ・アルバーニ枢機卿(cardinale Alessandro Albani)のコレクションは 9月のローマ展でも観ることができるでしょう

 

次に1771年に建てられた Museo Pio-Clementino in Vaticano (バチカン内のピオ・クレメンティ美術館)に移ります 

これは クレメンス14世とピウス6世のコレクションによる美術館で ローマ皇帝や ローマ神話の神などの古代彫刻のコレクションが見られます ラオコーン像が有名ですね

18世紀の教皇たちは古代の発掘を促進させました  インフラを近代化させ 「ペテロの優越」(主キリストがペトロに与えた権威は永続的なもので   ペトロの座を引き継いだ者はキリストに由来する権威を保持し  全教会に対する首位性を有する」とする)というメッセージを送り 教皇たちは世俗の君主としての権利を誇示してゆきました 

 

次に ローマ共和国(Repubblica Romana/1798-1800)  フランスからナポレオン軍が侵攻し 教ピウス6世はローマから追放されてしまいます 

ピウス6世はトスカーナに亡命し ローマにおける教皇の世俗支配は崩壊しました

18世紀のローマは 古典的遺産の博物館と化し 世俗化してゆきます 啓蒙時代から革命の時代へと移ってゆきます

  *      *      *

Le grande città dell'Europa occidentale  西ヨーロッパの大都市

ローマの18世紀初頭の人口は 約140万人でした 

トラステヴェレには貧しい人々が集まり 製造業も特になく 1764年には大きな飢饉が起こりました 18世紀のラスト30年にはインフレも起きました

次はインフラの近代化です トレビの泉 スペイン広場の階段 Porto di Ripetta(今はありません)リペッタ港  granaio(穀物倉庫) Piazza di Sant'Ignazioの市民住宅等...

クイリナーレ宮殿前にあるPalazzo della Consulta  Kaffeehaus al Quirinal

公共施設としては  Braccio nuovo   ospedare s. Spirito(トラステヴェレ)  Ospedale   Galliccino (トラステヴェレ) 等...

 

そして宗教施設としては Sagrestia di San Pietro (建築家Carlo Marchionni サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂(Giovanni di Laterano )(Niolo G) 

chiesa di San Teodoro al Palatino    S. Pietro e Marcellinoなど...

 

文化インフラとしての図書館では biblioteca Casanatense(カサナテンセ図書館 )  biblioteca Lancisana(l'Accademia Lancisiana)など

そして 芸術文化インフラとしては カピトリーノ美術館 (Musei Capitolini) の公開図書館 

Scuola del nudoという裸体像の学校もあり 9月のローマ展でも観られます

芸術面では 古美術が盛んで romanitas(ローマらしさの証)というコンセプトが主要な点となり ファルネーゼ メディチ バルベリーニ家などが 古美術を集めていったことは有名ですね

 

  *      *      *

 

次に グランドツアーです

J.J. Winckelmann という古美術商は 1755年からローマに長期滞在し Alessandro Albani枢機卿という最大のコレクターに仕えるようになりました  

発掘そして修復といった古代マニアのメンバー達が ローマからの流出を防ぐために "美術館を開きたい"と情熱を傾けてゆきました 

出版物や版画も 自前のローマ印刷術によって普及してゆきました

 

コロッセオは 異教からキリスト教への流れを示しました ここはローマ時代の殉教の場所でもありました 

Museo Sacro in Vaticanoは ベネディクト14世によって造られた初期キリスト教美術館(バチカン)です 

 

   *      *      *

La Roma del Grand tour グランドツアーのローマ

 

ヨーロッパの上流階級がこぞってローマを訪れ 観光がファッションのようになりました

la Vita degli artisti a Roma  ローマに芸術家たちの共同体ができてゆきました 奨学金制度もあったのですね 1666年のフランス・アカデミーの3年間の奨学金などとのこと

画家のPompeo Batoni  Gain Hamilton    Anglika Kaufmann  

彫刻家のBertel Thorvaldsen   Antonio Canova等が滞在しました 

1789年のローマの人口は 16,3万人と少し増え 流出よりも流入人口が多かったとのこと 女性の数も微増しました 

グランドツアーの人たちとは サロンやシアター 遺跡見学等で会えるようになり 宗教色は消えてゆきました 信仰と世俗化に溝ができました

 

1789年に起きたフランス革命のあと 1798年 世俗(laica)のローマ共和国(Republica romana ) (1798年~1800年)が生まれ ローマにおける教皇の世俗支配は崩壊し 教皇は追放されましたが 1800年6月にローマ共和国は廃止され 教皇国家が復活しました

 

ナポレオンのローマ」を標榜し 教皇庁から多くの宝物がフランスに ルーブルに持ち去られてしまいました 貧困化し人口は12万を下りました 

Scavi di fori (フォロ・ロマーノの発掘) テヴェレ川岸 クイリナーレ宮殿 アッピア街道等 ローマは世俗的な帝国となってゆきました

1815年のナポレオンの敗北のあと 聖なるローマ世俗のローマが区別されてゆきました 

citta' musealizzata (美術館のような街)として 古代 中世 バロックのローマの発見がなされてゆきました

        *      *      *

続く質疑応答では ローマのモニュメントと木々の緑について フランスの侵攻によって教皇は追われたが宗教はなくならなかったことについて ナポレオンは古代ローマ帝国をモデルにしたが イタリアは人文主義の国で liceo classico(古典学校)がある等が語られました

9月のローマ展が楽しみです😊

 

講演会のお知らせは こちら

 

永遠の都ローマ展」は こちら (2023. 9.16~12.10)@東京都美術館

 

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