須賀敦子翻訳賞受賞作「フォンタマ―ラ」を読んでからネットで映画を観て🎥 さらに原書も読んでいます📖
第5回須賀敦子翻訳賞授賞式で 受賞作品の 「フォンタマ―ラ」(シローネ作・斎藤ゆかり訳)を買って早速読みました
読み出したら止まらない緊張感あふれる筆致で まさに翻訳とは ひとつの作品を日本語に置き換えて あらたな作品世界を創造するような生業なのだと思いました
言葉がなんともいえずこなれていて また内容も どこの国にでも起きるような虐げられた農民の苦悩を絶妙な筆致で語りつつ 自分やまわりに置き替えて考えながら読みました まさかのラストでした
読了後さらに ネットで検索して 「Fontamara」の映画4部作(1980)も一気に観てしまいました🎥 字幕なしで... でも日本語版の原作を読んだあとだったので 登場人物や どのエピソードか等はわかりました
映画「Fontamara」(1980)のポスター
この作品は 原作者イニャツィオ・シローネ(1900~1978)の わずか27才で獄死した弟ロモロに捧げられたと 映画のラストにありました
小説(1930年)の冒頭にもその名前がありました 地震で家族を失ったあと ただ一人生き残った弟でした...
あらすじ:
舞台はイタリア中部の寒村フォンタマーラ(架空の村)。
村民たちが代々管理 ・利用していた水が ある日を境に 政府と結託した有力実業家によって奪われてしまう
ファシスト集団による横暴に 抵抗をつづける村民たち
彼らが最後にとった手段は……
反ファシズムのベストセラー、70年ぶりの新訳。
罪人の息子で土地も持たないが 腕っぷしは強く 若者たちのリーダー的存在だったベラルド・ヴィオラは 婚約者エルヴィーラのために仕事を見つけ 土地を得ようと都会へ旅立ちますが テッセラ(登録証)も持たず仕事を探すことすらできず...
このベラルドのモデルは 作者の若くして獄死した弟なのでしょうか ベッドで死ぬのではなく 獄中で死ぬだろうと言われ続けた運命を持つ男だと言われたベラルド...
フォンタマ―ラ(苦い泉の意)の人々 土地を持たず学もない 「カフォーネ(cafone)」という貧農の小作を この翻訳では「どん百姓」と訳してあります
救いようのない貧しさの中で 権力者にさらに騙され搾取され 水までも奪われ どうにもならなくなる中で いったいどう生きていったらよいのか... 考えさせられます
この本は最初にドイツ語版が出てから各国語で翻訳出版され 多くの国で 自分の国でも同じようなことが起きていたのではないかと受け止められたとのこと
そのため検閲当局による翻訳出版の許可が下りずに困ったとあります それ程に貧しい農民の苦悩は どこの国でも同じように普遍的なものなのだと...
「フォンタマ―ラ」は こちら
YouTubeの映画「Film completo Ignazio Silone - Fontamara 1 parte」(1980)は こちら (Part4まであります/字幕なし) ← イタリア語がわからなくとも こういう村でこういう人々が...というのがわかります 最初の歌だけでも聴いてみてね🎥
イタリア語のあらすじは こちら
このあと イタリア語の原書をイタリア文化会館の図書室で借りてきました📖
1949年 Mondadori社発行
そして 翻訳書と辞書と首っ引きで原書を読んでいます イタリア語で味わうことができて本当に嬉しいです
確かに翻訳者泣かせのイタリア語ですが cafone(どん百姓)の暮らしぶり このフォンタマ―ラの村の繰り返される貧しさが伝わってきて また作者の亡くなった弟がモデルとなった主人公ベラルドを 作者がどんな思いで描いていたのだろうか そして翻訳者がどのように訳していったのか 翻訳者の方のたどってきた文を再び自分の目でたどりながら考えながら 少しずつですが読み進めています
須賀敦子翻訳賞のおかげで 知らない作家の作品と出会うことができて 大変嬉しいです