ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

『朝長』について(その30)

2006-06-02 17:04:05 | 能楽
きのう無事に申合が終了し、ぬえの『朝長』もあとは本番を迎えるのを待つだけとなりました。

手応えは。。ある。 自分なりの、なので識者には「あんなのは『朝長』じゃない」と言われてしまうのかも知れませんが、大役を勤める事の責任は理解したつもりで、できるだけの稽古はしましたし、分不相応と思われているだろう事も承知で、卑屈に勤める事だけはしません。また舞台上で迷うような事もないよう、充分に稽古とシミュレーションは済ませてあります。ただ不安なのは稽古や申合と同じ声が出せるか。。こういうところは まだまだ体調やテンションのようなメンタルな部分によって大きく左右されてしまうんです。。ぬえ。(;_:)

また、師匠からは謡について根本的な注意を頂きました(じゃ、「きのう無事に申合が終了し」たんじゃないじゃん)。。最初は師匠のご指摘の意味があまり判然としなかったんですけれども、申合の録音を聞くと。。なるほど、よくおっしゃっている事がわかりました。そうは言ってもこれだけ作りこんで仕上げてきた謡なのに~~。。今日一日でこのご指摘を受けてもう一度謡を作りなおしました。。

あとは。。家に帰って稽古用の装束を羽織って、装束を着た場合に勝手が違ってくるだろうと予測される型を何箇所かチェックして、胴着と紋付・裃を用意して、玄関の盛り塩を取り替えて。。

明日はいつものようにご先祖様と ぬえの尊敬する恩師・小鼓方の故・穂高光晴師のお写真に手を合わせて成功を祈念して、楽屋入りを致します。

ここまでの『朝長』の上演へ向けてのレポート、ご愛読に感謝申し上げます。
敢えてこれまで書かなかった ぬえの舞台上での「計画」や、それから ぬえの上演には関係ないものの『朝長』を考えるうえで避けては通れない重い小書「懺法」については、公演終了後にお話してみたいと存じます。舞台で失敗してガッカリしていなければ、の話ですが。。(T.T)

このたびの「橘香会」にお申込み頂き、お舞台にご来臨される方々には、あらためまして御礼を申し上げます。お目汚しのないよう、十分に気を付けて、気を入れて勤める所存です。どうか みなさまにとりましても良い一日になりますように。

                                  ぬえ


末筆ながら、このたびの「橘香会」に ぬえを通じてお申込み頂きました方には上演曲『朝長』『遊行柳』の詞章をプリントしてお手元にお届けしております。鑑賞のご参考になれば ぬえとしても嬉しい事ではございますが、プリントにも明記してありますように、紙をめくる音はほかのお客さまの迷惑になりますので、どうぞ上演中にご覧になる事はご遠慮頂きますよう、お願い申し上げます。


→次の記事 『朝長』について(その31=懺法について その1)