ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

ぬえの「能楽講座」(千葉県松戸市)(その1)

2006-09-03 22:28:47 | 能楽
千葉県・松戸市での ぬえの「能楽講座」が始まりました。

もうずいぶん以前になるのですが、ぬえは松戸市の公益財団が主催で「能楽講座」を何年間か行いまして、その成果はついに同市内のホールでの「能楽鑑賞会」の開催にまでつながったのですが、市の財政もことごとく見直しになっている昨今、残念ながらその後は公的な企画として講座や公演を行うのは難しい状況になっていました。

その頃、ちょうど ぬえも米国の大学からの招聘を受けて3度目になる渡航公演を計画していて、その交渉のさなかでしたし、わけてもこの度は3都市を歴訪してちょっとした米国ツアーというような大きな催しとなったので、諸事に忙殺されていて、松戸市で自主的な新しい企画を計画する事までは手が回らない状態でもありました。今年はまた大曲『朝長』の上演が予定されていたので、これまた他の事に手を出す余裕もなく。。そしてようやく今月から、4回にわたって市内で「能楽講座」を催す事ができました。

それにしても市の団体が主催するのと、ぬえ自身が中心になって、松戸市内でお稽古をいているお弟子さんの協力を得ながら自主的に行うのとでは、これほど準備の手間が違うものか。。市内の公共施設の大きな会場を確保するのに苦労もしましたし、市報に掲載する講座の宣伝も、前回の写真入りの堂々とした宣伝と比べて、今回は市民団体の催しが一括して掲載される欄にわずか数行が載っただけ。まあ、これが自主的に講座を立ち上げるのだからこれが本来の姿で、前回が恵まれすぎていた、という事でしょう。

宣伝不足を補うべく、いろいろな方にお声を掛けました結果、今回の出席者は約20名といったところでした。決して多くはない人数だけれど、久しぶりの講座の発足にあたっては、満足すべきでしょう。この講座を続けていって、だんだんと反響が育っていく事を祈っています。

さて、ぬえの講座の名称は「能楽講座 ~能から日本文化を学ぶ~」というもので、これは日頃から ぬえが話したいと思っている事です。能楽師の講座なのだから、もちろん能についてお話をするわけなのだけれど、ぬえがこの世界に飛び込んで、この国の文化がいかにスゴイものであるのか、それを参加してくださった方々と一緒に再発見していこう、というのが本当の目的です。今日もお話したのけれど、ぬえは大学在学中に能の世界に飛び込んだ一代目の能楽師ではありますが、この世界を知る前の ぬえは、和服など着たこともなく、耳にする音楽といえば洋楽ばっかり。。まるで外国人のようでした。いま、ぬえは「日本人に生まれて本当によかった。。」と心の底から思っています。この国の文化は世界一だ、と力を込めて言える。でもまた、同時に、滅び去る寸前でもあるのかも知れない。。と最近は思うことも多いけれど。。

ともあれ始まった能楽講座の第一回でしたが、あ~~やっぱり ぬえ、話題は大脱線ばっかりで、話したい事の半分もしゃべってません~。まあ、受講者は爆笑してくださったようで、楽しい講座にはなりましたけれども。。もう少し次回は真面目な話をしよう。そうしないと4回の講座が「漫才から日本文化を学ぶ」になってしまう。。

ところで今回の講座ではミクシイでお友だちになった方が、なんとわざわざ沖縄からおいで下さいました(!) たまたま東京でお仕事の研修があって、その日程がうまく ぬえの講座とも重なったから、とのことでしたが、これは嬉しかったですね。会場でその人が沖縄から参加した事を受講者に告げると、みなさん「えええ~~~っ」と驚かれて、拍手まで出ていました。