白妙の夏の桔梗のつめたさの頬なり 遠く雷のとどろき 薬王華蔵
この歌が読者文芸欄で2席に入賞していました。入賞なんて久々、ほんとうに久々のことでした。選者の選評はこうでした。
女の頬のつめたさを感じるために、男は両の掌で女の頬を挟んだのか。あるいは頬と頬とを擦り寄せて「かくもつめたき汝が頬」と歎じたか。いづれ雷が鳴らずとも、この恋もとより成立せぬ「成らぬ恋」であったのか。桔梗は万葉集には朝顔で見える。
言(こと)に出でて言はばゆゆしみ朝顔の穂には咲き出ぬ恋もするかも
短歌が読者にあるドラマを喚起して来る。ドラマは現実でも非現実でもいい。どっちだっていい。そこはかとなく、そこに哀切に生きる人間の跡形がうっすら滲めばそれでいい。