1
本具仏性。ほんぐぶっしょう。
2
天地も人も、もとより仏性を具えたり。人はその天地の仏性に拠って動かされて行く。調和されて調和して行く。
3
仏へ仏へと誘われて、進んで行く。前からは手引きされ、後ろからは後押されて行く。
4
でも己の目には、そうは見えないときがある。辛く当たられるときがある。急がされているときである。なにくその発奮のときである。此処で大きな変化を遂げる。大きな変化を迫られているときが、生涯に何度か来る。
5
でも、それがひいてはわたしを仏へ仏へというお慈悲であったことがいまに分かる。ああそうだったのかということが分かる。お慈悲だったということが分かる。そこではっとする。はっとして涙になる。涙が零れて仏になっている。
6
「ああ、すまなかった」を幾度経験することだろう。悪意にしか見えていなかった、それがふっとあるとき悔やまれて来る。そういうときにこの「ああ、すまなかった」が出る。己の錯乱した目には、此の世の善意が悪意に見えてしようがないのだ。そして憎む。羨む。拘る。うらぶれる。
7
此処は仏界である。地獄界こそは仏界である。どんなに変化しても仏界である。最後の最後にその大きな仕組みが解けて行く。そこにありありと仏界が姿を見せてくれる。涙になる。ああ、そうだったのだ、それがわたしには見えていなかっただけのことだった、と。領下が来る。