仮の世に妻ゐて子ゐて暖かし
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これは福島県、中田 昇さんの句。NHK俳句五月号、小島實選で佳作に入選されていた作品である。
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此処は仮の世である。仮ではない世が、だから、何処かにある。そういう設定だが、仮の世の妻や子の方があたたかい、と感じておいでだ。
仮の世にまで作者のわたしを追って来て、そこで妻という縁、子という縁を結んでいるのだから、その分却って親密度、愛おしさが高くなっているのだろう。
仮の世ではない真実の世では、もしかしたら、もう妻と夫、親と子などという関係は帳消しになって、ただただ仏陀と仏陀になっているかもしれないではないか。
情というのは、縁に従っているのかも知れない。妻と夫という縁、親と子という縁の中で、情が発生発揚しているのかもしれない。
情というのはあたたかいものなのだ。冷たくもなるが、あたたかいものなのだ。それもしかし、あくまでも「仮」なのかもしれないのだが。
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