「南柑20号」-中生温州みかん
愛媛県立果樹試験場南予分場長の村松春太郎氏が,1937年から南予地域における温州ミカンの優良系統探索を行ない,多数の系統を収集して特性比較試験を開始した。1939年に宇和島市の今城辰男氏の普通温州園で発見された系統が,成熟期が普通温州より早く高品質果実を産する優良系統として選抜された。この系統が南柑20号と命名され,戦後,南予のカンキツ産地を中心として広く普及し栽培されるようになった。
樹姿は普通温州と早生温州の中間で,樹勢は普通温州に比べるとわずかにわい性でやや弱い。このため,コンパクトにまとまった樹形となりやすい。葉は普通温州に比べて小さく中型で節間もやや短い。勢いの良い発育枝は先がややねじれる。結実性は良好で,豊産性であり,隔年結果は少ない。
果実はやや大果の傾向で玉揃いは良い。果形は果形指数130程度でやや扁平形である。油胞に凹凸があるため,果面の滑らかさは温州ミカンとしては中程度であるが,完全着色果の果皮色は濃厚で深みのある外観である。果皮はやや厚いが皮は剥きやすい。糖度は11~12度程度であり,高糖系温州には及ばないが,じょうのうが薄く袋ごと違和感なく食べられることから,食味の評価は高い。成熟期は11月中~下旬である。着色期に雨量が多いと浮皮が発生しやすい。
愛媛県では現在も,早生温州に引き続いて年内に出荷される中生温州の中心的な品種として栽培されている。果実品質が立地条件によって大きく左右されることはよく知られており,温暖で水はけのよい斜面端に適する。水田転換園のような耕土が深く水分量の多い不適地では,結実性や果実品質が悪くなる。立地条件の悪い園地では,浮皮の発生も多く,マルチを前提とした栽培もあまりメリットはないので,他品種や施設栽培を検討したほうが有利である。
愛媛県では1924年以降、温州みかんの優良系統探索が行われた。その時に、今村辰男氏により発見されたのが、後に「南柑20号」と名付けられた品種。地球温暖化の現代では考えにくいが、当時、耐寒性は温州みかん選抜時の大きな要因だったようで、本品種は耐寒性ありと評価された。
ミカンの栽培地域は、試験栽培用、観光農園を中心に北に延びていることを、カタログ販売を通して感じる。温州みかんは、”寒”に強い柑橘というのは常識だが、100年以上前から存在し、寒さに強かった当時の気象条件下で確実に高品質果実を結果し、今でも植え続けられているこの品種は、これからの温州みかんの北進に力を貸すであろう。
寒さが強かった昭和40年前半は、温州みかん苗木の生産においても、冬期は全てコモで覆っていた。現在、温州みかんに防寒対策をとることはない。よって、2015年の大寒波(極寒-8.5度)の際は、温州みかんの苗木まで瀕死するに至った。地球温暖化の影響により温州みかんの栽培分布の北限の変化は起こっているが、時には大寒波ということも頭から外してはならない。100年以上生き残ってきた品種の歴史は軽視できない。
*http://www.ykken.jp/14680284346351 より
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます