「佐藤酒造店」
あおもり酒蔵めぐり(1)「掬水」佐藤酒造店(岩木町) 2006.10.03 Tuesday
青森県には三十に近い造り酒屋がある。その多くはあまり名前を知られていないけれど、どれもがしっかりと個性のある真面目な酒を造っている。
ひところ、この国には「淡麗辛口」をもって良い酒だとみなす風潮があった。食べ物に旨味のあることを忘れ、刺激が強く脂ぎったものを美味いと錯覚するようになった都会人の舌は、その脂を洗い流してくれるものを求めていたからであろう。
ところが、なにをもって美味い酒とするかの尺度は、一様であるわけがない。百人いれば百種類の尺度があってよいし、同じ人でも体調によって美味いと感ずる酒は違うかもしれない。そもそもが、日本酒は甘い辛いで計られるものではない。酸味もあり、旨味もあり、幾重にもその味わいが層をなしている。その深みは、ワインにも劣るものではない。
地酒は、風土が醸すものだ。その土地の米と、その土地の水を、その土地の蔵人が、その土地の気候の中で仕込み、なによりもこれを呑む土地の人によって育てられる。
雑誌『グラフ青森』に掲載されたこの連載は、1997年から1999年にかけての足掛け三年、およそ淡麗辛口とは反対の、幅が広く重い酒の多い青森県の蔵を、ひとつひとつ訪ね歩いた記録である。そのなかにはすでになくなった蔵もあり、また杜氏が替わって造りを変えたところもあるが、これはこれでひとつの地域の傾向を浮き彫りにしていると思うので、改訂版を編むまでのあいだ、ここに纏めておくことにした。
初回の「掬水」佐藤酒造店は、岩木町(現在は弘前市に合併)の鳥井野という集落にあった蔵だが、不幸なことに火事に見舞われ、やむを得ず造りを休んでいる。一日も早い再建を願い、あえて初出のときのまま、再掲しておくこととする。
酒は風土のなかで造られる。酒が水や米・糀で醸されるからというだけではない。酒はその土地の人々に呑まれることで、その土地の味になる。だから、旨い酒というのは一種類ではない。その土地の水があり、その土地の米がある、その蔵の糀があり、それらを育んだ気候がある、宴の席の食べものがあり、それを囲む人々がいる。そうした諸々の風土が地酒のなかで溶け合っている。土地ごとに旨い酒があり、またその土地から切り離して酒を語ることはできない。それが、地酒の面白さでもある。
「掬水」という酒は、じつは取材する前から知っていた。鳥井野の知人がたびたび持って来るからである。その度に飽きもせず自慢して帰るわけだ、「鳥井野の酒は旨いだろ」。地元の人々のこんな愛情が、地酒を育んでいる。蔵元がそれだけ客を大切にしてきたということなのだろうが、ここまで来るには様々な苦労があった。
鳥井野(岩木町)の地酒「掬水」を造る佐藤酒造店では、四半世紀前から桶売りを止め、自造自販でやってきた。洒類販売の免許も持っているが、3年前から卸売りも止め、本来の酒造りに徹している。今では特定銘柄がこの蔵の4割を越えるまでになった。「数多く売ることよりも、呑む人の立場にたって考えるようになった。酒税法上の規制に捕われてメーカーは客の側から選択する自由を奪ってきたが、日本酒もワインのように生産地による違いがあった方がよいと思う」(小林誠三社長)。
「呑む人の立場にたって」始めたのが「蔵酒」である。寒仕込みの終わった4月の1カ月間、蔵を訪ねてくれた客に貯蔵タンクの原酒を試飲してもらい、好みの原酒をその場で瓶詰して販売する。10年前にこの利き酒を始めたときは500人だった客が、今では2000人にまで増えた。
この蔵の特徴は、生の酒を生のまま瓶詰することである。瓶詰の段階で火入れする「生貯蔵」と区別して、これを「生々」と呼んでいる。「火を入れることは、酒にとってけっしてよいことじゃないんですよ。蔵にとって効率的なことじゃありませんが、生のまま熟成させると、円みと深みのある独特な酒に育つんですよ」
きちんと管理すれば、けしてヒネたりはしないのだという、その「生々」2年ものの吟醸酒を炊ませていただいた。口のなかいっぱいに糀の香りが広がる。古酒なのに、糀の香りがそのまま生きているのだ。しかも、そのコクがいつまでも持続していて消ぇることがない。重みと味わいのある酒だ。
この蔵では、注文を続けた生酒を、客の指定する期間ねかせてもらうことができる。しかもその酒は「お客さんの名前をつけて保存します」。「生々」の古酒は、このように呑む人とのコミュニケーションを大切にする蔵だからこそ、実現できたのである。
「充分に精白しないと生酒はヒネてしまいます。華吹雪は芯白が寄っているので、使うのに苦労します。それでも、よい酒ができるんだねコゴは、水もよいしな」。蒔苗東さんはいまでは5人しかいない津軽杜氏の一人である。7年前に招かれて、この蔵の杜氏となった。その前にいた南部杜氏と「造り方は変わりませんよ」と蒔苗さんは言うが、津軽の酒はやはり津軽杜氏の手で造りたいという気持ちが、蔵元にはあるようだ。
「鑑評会ではキレのよい酒が評価されますが、お客さんの評価はまた別ですから」。呑む人に向きあおうとする社長さんの方針が、地元の杜氏・地元の米・地元の水と出会って、地元の人々に喜ばれる酒ができた。そこに地酒の原点をみたような気がした。
*http://hsaitoh.jugem.jp/?eid=25 より
青森県中津軽郡岩木町の株式会社佐藤酒造店です。
津軽の銘酒「菊水」をはじめ数多くの日本酒を地元のショップや旅館で提供しています。
日本酒の中でも珍しい古酒も存在しており、全国に通信販売もしています。
株式会社佐藤酒造店 青森県中津軽郡岩木町大字鳥井野字宮本31-1
◆もう一つの古酒・長期熟成生原酒◆
~深い味わい、長期熟成酒~
㈱佐藤酒造店が平成6年、古酒に挑戦し、掬水の原酒「蔵酒」の貯蔵を始めました。
タンクでの貯蔵ではせっかくの風味が逃げてしまいます。そこで当蔵元では瓶詰めにて貯蔵致しております。
中でも大吟醸酒・吟醸酒・純米吟醸酒は、敢えて加熱処理をせず、生での貯蔵を試みました。
生原酒の為、冷蔵庫での低温貯蔵となります。二年、三年と月日が経過するごとに、着色はないのに、味わいが増し、 すばらしくなめらかでのどごしの良い酒に仕上がりました。
高精白米を使用している大吟醸酒、吟醸酒、また本醸造の辛口等は格段に柔らかく、まろやかで深みがある酒に成長しました。
◆日本酒の世界広げる◆
~ここから新しい日本酒の世界を~
日本酒を数年以上ねかせた古酒、長期熟成酒が注目されている。ウイスキーやワインなどの洋酒では古い酒やビンテージものが珍重されるが、日本酒ではあまり知られていない。「古くなると酢になってしまう」と思っている人が多いが、いまはそういう例はほとんどない。各地の蔵元で何ともいえぬ深い味わいの長期熟成酒が出番を待っている。
■掬水の古酒 蔵酒■
蔵酒とは・・・・・・・・・
蔵酒は、平成6年より醸造された清酒の原酒を長期にわたり、低温貯蔵した清酒を当蔵元では「蔵酒」の銘柄で販売しております。
普通、清酒は夏の暑さで酒質が劣化しないように、火入れという熱処理をしますが、「蔵酒」は醸造の後、手を加えることなくそのまま低温で貯蔵しております。一年一年味わいが増し、まろやかに育った酒です。
現在、平成9年醸造以後の「蔵酒」を取り揃えています。
代表銘柄
平成9年 蔵酒 生大吟醸
酒造りの重要な作業の一つに原料米の精白作業が御座います。
吟醸酒の場合、精白の歩合が約50%以上。中には40~30%というものも・・・・。48時間から72時間程かけてやっと40%まで精白できます。
また、麹つくりにも寝ずの番。酒母(元)造りも手間暇かけて。できた酒は、機械絞りではなく、人の手絞りで絞ります。こうして時間と手間をかけて出来るのが吟醸酒、または大吟醸といいます。
長熟させる古酒はワインを地下で保存する方法と同じで、低温でなおかつ温度変化の少ない場所に寝かせること数年間。ご存知の通り、年代物となります。口に含むとのどごしがよく、きわめてまろやかな味わいがある酒となるのです。近年、やっと酒税法が改正されて良質の酒を幅広い方々に味わって戴くことが出来るようになりました。この機械に是非お試し下さい。
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