ねこ庭の独り言

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1994年世界はこう動く - 3 ( クリントン政権とウォール街 )

2020-08-01 22:05:35 | 徒然の記

 前回の続きです。ウォール街の金融筋と、クリントン氏の話です。

 「ウォール街が最も憂慮しているのは、日本製品が、アメリカの市場から締め出されることです。」「そうなれば日本は、アジアの市場を目指し、」「アジア地域での投資活動を強化することになる。」

 日本が本気でアジアへのシフトして、日本の影響力が増大し、戦前のように、アジアで日本の地位が高まれば、米国の利益が損なわれます。日本叩きは、ウォール街の意向だろうと思っていましたが、そうではありませんでした。ウォール街の意向は、日本にアメリカ市場を占有させたくないが、アジア市場へのシフトもさせたくないという、複雑なものでした。

 「クリントン大統領の後には、いつもウォール街がいる。」「日米の貿易摩擦が激化するとしても、」「日本製品が、全く締め出されると言う事態にはならない。」「クリントン政権の保護貿易主義には、常にウォール街という、ブレーキがかかる。」

 クリントン政権とウォール街との間に、こんなせめぎ合いがあったとは、知りませんでした。日本のマスコミも、このような情報をトップニュースとして伝えてくれれば、国民の役に立ちますが、彼らは知っていても、ウォール街の話を、日本国民に伝えません。政治家も同じですが、これが戦後日本の情けない実情です。知らないよりはマシですが、27年も経って日高氏に教えられるのでは、気の抜けたサイダーみたいな情報です。

 「円高が、90円程度で止まるのではないかと予想する最大の理由は、」「あまり行き過ぎると、日本が東南アジアと中国で投資をする際に、」「円高を利用して過当な利益をむさぼり、」「日本の経済活動を、過度に拡大させてしまうことになると、」「アメリカ財務省の幹部が、懸念しているからである。」

 アメリカ財務省の幹部とは、おそらく、ウォール街の息のかかった高官なのでしょう。大統領であるクリントン氏とは、別の世界戦略で動いていることが、予測できます。財務省は、アメリカだけでなく日本でも同じで、なかなか政府の、というより、政権トップの言うことを聞きません。独自の資本・財務理論を持ち、相談なく経済政策を進められると、必ず抵抗します。ましてアメリカでは、ウォール街の意向となれば、大統領も我を通せません。

 日本、中国、韓国、台湾、香港、マレーシア、シンガポール、タイの9ヶ国は、アメリカやEU諸国に比べると、当時は昇竜のように発展していました。これらの国は、決済通貨として円を使い始め、円を溜め込む傾向が強まっており、アメリカの金融当局者と、FRBは、アジアで円が基軸通貨となることを懸念しました。

 「こうした懸念に対し、カーネギー研究所は、」「まだ円ブロックは確立しておらず、アジアは固まっていない、」「と述べたが、」「クリントン政権は、今こそ積極的に、」「東アジア進出の政策を、打ち出そうとしている。」

 そういえば、環太平洋経済圏でしたか、円ブロックの経済圏を作ろうという構想が、マスコミを賑わしたことがありました。しかし、アメリカの反対で、呆気なく消えたと、そんな記憶があります。

 「だがアメリカは、アジア進出を拡大するための、資金不足に苦しんでいる。」「国内での投資力にもかげりを見せており、いくら魅力的なアジア市場といえども、」「簡単に投資資金を見つけられないという、悩みがある。」「そのためアメリカの一部には、日本がふんだんな資金力で、」「アジアを経済的に独占してしまう、という心配が強くなっている。」

 強気のクリントン氏の内情が、このようなものだと分かっていても、細川総理は太刀打ちできなかったようです。この本が出されたのは平成5年なので、当時の細川、羽田、村山総理たちは、知らなかったわけではないと思いますが、みんな一年単位の短命内閣で、実力もなく、愛国心も薄い政治家たちでしたから、相手にされなかったのでしょう。当時のアメリカを代表する、興味深い意見を、氏が紹介しています。

 1. トーマス・デュースタバーグ氏 クリントン政権での商務次官補

  「クリントン政権がアジア政策を展開するにあたっては、日本の協力が必要だ。」

 2. ウィリアム・オドム教授 ハドソン研究所

  「アジアにおける日本の台頭は、今世紀で最も画期的な出来事であった。」「アメリカの指導者は、第二次世界大戦以前、」「日本の台頭のもたらす情勢に対して、戦略的な対応策を持っていなかったが、」「現在も、依然として持っていない。」「中身は時代とともに変わったが、日本問題の本質は、」「現在もそのままである。」

 クリントン政権は、当面は日本と、協力体制を取ろうとしていましたが、アメリカのトップには、日本への根強い警戒心があリました。この流れはそのまま現在も続き、米国政権の中には、対日融和派と対日警戒派が併存しています。それはまた、「ウォール街の金融筋」が、その時々でどのような対応をするかにも、左右されます。

 親米派の政治家や評論家、あるいは学者が、日本には沢山います。反日・左翼政権の中国と、韓国・北朝鮮に比較すれば、米国は大切な同盟国です。しかし同時に、米国の中にいる、日本肯定派と日本否定派の存在を、忘れないことが大切です。温故知新の読書から学んだことは、国際社会では、どこの国も、是々非々で生きる工夫をしているということでした。

 次回は、CIA、国防総省、議会のユダヤ系系議員勢力の反対にもかかわらず、中国、北朝鮮寄りの政策を進めた、クリントン氏について、日高氏が教えてくれた事実をご報告します。

コメント (2)
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