バーンスタム氏の、論文の続きです。254ページ、「北方領土」についてです。今から27年前に、米国の学者がどんな意見を述べているのか、関心をそそられました。
「北方領土の返還について、ロシアの指導者が心変わりしたのは、」「国内政治・経済の悪化という、全体的な状況が関係している。」「ロシアの経済危機を救うため、援助すべきだ、」「ロシア経済がうまくいけば、島が返ってくる、」「こういう忠告が、よく日本人に対してされるが、」「これは間違っている。」
「冗談抜きで、日本もアメリカも、他のどこの国も、」「ロシアを救うことはできない。」「財政面で見ると、ロシアは毎年、二百億ドルの金を、」「資本逃避で失っている。」「ここで注意しなくてならないのは、通常の資本逃避ですらない、ということだ。」
「民営化された輸出業者が、国へ納めるべき、国有天然資源の税金を、」「そっくり西側の銀行へ、預金しているのだ。」「それゆえロシアは、二百億ドルの黒字を抱えているのに、」「ルーブルが5分の1にまで、過小評価されている。」
財政・金融に弱いので、正確に理解できませんが、計算上は毎年に二百億ドルの黒字が出ているのに、国庫に納められず、不正な手段で、西側の銀行へ預けられているという話だと、思います。政情が不安定なせいで、輸出業者が国外へ、堂々と利益隠しをしているということなのでしょうか。
「貿易黒字を抱え、円が過大評価されている日本とは、好対照である。」「このような状況では、日本や西側諸国がどんなにロシアを援助しても、」「徒労に終わることになろう。」
ソ連が崩壊したのは、平成3年の12月で、本が出版されたのが、2年後の平成5年11月ですから、混乱の最中です。巨額の石油代金を隠匿する輸出業者ですら、取り締まれない政府だった、ということなのでしょうか。
「西側の、ロシア観測筋の認めるところでは、」「ロシアの外交政策は、1993 ( 平成5 ) 年になって強引さが増し、」「より厳しい要求をしてくるようになっている。」「特にそれが目立つのは、旧ソ連邦に関する問題で、」「ロシアは、旧ソ連の領土を、」「自国の安全保障地域にすると、主張し始めている。」
エリツィン大統領が訪日したのは、1993 ( 平成5 ) 年の10月でした。細川内閣の時です。こういう時期に、政府は、領土問題を話し合っていたということになります。
「ロシアの外交政策を取り仕切る顔ぶれは、以前と少しも変わっていない。」「彼らの姿勢の変化は、ロシア国内の、」「政治・経済情勢の変化と、軌を一にしている。」
「現在の危機的状況のもとで、また選挙を目前にした状況において、」「北方領土の返還に賛成できるロシアの政治家は、一人もいない。」「選挙が終わり、政治・経済状況が、」「可能な限り改善した後なら、北方領土交渉が再開され、」「いい方向に向けて、解決されるかもしれない。」
「日本はエリツィンに、次のように質問をぶつけてみるべきだ。」「ロシア国内がうまくいくことと、北方領土の返還は、」「本当にリンクしているのかと、」「おそらくエリツィンは、うなづかざるを得ないだろう。」
現在安倍総理が、プーチン大統領と領土問題を話し合っていますが、進むどころか、逆に難しくなっています。「前提条件なしで話し合おう」と、プーチン氏に言われ、総理がその気になりましたが、プーチン氏は憲法を改正し、「領土不割譲」の文言を追加しました。しかも、規定に違反した政治家には、刑事罰が下されるというものです。
石油収入だけが頼りのロシアは、石油価格の低迷で、国家財政がゆらいでおり、政治も経済もまだ安定していません。領土問題の解決の見通しは、遠のいていると見る方が当たっているのかもしれません。バーンスタム氏の論文は、これで終わりですが、領土問題の記事を、スクラップしていましたので、わかる範囲で、抜き書きしてみます。
1. 昭和36年 フルシチョフ首相から、池田首相宛て親書
2. 昭和48年 田中・ブレジネフ会談 交渉の継続合意
3. 昭和64年 宇野宗佑・シュワルナゼ外相会談 クリル諸島のソ連への帰属は国際法上、歴史上確定
4. 平成 3年 海部・ゴルバチョフ会談 関係拡大の中で検討
5. 平成 5年 細川・エリツィン会談 「東京宣言」
6. 平成 9年 橋本・エリツィン会談 「クラスノヤルスク合意」
7. 平成 10年 橋本・エリツィン会談 「川奈合意」
8. 平成 10年 小渕・エリツィン会談 「川奈合意」拒否
9. 平成 13年 森・プーチン会談 「イルクーツク声明」
10. 平成 15年 小泉・プーチン会談 「日ロ行動計画」合意
11. 平成 24年 プーチン首相 「はじめ」「引き分け」発信
問題の発端は、ヤルタでのルーズベルトとスターリンの密約にあると、聞いています。ソ連の対日参戦を望んでいたルーズベルト大統領が、代償として黙認したのが北方領土だそうです。
ロシア問題の専門家ですから、バーンスタム氏も知らないはずがありません。しかしそれについては、何も触れず、「日本はエリツィンに、次のように質問をぶつけてみるべきだ。」と、他人事でしかありません。
首脳同士の個人的な関係を、マスコミは盛んに強調しますが、これもまた「捏造報道」の一種でしかなく、踊らされてはなるまいと、警戒するに越したことはありません。
まとまりのないブログとなりましたが、私たちは、日本がまだ敗戦後の後遺症を沢山引きずっていることを、知る必要があるようです。「戦争の記憶を絶やすな」「戦争の悲惨さを後世に伝えよう」と、マスコミが毎年「終戦の日の特集」をしますが、本当に必要なのは、こんなことではありません。
「憲法」「沖縄の基地」「北方領土」「ヤルタ会談」「靖国問題」「南京事件捏造問題」「慰安婦捏造問題」など、どうして今のような事態になっているのか。それを検証し、後世に伝えることの方がより大切で、「戦争の抑止」と「平和」に繋がると、考えています。
「もう、こんな愚かなマスコミとは、付き合っておれない。」・・・これが現在の正直な気持ちです。
日高氏が編纂した『1994年世界はこう動く』の書評を、本日で終わりますが、次回は、世界一愚かで、おめでたい、日本を愛せないマスコミの「戦争特集記事」について、息子たちに、伝えると決めました。マスコミをなんとかしなくては、日本の明日は、閉ざされたままです。自民党の議員諸氏の中には、マスコミによる日本の破壊に警鐘を鳴らす、勇気のある人物はいないのでしょうか。