~Agiato で Agitato に~

再開後約20年になるピアノを通して、地域やほかの世代とつながっていきたいと考えています。

チャイコフスキーのピアノ三重奏

2009年01月24日 19時22分56秒 | 室内楽
チャイコフスキー(1840~1893)の、ピアノ三重奏イ短調 作品50「ある偉大な芸術家の思い出のために」という曲をご存知でしょうか?

これは1881年、チャイコフスキーが友人ニコライ・ルビンシテイン(1835~1881)がパリで客死したのを悼んで作曲したものです。
当時チャイコフスキーはローマにいたそうですが(1877年から滞在していたとか)、先輩でありもっとも親しい友人の死に大変なショックを受け、曲を作りながらしばしば五線紙に落涙したとか。
ニコライ・ルビンシテインはチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番をメタメタに評したことで知られますが、その後彼は自らの非を認め、その協奏曲を演奏。ふたりは和解し、一層親交を深めたと言われています。

チャイコフスキーがこの曲を作ったのち、ロシアでは、尊敬する人物の氏を悼む気持ちをピアノトリオで表すという習慣ができたのか、ラフマニノフはチャイコフスキーの死に際してニ短調のトリオを、同時期にアントン・アレンスキーはチェリストのK・ダヴィドフの死に直面して同じくニ短調のトリオを、そして、ショスタコーヴィチは親友ソレルチンスキーの死にホ短調のトリオを作曲しています。


さて、私はこの曲の第1楽章を練習するにあたり、CDを3枚ほど聴いています。

1.エミール・ギレリス(Pf)&レオニード・コーガン(Vn)&ムスティフラフ・ロストロポーヴィッチ(Vc)

2.マルタ・アルゲリチ(Pf)&ギドン・クレーメル(Vn)&ミッシャ・マイスキー(Vc)

3.ボリス・べレゾフスキー(Pf)&ワディム・レーピン(Vn)&ドミトリー・ヤブロンスキー(Vc)

いずれ劣らぬ名盤ですが、それぞれの聴きどころがかなり違います。
曲の美しさを聴くなら<3>、トリオならではの丁々発止なやり取りを聴くなら<2>、「五線紙の上に落涙」の思いを聴くなら<1>、といったところでしょうか。
最初はこの違いは年齢的なものかと思ったのです、写真を見た印象から。
たしかに<3>は3人とも若く、20代後半です。
ただ、<1>の3人が相当なご高齢と思いこんだのはかなりな誤解で、実際は<2>の3人とあまり変わらない年くらいの時に録音されたもの(50代くらい?)。
ギレリスやコーガンは歴史上の人物だし、ロストロポーヴィッチは「おじいさま」という印象が強くて(すでに亡き人となられましたが)、勝手に「人生知り尽くした演奏」と思ってしまってました(汗)。
<追記 2009年10月18日: CDに明確な記載がなかったので推量だったのですが、実際には30歳代時の録音のようです。訂正加筆いたします>

最後にテーマが帰ってくるときのコーガンのヴァイオリンは、何回も聴いてわかっているのに、毎回胸がつまります。この年代のロシア(というよりソ連ですね)の方々には、平和ボケした私などには想像もつかない重い日々がおありになったのだろうなあ・・・と思わざるを得ないような、ある意味「つらい」演奏でもあります。


今回のトリオがどんな演奏になるかはこれからの練習次第と思いますが、つたないアマチュアの演奏であっても「なにかが伝わる」表現ができればいいな、と思っています。