アメリカ合衆国の永住権(グリーンカード)のことについて、語っている女性の動画を見ました。
それを見ているうちに、思い浮かべた大切な友人の姿。
友人と言うのは失礼かもしれません。
私よりもずっと年上、夫と同じぐらいの年齢の女性でした。
私が仕事を辞め、夫と結婚し、娘を出産した後、夫の仕事関係を抜きに、初めて私そのものを仕事に誘ってくれたのが彼女でした。
「子供さんがいてもいいのよ、一緒に連れてきてくれてもいいわ。」
そうも言ってくれました。
彼女は大学の同級生だった旦那様の呼び寄せで、ブラジルにいらした方でした。
最初の頃はいろいろとやりたいこと、自分のやれること、夢を信じて頑張ってこられましたが、そのうちに私生活も仕事も思うようにはいかなくなって、私が出会った頃にはブラジル生活に夢を持てなくなってきていたころでした。
私が出会った頃の彼女の夢は「退職したら、アメリカに永住するの。そうしてのんびり、好きなように暮らすのよ。」
彼女はアメリカに既に永住していたお姉さんの助けで、アメリカの永住権を取得していました。
そんな彼女は、初めて会った時からうちの娘をとても気に入ってかわいがってくれました。
彼女と私は、その後も様々な仕事のつながりで、親しくさせていただいてきました。
仕事の会合があり、その後「じゃあ、ちょっと呑みに行きましょうか?」なんてことになると、かならず「娘ちゃん連れてきなさいよ!」と言ってくれました。
飲み会の席でも、ずっと娘の相手をして下さりました。
彼女は子供が好きと言うタイプではなく、娘と話をしているのを聞いても、全く子供相手ではなく「飲み友達」的な扱いで、周囲の友人たちはみんな二人のやり取りを聞いては大笑いをしていました。
そんな彼女はうちの夫とはとてもよく似たタイプ。
2人は周囲も認める犬猿の仲でした。
というわりに、行動パターンもよく似ていて、同じ日本食レストランに毎晩のように現れては、火花を散らす間柄でした。
その二人が、娘が生まれてから、娘を話題に少し話をするようになったと聞いて、「子はかすがいだわねー」と、よく冷やかしたものでした。
そんな彼女は夫が旅立つ3,4年ほど前、突然、本当に突然に旅立ちました。
やはりガンだったと聞きます。
病み付いた言う話を聞くこともなく、いきまり「亡くなった」という話を聞きました。
彼女のかわいがっていた犬はどうしたのかな?
そうは思いましたが、彼女が亡くなったというニュースは、本当にそれだけ。
誰も彼女が亡くなったという以外の話はしません。
そういう話をできる人たちも、もういません。
もし元気なら、今ごろはアメリカで自由気ままに暮らしているんだろうな。
「ペケママさん、遊びに来てね。うるさい旦那さんもいなくなったことだし(笑)」なんて言ってくるんだろうな。
テレビを見ながらそんなことを思いました。
みんな、みんな逝っちゃうんだな。
何年か前に思い描いた未来が、みんなみんな夢の世界になってしまいました。
みんな、ずるいな。
空の上では、相変わらず夫と彼女は侃侃諤諤、怒鳴りあいの喧嘩をしているのかな。
これも亡くなってしまった、二人の行きつけの日本食レストランの板前さんの調理場を前にして。
私がそこに行ける日は、いつなのか。
すぐにでも行きたいけれど、でも、まだもう少しこの世界に居なくてはいけない意味もある。
そうも思うのです。