憧憬、大艦巨砲主義w

盆栽RF900R 営農機セロー250 奥様号レブル250

袖ヶ浦駅。

2013-11-21 00:05:31 | どーでもいーレポ
ギレン氏は、お猪口をあおりながら、なおも続ける。
オールバックのグリースが、照明を写し込んでいるように見える。
  そう、君の言うところの「世の認識」、その認識のほうが間違っているのだよ。
  決して、自らの性欲や欲求を満たすための、たんなる素材ではないということなのだ。
  人類に価値あるモノとして、そう、ソレは「美」という観点からとらえ続けられてきたものなのだ。
  あくまで、普遍的な「美」であるのだ。
  君らが言うところの「カコイイ」、といったところではないかね?
  そして、ソレを口にせず、堂々と鑑賞もせず、無視するフリなど、大衆に対する迎合でしかあるまい?
彼はカウンターに肘をつき、中指と親指でお猪口をつまんだまま、その人差し指で、オレの鼻っ面を指差す。

いや、間違っているか否かは別として、その認識が一般的である以上、迎合はやむをえない、ではないか。
その迎合とは、他者の目線をはばかるコトに他ならない。
そしてソレは、迎合、とまで表現するには、あまりに小さな「心配り」の領域ではないか。

彼は、左手に握ったアタリメを奥歯でちぎり、咀嚼しながら目を伏せつつ、カウンターにため息を落とす。
30秒くらい、沈黙しただろうか。
彼の後ろで、制服姿の女子高生が、ジョッキでオレンジ色のジュースをあおり、バカ話をしている。
断片的ながらも、その内容が少しは理解できるほどの時間だ。

彼は、両肘をカウンターにつき、お猪口をおいた。
自分の顔の前で両手を軽く組み、目線だけをこちらに向けた。
  否。
  否である。
  まさに、「あまりに小さな」という価値観そのものが、迎合である、と言っているのだよ。
  普遍的な美、と、ソレは釣り合うものなのかね???
  ソレに向き合って、君は、その「心配り」が釣り合う価値観だとでも???

す、鋭い。
核心を深く突き通すような表現は、この男独特のものだ。
普段は外でも家でも飲まないオレだ。
が、彼の、こういうところが好きで、彼とは時折こうやって飲むのだ。
彼は、姿勢を正し、こちらに向き直る。
軍装の、肩の装飾が「シャリン!」と小さな音を立てる。
  「ボインはかっこいい」君は、そう言ったではないか!
  そう、あえて、言おう!
  ボインは、かっこいいのだっ!
  この人類の至宝を、、、賞賛せずに、鑑賞せずに、看過していいはずがない!
  我々は、戦わなければならないのだ!
  我々は、起たねばならないっ!

彼は立ち上がって、カウンターを、ばんっ!、と叩いた。
彼の後ろにいた女子高生たちは、ポーズボタンを押したようにこちらに目線を投げたまま、固まっている。

その静寂に気付いたのか、彼は後ろを確認すると、彼女らに背を向けたまま謝罪した。
  失礼した。
  少し、酒が過ぎたようだ。
  安心して続けてくれたまえ。

彼女らは、何か3~4言ひそひそしたが、おしゃべりを再開した。
ギレンは、また、カウンターに肘をつき、手酌でお猪口を満たし、ぐい、とそれをあおった。
そっとお猪口を置くと、そのまま、彼は顔をオレの近くに寄せた。
そして、目線を自分の背中のほうに向けつつ、言う。

  ところで。
  ボインは、カコイイ。
  そして、彼女らのパンツはカワイイ。
  カワイイから、つい、ガン見してしまう。
  そうは思わんかね???

うを!
そうか!
鋭いな!




と思ったところで、目が覚めた。




会社からの帰路、22時。
JR内房線の車内。
そこは、3駅も乗り過ごした、袖ヶ浦駅だった。
コメント (4)
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