若い頃、香川県の某市に4年いた。
ご存知の通り、香川は、さぬきうどんが名高い名物として知られている。
んでも。
別に讃岐うどんがうまいわけではないと、実は、当時から思っている。
讃岐うどんはフツーの手打ち(正確には機械打ちも含むのですが)うどんだ。
何が違うのか、ってーと、食べ方が実に上手だと思うのだ。
最も罪深いのが、釜揚げうどん。
ご当地の街道沿いにある大きな観光客向けのお店で、メインの商品になっているようだが、コイツを食して「さぬきうどんってば、こんなモンかね」なぁんて思ってはいけない。
粘化した炭水化物成分そのままなので、風味は最悪。
麺のゆで汁を身にまとったその麺は、食味も悪い。なんせ、うどんそのものは海水に程近い塩分を含むのだ。塩味の糊が付着しているようなものだ。
さらに、グルテン成分もゆるんだままなので、食感までわるい。
そう、釜揚げうどんは県条例で「さぬきうどん」と称するのを禁じるべきだ。
また、「うどんは噛まずにのどで味わう」なんてツウぶった御仁も多いが、それも、大ウソ。
うどんを噛み切り、咀嚼する際の小麦グルテンの味わいと歯で感じる食感を無視したおろかな食べ方で、調理者に礼を失する行為だ。
うどんは、釜から揚げたら、一旦冷水でよく洗ってぬめりを取り、その締まった麺をそのまま食すか、温食なら締めたうどんをざる上げして短時間加熱するのが正しい。
そして、釜から上げたてのうどんを食べるには、「製麺工場」がもっとも適している。
確かに、手打ちと機械打ちでは手打ちの方がウマイといわれている。
ただ、うまい手打ちうどんを打つことができる人材は、そうそう多くはないし、打てる量もわずかだ。しかも、その人材は老人が多い。希望者全てに回るはずは、ない。
個人的には、よく作業された機械打ちのほうが食感は上だと思う。
そして、その製麺工場では、シンプルに加熱用の釜+あげざる、だし、ちくわ・れんこんなどのてんぷら、しょうが(自分でスる)、わけぎ、しょうゆ、などを用意してその場でうどんを食わせる「工場店」が多数存在する。
通常、営業は早朝~13時位まで。
出荷する麺(飲食店やスーパーなどに卸す)のプラスアルファ程度の営業なので、朝早く、終わりも早いのだ。
今はいくらか知らないが、当時は、1玉¥100~130。2玉で¥150~200。¥3玉で¥250~300。
今コンビニで販売している菓子パンより安い。
そんなうどんが、最もうまい。
食し方は大きく二つ。
最低限度の基本としては、釜揚げしたら、冷水でよく洗って締めたうどんが、即、使用されなければならない。
まず、温食。
いりこを中心に出汁を取り、薄口しょうゆで味を整えたダシ(関東ではツユというがご当地ではこれをダシと称する)を、暖めたうどんに掛け、わけぎ、おろしショウガ、天カスもしくはチクワか根菜のてんぷらを乗せて食べる。
ショウガとワケギは必須。
冷食は、いくつかの流派がある。
スタンダードは、しょうゆ、わけぎ、おろしショウガ、化学調味料で、ダシなしで食べる方法。
うどんの小麦グルテンと炭水化物をストレートに楽しむ方法だ。
これにショウガではなく、大量の大根おろしとスダチの絞り汁を使用するものもわりと標準だ。
大根とそうめんやうどんの「和麺」の相性は温・冷ともに非常にいいのだが、まさにその代表選手といえると思う。
平日開店と同時に60席以上が地元民で満席となる名店のスタイルも、これだ。
長々と講釈垂れてしまったが。
最近、仕事で、千葉県の某街道沿いに、このスタイルに近いうどん店を発見してしまった。
発見というよりも、その存在は知っていたのだが、大概さぬきうどんを称する店ではがっかりし尽してきたので、喰う気はしなかったのだ。
たまたま、急激な便意に襲われ、昼食時だったこともあって、先日、初めてこの店でうどんを食べたのだ。
ま、いろんな部分で「そりゃ、さぬきうどんの本筋ではないですよ」と思う部分もあるのだが、ま、過去のうどんジャンキーにとっては、やけぼっくいに火、といったとこか。
金、土、月。
うどんジャンキー、復活の兆しあり(笑)。