とある映画の冒頭に似てますが、意図しておりませぬ(笑)。
今日の昼メシ。
バイト先で、ペアを組んでるおっさん、オゴってくれるという。
ただし、メニューは、ソバだという。
この辺は蕎麦屋など、ほとんど見かけないし、オレ自身も気にしたことはなかったのだ。
そう、ココはうどん県、しかも、本場とされる丸亀市にほど近いのだ。
高校出たばっかりのオレにとって、ソバなど、どうでもいいメニューの一つでしかない。
んでも、オゴってくれるんなら、そりゃ、ありがたくご相伴にあずかるだけだ。
「ここ店は、イイんだよw」
おっさんは嬉しそうだ。
まぁ、住宅街近くのフツーの蕎麦屋。
オレが住んでた埼玉では何のコトはないのだが、ここ四国では、こういう建物、大概うどん屋なのだ。
そういう意味では、めずらしいのだ。
のれんをくぐりつつ、引き戸を開けると。
「いらっしゃいませぇ」
オレの母より年上だろうか、奥から割烹着のおばはんが声をあげる。
おっさんは、右手を「よぉ」と上げながら、「盛りとざる、ハコでね!」とやる。
「あいー」おばはんが注文を受けたようだ。
この「でね!」というのが、この地では大変にキザったらしく聞こえるというニュアンスをオレが理解できるようになったのは、この頃から、3年も経ってからだ。
そこから15秒も経たないうちに。
見たコトもない、四角い朱塗りの急須のようなものそ、蕎麦猪口が、おばはんによって無言でテーブルに置かれた。
「まず、これなんだよ」
おっさんは、四角急須から蕎麦猪口になみなみソレを注ぐ。
蕎麦湯、だ。
すこーし、とろみの付いた、蕎麦の茹で湯だ。
ソバの香りが湯気になって鼻腔をくすぐる。
ふんふん、コレが蕎麦湯、か。
言うほどではないな、などと思いながらも、神妙に味わう。
おっさんは、ぐいっと蕎麦湯をやりながら、声を張り上げる。
「エビ、二本、ヌキでね!」
「あいー」
「どうでぇ、蕎麦湯、ってのは」
「ソバそのものもなんだが、オレはコレが捨てがたいんだよ」
そんなもんか。
だって、ただの茹で汁じゃん???
おっさんは、蕎麦湯を蕎麦猪口で、二杯飲んだ。
「ソバのあじっつーか、風味っつーのは、コレに詰まってると思うんだよ、オレは」
「いいかい、昼メシにソバを喰う、ってのは『駄蕎麦』といって、イキじゃねぇんだよ」
「本来、蕎麦、ってのはこう、なんだ、オヤツ、っつーか食事じゃぁねぇのさ」
いや、だって、今、昼メシじゃん(笑)。
「天ぷらに、ソバに、おツユに、お銚子、コレが本来の姿なんだよ」
「まぁ、今は仕事中だから、そういうワケにもなんねぇんだけどなw」
お銚子がないのに、おっさんは、ご機嫌だ。
「ざるはどちらさん?」
「おう、こっち!」
おっさんの前には、海苔の乗ったソバ。
ソレも、普通のザルではない、箱のような深い四角いザル受けにソバが山盛りになっている。
オレのほうに、海苔は、ない。
「おめ、ザルと盛りの違い、知ってるか?」
そのくらいは、知ってる。
オレの父が「海苔が乗ってるかどうかだ」って言ってた。
「こりゃぁな、グレードが違げぇんだよ、グレードが」
海苔以外は同じに見えるんだがw
「あ、見た目が同じだからさ、間違えないように海苔が乗ってるワケなのw」
「ソバも、粉に番手ってのがあってな、ソバは、粉が違うし、配合も違う、ざるは基本全部ソバ粉なんだよ。」
「ま、ソバが強えぇから、ツユも、カツオが強めになってる高級品ってこと」
「おめーのほうの、盛りってのは、この店なら二八なのさ」
「あ、二八ってのはソバ粉八割、つなぎに小麦二割ってことだよ?」
いいから、早くいただきます、ってやってくれよw
「んじゃ、いただこうぜ、、、って、待て、待てよコラ」
「しょーがねーな、いきなり、葱とワサビをツユにブッ込むんじゃねーよ」
「いいか、まず、蕎麦そのものを味見すんだよ、こう」
おっさんは、蕎麦の山から、五本ほどのソバをはしで掴みあげると、ぞぞっ、とすすった。
「やってみな、蕎麦の味と、風味がわかるから」
おっさんのやる通り、蕎麦を数本、手皿で、すすりこむ。
ふむ。
あ、ソバ、ってこういう味のするもんだな、うんうん。
オレにとって、ソバってのは、おばぁちゃん家で頂く、「ソバ米の雑炊」なのだ。
ソバの実を、徳島のおばぁちゃん家の地元では「ソバ米」と呼称する。
ソバ、ってのは、痩せた、山間地でイイものが取れるし、収量も上がる。
しかも、1合のソバ米は、水分を吸わせて雑炊のように仕上げると、ドンブリ1杯以上に膨れるのだ。
そう。
貧しい山間農家では、おなかいっぱいになるごちそうでもあり、メインの炭水化物でもあったのだ。
現代では、ソレを鶏の出汁、長葱、豆腐、油揚げなどを加え、雑炊のように仕立てる。
これは、そのまま、ソバの味、風味、繊細な粘りを満点で味わえるのだ。
んでも、このソバ、と言う麺は、それよりもずぅっと洗練されている。
ソバの味と風味以外の不要なものを削ぎ落したような、そんな印象だ。
「次は、ツユだ、何も入れるなよ」
「コイツも、ツユだけでよぉーく味わってみな、カツオ、みりん、砂糖、醤油、それだけなんだぜ?」
「日本料理の傑作だと思うんだ、オレは」
「すこーし、強いだろ、しょっぱいというか、あ、おめー、埼玉だっけか」
そう、四国のうどんは、イリコの出汁で、醤油は薄口なのだ。
うどん屋でバイトした時、主人が、「コレは醤油が少ないんやないで、発酵が抑えてあるんや」と言ってた。
確かに塩分濃度そのものは、関東人のオレが慣れ親しんだものと、大差ないように思う。
何と言うのか、上品な味わいなのだ。
このソバツユは、醤油の旨みも、みりんか砂糖かの甘みも、出汁の味も、強い。
うどんだしとは、斧とカミソリくらい強さが違う。
でも、不思議と、破綻した感じと言うか、ちぐはぐなカンジは全くしない。
「コッチのやつらは、コレをドブ汁とか抜かすんだ、わかってねぇな、この、クドさがいいんじゃねぇか」
「これがまた、ソバに、メッポウ合うんだよ」
「特に、この店は藪系だからな、ソバの実の、渋皮も一緒に粉にすんだよ」
「んで、おツユも強めなワケだ」
「更科系は、ひきぐるみを使わねぇから、もっとお上品なソバになるんだな」
「おっし、んじゃ、まず、薬味なしで、ツユで喰ってみな」
「おいおい、ソバをぜぇんぶツユにくぐらすんじゃねぇぞ」
「そういうのは、ゲスっていうんだ」
「こう、半分か、6割位を、こう、ツユにお風呂するワケだ」
「んで、、、こうやって、、」
ぞぞぞぞぞぞ~っ!
むぐむぐ。。。
「すすって喰うんだ、やってみな」
「いいんだよ、ソバってのは、上品に喰っちゃウマくねぇんだ、ほら、やってみろよ」
「いいか、すすったら、よぉ~く、噛むんだ」
「ソバの渋皮の味まで解るから、ほら、奥歯を臼みたいなカンジで使って、さ」
ソバの粉の感じまで、解釈可能なように、咀嚼する。
う、うまい。
コレが日本そばの実力か。
いままで、理解できたことはなかった。
ソバの味、風味、ツユの味わい。
まさに、コレがセットもんだとは、今まで気が付かなかった。
っつーか、なんだ、今まで、知らなかったのか。
何度も蕎麦屋のそばを喰う機会があったのにもかかわらず、この至高を意識できていなかったとは!
おっさん、あんたを「師匠」とさせてもらうわ、クチには出さないけど。
「んじゃ、葱はツユに入れて、ワサビは、使わねぇで、やってみな」
おっさんは、葱だけをどぼどぼ、蕎麦猪口のツユに投入する。
今までよりも多めのソバを手繰り、すすりこむ。
ぞぞぞぞぞぞ~っ!
むぐむぐ。。。
「どーでぇ、薬味の意味が、オマエにわかるかい???」
「ソバの風味がべらぼうに引き立つだろ!あぁ??」
うるせー、師匠、エラソーにすんな、アンタがえらいワケじゃねーし。
「エビ天2本~っ」
おばはんが、一皿にそっけなく乗せられた、エビ天二本をテーブルに置く。
「おう、これよ、これ、ほら」
「コレを、おツユに、喰うトコだけ、漬けて、一口w」
師匠は、1センチくらい、ツユにエビ天をひたし、ソコをかじる。
オレも、所作を真似る。
ツユの長葱の隙間に、エビ天の油が、わわっと広がる。
揚げたての天ぷらの、熱さを測りながら、かじる。
衣はツユで冷めてるが、中のエビはアツアツだ。
う、ウマい。
衣にしみ込んだツユと油のクドさ加減が何とも濃厚と言うか。
エビの動物性たんぱく質の香ばしさと、衣とツユと油のなんと良く合うことか!
「天ぷらのツユはな、コレなんだよ、もともとは」
「塩がウマい、とか、ふざけんな、とか思うワケよ」
師匠とオレは、ソバと天ぷらを3:1くらいのペースで口中に放り込んでいく。
ソバは、残り2割程度だ。
「今度はな、おい、聞けよ」
「ワサビを、コメ粒くらい、ソバに乗せて、、、そうそう」
「ワサビを、ツユにつけないように、ソバをツユにくぐらすワケだ」
ぞぞぞぞぞぞ~っ!
むぐむぐ。。。
う、うまい。。。
なんという、魅力的なアクセントというか、変化球と言うか。
残り2割のソバは、あっというまになくなった。
「な?うまかったろぉ???」
師匠は、ソバを喰ってたあの瞬間瞬間の連続を回想するように、つぶやいた。
「んでもな、ここからのお楽しみ、ってのがあんだよ、これが」
「コレがまた、いいんだよ」
真っ先に配膳された、蕎麦湯を頂いた蕎麦猪口に、蕎麦湯を再投入。
その、蕎麦湯で、口中を洗うように、一口。
んで、ツユの入った蕎麦猪口を口に運び、葱を箸で手繰りながら、これまた、一口。
「ほら、やってみな」
う、うまい。
ソバがまとっていた水分で、わずかに味の薄まったソバツユが、口中に残った蕎麦湯の風味と合わさって。
「いいか。ココからは、舌じゃなくって、アタマで味わうってのが、イキなんだ」
「ソバの旨味、風味、薬味のネギの香り、醤油、出汁。。。」
「どうでい、おめぇさんに、わかるかい???」
きっと、今までは、理解者が少なかったに違いないw
解る、わかるよ、師匠。
ガンダムなら、「見える!私にも敵が見えるぞララァ!」そんな、ニュータイプに覚醒したシャァというところか。
うんうん。
あんたの、言うとおりだよ。
蕎麦湯と、ツユの組み合わせは、至高。
コレ以上の口福は、いまだかつて経験が、ない。
蕎麦猪口の最後のツユに、師匠は、コメ粒一粒程のワサビを投入した。
「これで、シメだ」
「できるだけな、蕎麦徳利のおツユには手をつけねぇのが、スマートってもんなんだ」
「ワサビは、ほとんど残って、イイのさ」
「ま、何でもブッ込んで喰う、わからず屋が多いかんなぁ」
師匠は、蕎麦猪口を、ほんの少し強めに「タンっ」と机に置いた。
「長っチリは、よくねぇ、蕎麦屋は、薄利多売だからな、本来」
「いくら~っ!」
師匠にレクチャーを受けながら、約30分の駄ソバは終わった。
「ま、ザルが喰いたきゃ、バイト代で喰うんだなwwww」
ケチだったのか、カネ持ってなかったのか、それでも、イイ師匠でございました。
ええ。
蕎麦師匠wwww
もう、30年近く昔の経験でございます。
もう、70はかるーく超えてはるでしょうねぇ、師匠。
別段、会いたいにゃぁなどとは思いませんが、元気でソバ喰ってて欲しいです。
あ。
ガラゲなんですが、次葉でやっと4月キャンプのシメでございますwww
今日の昼メシ。
バイト先で、ペアを組んでるおっさん、オゴってくれるという。
ただし、メニューは、ソバだという。
この辺は蕎麦屋など、ほとんど見かけないし、オレ自身も気にしたことはなかったのだ。
そう、ココはうどん県、しかも、本場とされる丸亀市にほど近いのだ。
高校出たばっかりのオレにとって、ソバなど、どうでもいいメニューの一つでしかない。
んでも、オゴってくれるんなら、そりゃ、ありがたくご相伴にあずかるだけだ。
「ここ店は、イイんだよw」
おっさんは嬉しそうだ。
まぁ、住宅街近くのフツーの蕎麦屋。
オレが住んでた埼玉では何のコトはないのだが、ここ四国では、こういう建物、大概うどん屋なのだ。
そういう意味では、めずらしいのだ。
のれんをくぐりつつ、引き戸を開けると。
「いらっしゃいませぇ」
オレの母より年上だろうか、奥から割烹着のおばはんが声をあげる。
おっさんは、右手を「よぉ」と上げながら、「盛りとざる、ハコでね!」とやる。
「あいー」おばはんが注文を受けたようだ。
この「でね!」というのが、この地では大変にキザったらしく聞こえるというニュアンスをオレが理解できるようになったのは、この頃から、3年も経ってからだ。
そこから15秒も経たないうちに。
見たコトもない、四角い朱塗りの急須のようなものそ、蕎麦猪口が、おばはんによって無言でテーブルに置かれた。
「まず、これなんだよ」
おっさんは、四角急須から蕎麦猪口になみなみソレを注ぐ。
蕎麦湯、だ。
すこーし、とろみの付いた、蕎麦の茹で湯だ。
ソバの香りが湯気になって鼻腔をくすぐる。
ふんふん、コレが蕎麦湯、か。
言うほどではないな、などと思いながらも、神妙に味わう。
おっさんは、ぐいっと蕎麦湯をやりながら、声を張り上げる。
「エビ、二本、ヌキでね!」
「あいー」
「どうでぇ、蕎麦湯、ってのは」
「ソバそのものもなんだが、オレはコレが捨てがたいんだよ」
そんなもんか。
だって、ただの茹で汁じゃん???
おっさんは、蕎麦湯を蕎麦猪口で、二杯飲んだ。
「ソバのあじっつーか、風味っつーのは、コレに詰まってると思うんだよ、オレは」
「いいかい、昼メシにソバを喰う、ってのは『駄蕎麦』といって、イキじゃねぇんだよ」
「本来、蕎麦、ってのはこう、なんだ、オヤツ、っつーか食事じゃぁねぇのさ」
いや、だって、今、昼メシじゃん(笑)。
「天ぷらに、ソバに、おツユに、お銚子、コレが本来の姿なんだよ」
「まぁ、今は仕事中だから、そういうワケにもなんねぇんだけどなw」
お銚子がないのに、おっさんは、ご機嫌だ。
「ざるはどちらさん?」
「おう、こっち!」
おっさんの前には、海苔の乗ったソバ。
ソレも、普通のザルではない、箱のような深い四角いザル受けにソバが山盛りになっている。
オレのほうに、海苔は、ない。
「おめ、ザルと盛りの違い、知ってるか?」
そのくらいは、知ってる。
オレの父が「海苔が乗ってるかどうかだ」って言ってた。
「こりゃぁな、グレードが違げぇんだよ、グレードが」
海苔以外は同じに見えるんだがw
「あ、見た目が同じだからさ、間違えないように海苔が乗ってるワケなのw」
「ソバも、粉に番手ってのがあってな、ソバは、粉が違うし、配合も違う、ざるは基本全部ソバ粉なんだよ。」
「ま、ソバが強えぇから、ツユも、カツオが強めになってる高級品ってこと」
「おめーのほうの、盛りってのは、この店なら二八なのさ」
「あ、二八ってのはソバ粉八割、つなぎに小麦二割ってことだよ?」
いいから、早くいただきます、ってやってくれよw
「んじゃ、いただこうぜ、、、って、待て、待てよコラ」
「しょーがねーな、いきなり、葱とワサビをツユにブッ込むんじゃねーよ」
「いいか、まず、蕎麦そのものを味見すんだよ、こう」
おっさんは、蕎麦の山から、五本ほどのソバをはしで掴みあげると、ぞぞっ、とすすった。
「やってみな、蕎麦の味と、風味がわかるから」
おっさんのやる通り、蕎麦を数本、手皿で、すすりこむ。
ふむ。
あ、ソバ、ってこういう味のするもんだな、うんうん。
オレにとって、ソバってのは、おばぁちゃん家で頂く、「ソバ米の雑炊」なのだ。
ソバの実を、徳島のおばぁちゃん家の地元では「ソバ米」と呼称する。
ソバ、ってのは、痩せた、山間地でイイものが取れるし、収量も上がる。
しかも、1合のソバ米は、水分を吸わせて雑炊のように仕上げると、ドンブリ1杯以上に膨れるのだ。
そう。
貧しい山間農家では、おなかいっぱいになるごちそうでもあり、メインの炭水化物でもあったのだ。
現代では、ソレを鶏の出汁、長葱、豆腐、油揚げなどを加え、雑炊のように仕立てる。
これは、そのまま、ソバの味、風味、繊細な粘りを満点で味わえるのだ。
んでも、このソバ、と言う麺は、それよりもずぅっと洗練されている。
ソバの味と風味以外の不要なものを削ぎ落したような、そんな印象だ。
「次は、ツユだ、何も入れるなよ」
「コイツも、ツユだけでよぉーく味わってみな、カツオ、みりん、砂糖、醤油、それだけなんだぜ?」
「日本料理の傑作だと思うんだ、オレは」
「すこーし、強いだろ、しょっぱいというか、あ、おめー、埼玉だっけか」
そう、四国のうどんは、イリコの出汁で、醤油は薄口なのだ。
うどん屋でバイトした時、主人が、「コレは醤油が少ないんやないで、発酵が抑えてあるんや」と言ってた。
確かに塩分濃度そのものは、関東人のオレが慣れ親しんだものと、大差ないように思う。
何と言うのか、上品な味わいなのだ。
このソバツユは、醤油の旨みも、みりんか砂糖かの甘みも、出汁の味も、強い。
うどんだしとは、斧とカミソリくらい強さが違う。
でも、不思議と、破綻した感じと言うか、ちぐはぐなカンジは全くしない。
「コッチのやつらは、コレをドブ汁とか抜かすんだ、わかってねぇな、この、クドさがいいんじゃねぇか」
「これがまた、ソバに、メッポウ合うんだよ」
「特に、この店は藪系だからな、ソバの実の、渋皮も一緒に粉にすんだよ」
「んで、おツユも強めなワケだ」
「更科系は、ひきぐるみを使わねぇから、もっとお上品なソバになるんだな」
「おっし、んじゃ、まず、薬味なしで、ツユで喰ってみな」
「おいおい、ソバをぜぇんぶツユにくぐらすんじゃねぇぞ」
「そういうのは、ゲスっていうんだ」
「こう、半分か、6割位を、こう、ツユにお風呂するワケだ」
「んで、、、こうやって、、」
ぞぞぞぞぞぞ~っ!
むぐむぐ。。。
「すすって喰うんだ、やってみな」
「いいんだよ、ソバってのは、上品に喰っちゃウマくねぇんだ、ほら、やってみろよ」
「いいか、すすったら、よぉ~く、噛むんだ」
「ソバの渋皮の味まで解るから、ほら、奥歯を臼みたいなカンジで使って、さ」
ソバの粉の感じまで、解釈可能なように、咀嚼する。
う、うまい。
コレが日本そばの実力か。
いままで、理解できたことはなかった。
ソバの味、風味、ツユの味わい。
まさに、コレがセットもんだとは、今まで気が付かなかった。
っつーか、なんだ、今まで、知らなかったのか。
何度も蕎麦屋のそばを喰う機会があったのにもかかわらず、この至高を意識できていなかったとは!
おっさん、あんたを「師匠」とさせてもらうわ、クチには出さないけど。
「んじゃ、葱はツユに入れて、ワサビは、使わねぇで、やってみな」
おっさんは、葱だけをどぼどぼ、蕎麦猪口のツユに投入する。
今までよりも多めのソバを手繰り、すすりこむ。
ぞぞぞぞぞぞ~っ!
むぐむぐ。。。
「どーでぇ、薬味の意味が、オマエにわかるかい???」
「ソバの風味がべらぼうに引き立つだろ!あぁ??」
うるせー、師匠、エラソーにすんな、アンタがえらいワケじゃねーし。
「エビ天2本~っ」
おばはんが、一皿にそっけなく乗せられた、エビ天二本をテーブルに置く。
「おう、これよ、これ、ほら」
「コレを、おツユに、喰うトコだけ、漬けて、一口w」
師匠は、1センチくらい、ツユにエビ天をひたし、ソコをかじる。
オレも、所作を真似る。
ツユの長葱の隙間に、エビ天の油が、わわっと広がる。
揚げたての天ぷらの、熱さを測りながら、かじる。
衣はツユで冷めてるが、中のエビはアツアツだ。
う、ウマい。
衣にしみ込んだツユと油のクドさ加減が何とも濃厚と言うか。
エビの動物性たんぱく質の香ばしさと、衣とツユと油のなんと良く合うことか!
「天ぷらのツユはな、コレなんだよ、もともとは」
「塩がウマい、とか、ふざけんな、とか思うワケよ」
師匠とオレは、ソバと天ぷらを3:1くらいのペースで口中に放り込んでいく。
ソバは、残り2割程度だ。
「今度はな、おい、聞けよ」
「ワサビを、コメ粒くらい、ソバに乗せて、、、そうそう」
「ワサビを、ツユにつけないように、ソバをツユにくぐらすワケだ」
ぞぞぞぞぞぞ~っ!
むぐむぐ。。。
う、うまい。。。
なんという、魅力的なアクセントというか、変化球と言うか。
残り2割のソバは、あっというまになくなった。
「な?うまかったろぉ???」
師匠は、ソバを喰ってたあの瞬間瞬間の連続を回想するように、つぶやいた。
「んでもな、ここからのお楽しみ、ってのがあんだよ、これが」
「コレがまた、いいんだよ」
真っ先に配膳された、蕎麦湯を頂いた蕎麦猪口に、蕎麦湯を再投入。
その、蕎麦湯で、口中を洗うように、一口。
んで、ツユの入った蕎麦猪口を口に運び、葱を箸で手繰りながら、これまた、一口。
「ほら、やってみな」
う、うまい。
ソバがまとっていた水分で、わずかに味の薄まったソバツユが、口中に残った蕎麦湯の風味と合わさって。
「いいか。ココからは、舌じゃなくって、アタマで味わうってのが、イキなんだ」
「ソバの旨味、風味、薬味のネギの香り、醤油、出汁。。。」
「どうでい、おめぇさんに、わかるかい???」
きっと、今までは、理解者が少なかったに違いないw
解る、わかるよ、師匠。
ガンダムなら、「見える!私にも敵が見えるぞララァ!」そんな、ニュータイプに覚醒したシャァというところか。
うんうん。
あんたの、言うとおりだよ。
蕎麦湯と、ツユの組み合わせは、至高。
コレ以上の口福は、いまだかつて経験が、ない。
蕎麦猪口の最後のツユに、師匠は、コメ粒一粒程のワサビを投入した。
「これで、シメだ」
「できるだけな、蕎麦徳利のおツユには手をつけねぇのが、スマートってもんなんだ」
「ワサビは、ほとんど残って、イイのさ」
「ま、何でもブッ込んで喰う、わからず屋が多いかんなぁ」
師匠は、蕎麦猪口を、ほんの少し強めに「タンっ」と机に置いた。
「長っチリは、よくねぇ、蕎麦屋は、薄利多売だからな、本来」
「いくら~っ!」
師匠にレクチャーを受けながら、約30分の駄ソバは終わった。
「ま、ザルが喰いたきゃ、バイト代で喰うんだなwwww」
ケチだったのか、カネ持ってなかったのか、それでも、イイ師匠でございました。
ええ。
蕎麦師匠wwww
もう、30年近く昔の経験でございます。
もう、70はかるーく超えてはるでしょうねぇ、師匠。
別段、会いたいにゃぁなどとは思いませんが、元気でソバ喰ってて欲しいです。
あ。
ガラゲなんですが、次葉でやっと4月キャンプのシメでございますwww
でも、うどんも好きよ~
もちろんラーメンは言うに及ばず、、。
日本に産まれてよかった、、、。
私は関西人、、、名古屋以北の濃い~ぃダシには
合わないヒトなのです。
でも 喰ってみたいにょ
秋葉原のLAOXの隣にあった志な乃というお蕎麦屋さん。
ざるそば1050円で高めだったけど
千石電商や秋月電子で電子部品買った帰りには
とんかつ丸五かこの蕎麦の二択でした。
まだお店あるかなー。
バイク停められなくなってから秋葉原は行かなくなってしまった。
>>関西人
うんうん。
poitaは、関西関東双方の居住経験をもっておりますですww
関西のお味も、その構成が理解できますし、関東のお味も、その理由が解っちゃうpoitaなのでございますw
小麦粉中心のうどんなどは関西の「おダシ」、ひきぐるみの色の濃いぃ蕎麦には関東の「おツユ」が合うと思いますのです!
>>ラーメン
昨年神奈川に通勤してまして。
神奈川の「家系」ラーメンは、「九州とんこつラーメン」が原型だと、確信しておりますpoitaでございます!
>かっちゃんさん
ふむふむ。
アキバは、ワリとよく行くですよ、オシゴトで(笑)。
通過だけなら毎日往復の通過点でございます。
>>「丸五」「志な乃」
入力完了っ!
都内はお店が多すぎて、ドコ逝っていいかワケわからず、結局、「ゆで太郎」の特盛りそばか、社食が最頻出でございますww