さら地に舞う酔っぱらい

1999年12月21日 | 会社・仕事関係

 先週の土曜日、前の会社の有志の忘年会があった。
 ほんとうはこの日、への6番さんのお誘いで大阪オフに行くつもりだったが、
どうしても仕事を休めなかったので、大阪に行くのを諦めた。
 大阪に行こうと思っていたのが行けなくなって、落ち込んでいたら、木曜日
に忘年会をやるという電話が来た。これは不幸中の幸いだった。
 土曜日、会社の駐車場を出たのが5時半だった。家に着いたのが6時20分。
忘年会の始まる時刻だ。着替えて家を出たのが6時半。気持ちは焦る。

 ああ…だめだ。こんなに詳しく書いてたらいつ書き上がるか。この時期睡眠
が一番なのに。

 一橋学園の忘年会の場所に着いたのが7時10分。みんなは、すっかり盛り
上がっていた。14、5人が来ていた。秋田から来た奴もいる。7時半頃長野
の上田から来た奴で参加予定者がすべて揃った。
 みんなの顔を見ていて、さっきまで“あの”会社で一緒に仕事をしていて、
その帰りにこの店に来た、という錯覚に襲われた。以前の会社にいた頃、仕事
が終わるとよくこの居酒屋に来たものだった。

 ああ…、だめだ。もっと簡潔に書かなくては、時間がない。

 11時過ぎ、その居酒屋を出て、その上のスナックに行った。そこで2時間
ほど歌い語り合って、店を出た。
 その次、電車もないので、カラオケボックスに行くことになった。すると誰
ともなく、「会社に行ってみようか」ということになった。その中の一人のメ
ールで、会社の建物はなくなっていてさら地になっているとは知っていた。で
も、なんかそれを見てみたかった。みんなもそんな気持ちだったのだろう。疲
れた2人がカラオケボックスに残り、6人で行った。なんだかんだ話しながら、
約30分の道を歩いた。前の会社は、小平の陸の孤島のようなところで西武線
小平駅、一橋学園駅、JR国立駅にも遠かった。
 それまでがやがや賑やかな酔っぱらいたちは、先に元の会社に着いた一人が
いった言葉で静かになった。
「ああ…、やっぱり、ない」
 それを聞いて走り出した奴がいた。
 全員が門を閉じていた柵の前に並び、
「なんにもねェ」
 と、口々に呟いた。
 何もなかった。みごとに平らな地面が広がっていた。
 誰かが、門の柵を開けようとしたがなかなか開かなかった。しばらくして開
いた。
 狭く開いたそこから、全員中に入った。私も入った。
 以前、手前には会社の玄関があり、その横には、私がいた資材部があった。
 なんにもない。
 みんなめいめいに平らな地面を走った。
「おれの机はこの辺だったかな」
「ここでよく煙草を吸ってたな」
「あのあたりが、第2工場だったな。よく徹夜したな」
 静かに瞑想して歩く者あり、飛び跳ねてわめき回る奴あり、元の存在を丁寧
に確認する人もいた。
 私は、なんともいえない哀しみに包まれた。あの頃の私の仕事はどこに行っ
たんだろう。昼休み、屋上で私はトロンボーンを吹いたり、ケーナを吹いたり
していた。なんか、自分の大切な時間を奪われたような気持ちになった。
 カラオケボックスに戻った我々は、誰も歌わず静かに朝まで語り合った。

コメント
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