How Will You Measure Your Life? | |
Clayton Christensen,James Allworth,Karen Dillon | |
HarperCollins |
「イノベーション・オブ・ライフ」というタイトルで邦訳も出版されていますが、自分は原書をKindle版で読みました。
昨年、"Steve Jobs"を原書で読んだときには半年かかった自分ですが、この本はちょうど4週間で読了。
内容的にも平易だし、リーディングを鍛えたい人にはテキストとしておススメです。
著者のクリステンセンは、「イノベーションのジレンマ」がベストセラーになったハーバード・ビジネス・スクールの教授。
優秀で才能あふれるハーバードの同級生たちの中に、人生に躓き幸せをつかめない人々が少なからず出てきてしまうことをモチーフにして、意義ある人生を送るための方法を経営戦略の理論とシンクロさせながら分析しています。
私生活を経営学目線で語る?という点に興味を抱いて読み始めましたが、考えてみれば人生を如何に生きるか、家庭生活を如何に築くかというのは、まさに「マネジメント」そのものなんですよね。
ビジネスでよきマネジメントが実践できれば、それを私生活にも適用することも可能というのは実に納得的でした。
以下、印象に残ったところを挙げます。
○売り手が「何を売りたいか」ではなく、「お客はそれを買うことでどんな問題を解決したいか(求めているJobは何であるか)」が重要。家庭生活や友人との関係も同様、「どんな問題を解決してほしいのか」を考えよ。
○「能力(ケーパビリティ)」は3つに分解できる。「リソース」と「プロセス」と「プライオリティ」である。人生において何かを成し遂げるために「何を備えているか(リソース)」、「どうやってやるか(プロセス)」、「なぜそれをやるのか(プライオリティ)」を意識することが大切。
家庭生活において子供たちにやらせるべき仕事をアウトソースすると「プロセス」が身につかない。
○子供たちは「自分たちが学ぶ準備ができたとき」に学ぶものだ。親が「教える準備ができたとき」ではない。まさにその「学ぶ」タイミングにおいて、親は子供の傍にいなければならない。そして自身のプライオリティと価値観に沿った行動をして見せなければならない。
○親が子供たちに「適切な決断」をしてほしいと望むのは、ビジネスシーンにおいて経営者がミドルマネージャーに望んでいることと全く同じである。「適切な決断」が常に為されるために必要なのが「カルチャー」。カルチャーとは、共通のゴールに向かって複数の人間が行動する様式(way)のことである。カルチャーは繰り返しの中で育まれる。その家庭や組織ならではのプロセスとプライオリティの組合せである。
○人間はマージナル(限界)コスト思考に陥りがち。人生において「この1回だけ、特別に…」と言い訳して誤った一歩を踏み出してしまう。それがどれだけのフルコストをもたらすのかを見誤る。
よき教訓がたくさん散りばめられていて、感心しながら読んでしまいました。
で、原書タイトルにある通り、自身の人生がいかによきものであるかを測るmetricが必要であるということが最後に唱えられます。
で、著者にとってのmetricは「その人がよりよき人間になるために手助けをしてあげられる人の数」だと言います。
このあたりは非常に宗教的です(実際、著者は敬虔なクリスチャンなのですが)。
人生哲学を突き詰めていけばそういう境地に至るのも解る気はしてきますが。
邦訳版はこちら↓
イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ | |
櫻井 祐子 | |
翔泳社 |