貘の檻 | |
道尾 秀介 | |
新潮社 |
道尾秀介の小説を読むのは『光媒の花』以来2冊目。
だけど、読んだのが4年も前だったのでテイストをすっかり忘れてしまっていた。
ああ、確かにこんなふうに人間のダークサイドを描く志向の作風だったな、と。
ただ、その志向がスタイルの域を脱しないというか、人間の性(さが)の本質まで迫っていない感じがするのだよね。
土着的な寒村の古くて狭い人間関係をモチーフにしているあたり、横溝正史みたいのがやりたかったんだろうなとは思う。
ミステリとして、読む者を飽きさせない筆力があるのは認める(夢のシーンのおどろおどろしさも含めて)。
が、肝心の、人が他人を殺めたり自ら死を選んだりする動機がイマイチ説得性をもって迫ってこない。
悪くはないけど、やや物足りない。