そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

消費、意外に健闘…だとか

2014-04-22 22:53:09 | Economics

昨日、こんなエントリを書いたら、先回りしたかのように(?)今朝の日経朝刊にこんな記事が出ていた。

外食・レジャーに客足 「ちょい高」メニュー/遊園地・パック旅行 消費、意外に健闘

消費税率が8%に引き上げられてから3週間。小売業界では、予想外に早く買い物客が戻る売り場が増えている。企業が打ち出す新商品や出費を誘う行楽など、ちょっとしたきっかけで消費者の財布のひもが緩み始めているのだ。… 

レジャー施設は客足がプラスだし、デニーズやモスバーガーの高額メニューが売れていると云う。

まあそりゃ売れてるものだけ恣意的にピックアップしたらこういう記事になるわな。 
結局、ちゃんとした統計が出なけりゃはっきりしたことは言えませんな。 

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物価が上がったのに支出が『変わらない』ってことは…

2014-04-21 22:52:27 | Economics

18~20日にかけて日経新聞社とテレビ東京が実施した世論調査の結果が、今日の日経朝刊に出てましたが。

支出「変わらず」66%

4月から消費税率が8%に上がった後、家計支出に影響が出たかを聞くと「変わらない」が66%を占め「支出を減らした」の31%を大幅に上回った。

3月調査では消費増税後の支出が「変わらない」が51%で「支出を減らす」は44%だった。増税で消費を抑える動きは限られているとみられる。 

これって巧妙なレトリックだよね。
増税で価格が上がっているのに支出が変わらないとしたら、購買数量を減らしてるってことだから、実質的に支出は減らしているのと同じこと。
増税前で現実に物価上昇を体験していない時点(3月)での「変わらない」という回答とは同等には論じられないはず。 

日経は消費増税応援団だからねえ。
日経に限らんけど。 

増税を支持するならするで構わないけど、こういう意図的な誤魔化しはやめてほしい。 

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『一揆の原理』 呉座勇一

2014-04-17 23:15:58 | Books
一揆の原理 日本中世の一揆から現代のSNSまで
呉座 勇一
洋泉社


本著の中でも紹介されているファミコンソフト「いっき」。
ああ、そういうのあった!と懐かしくなりましたが、確かに一揆というと竹槍持っての武装蜂起というイメージなんだよね。
(1980年生まれの著者がよくそんなの知ってるな、という気はしたけど…)

ところが、そういった竹槍武装蜂起イメージの一揆というのは「階級闘争史観」に囚われたものだと著者は断じます。
明治初期のほんの10年間ほどに発生した「新政府反対一揆」に限られるものであると。

中世・近世の一揆(国人一揆、一向一揆、土一揆、百姓一揆、etc)は、体制転覆を目指したようなものではなく、体制の存続を肯定し、体制内での地位向上、待遇改善を目指し、権力者に対してアピールを行うものであった。
現代で云えば、強訴はデモであり、逃散はストライキであると。
労使協調を前提とした「春闘」や、現実的・具体的な解決策を提示しない「反原発デモ」という喩えが、非常によく腹に落ちます。

これとは別に、一揆には「契約」という側面をもった形態のものがあったことが解説されます。
交換型の一揆契状を取り交わし、同盟関係を結んだり、親子契約・兄弟契約を締結したりする。
地縁・血縁ではなく、「ルール」を基盤とした関係を構築する点で、著者はこれらを現代におけるSNSになぞらえます。
ただ、こっちの喩えはわかるようでわからん感じ。

とにかく、「春闘」や「反原発デモ」のイメージがとてもわかりやすく、日本人って昔も今も変わらんのね、というか、これから先もちょっとやそっとじゃ変わらんのだろうな、というのが最も印象に残りました。
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『だから荒野』 桐野夏生

2014-04-06 23:01:44 | Books
だから荒野
桐野 夏生
毎日新聞社


これまでのドラマティックな桐野ワールドに比べると、ずいぶんと身近なところをモチーフにした作品。
しかし、これだけの筆力のある作家に身近なところを攻められると、なんだか身につまされるようなリアリティを感じてしまう。

やはり自分としてはダメ旦那・浩光に、10年後くらいの自分の姿を重ねながら読んでしまうのだけれど。
もちろん、こんなダメなヤツではない(と思っている)けれど、それでもところどころ思い当たる精神性を見つけてしまってちょっと恥ずかしくなったり。

浩光に限らず、主人公は皆デフォルメされている。
が、言動一つ一つが無理なく造形されているというか、基本的な行動原理が違和感なく形作られている。
だからこそ空恐ろしい。

女性作家が女性を主人公にして書いた小説なので、男性の登場人物はやや不利な立場に置かれてはいるものの、男性読者としてはそこをグッと堪えて、謙虚な姿勢で読まなきゃいけないんだろうな、とは思う。
その意味で「痛い」小説。

一日で一気読みでした。
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浜田宏一氏のアベノミクス評がちょっと面白い件

2014-04-01 22:47:46 | Economics

本日4月1日の日経新聞朝刊「経済教室」は浜田宏一・エール大学名誉教授。
アベノミクスの経済理論ブレーンだけに、「異次元緩和」によるリフレ政策を評価するスタンスなんだけど、一般的なリフレ擁護論ではあまり語られないトーンのところが2箇所ほど見受けられたので以下メモ。

…株価上昇は借り入れ時の担保価値を上昇させる。金利がゼロでもなぜ貸し出しが増えないかというと、資金に対する需要がないからではなく、貸し手を満足させるような担保を提出できないからである。株価上昇が銀行の信用供与を容易にするのである。この信用加速の効果は銀行が現金準備にしがみつくのを防ぎ、銀行貸し出しが隅々に行き渡るのを助ける。

資金に対する実需は存在する、という立場ですね。
この辺は反リフレな人たちと真っ向ぶつかるところ。
金融実務の現場ではどうなんだろうな。
担保ありきの貸し出しって、結局バブル肯定論につながるような気もする。 

もう一箇所(ちょっと長いけど)。 

 日本は市場経済の国である。首相や経済産業担当相が産業界に懇請したからといって、合理的な収益の基盤がなければ企業は賃上げやベースアップ(ベア)を政府の希望通りにできるわけではない。
 確かに需要面では、アベノミクスの余得を経営者や株主から労働者に配ることは総需要を高める効果がある。しかし供給面を考えると、賃金が物価と生産性の上昇率よりも高まるような状況は、デフレギャップの解消や労働市場に望ましくない影響を与える。すなわちケインズもすでに明らかにしているように、賃金上昇率が、物価上昇率と生産性上昇率の和よりわずかに少ないような状態が望ましいインフレなのである。
 賃上げがそれ以上になると、需要の面からは良いが供給側の企業が困って雇用の創出につながらない。今年の春闘の結果はその意味で、ほどほどに良い結果であると思ってよい。
 ただし賃上げ、しかもベアまで広がったというのは、経済原理からというより、市場心理のうえで良い結果であった。日本の大衆には今でもアベノミクスに対する一種の不信感があるように思える。アベノミクスは株式市場や輸出業界の大企業のもので、労働者や庶民のものではないという実感である。
 以上のような日本の投資家の心理が、株価が下がった時に日本人が買いに出ず、みすみす利潤機会を無にしている恐れがある。トリクルダウンが賃金交渉にまで下りてきて、そこで労働者にも利益が分配されるのが実感となったのは、政府の賃上げキャンペーンの成果であろう。 

政府の賃上げキャンペーンは基本的にはナンセンスだけど、今回は結果オーライだった、としているのが面白いところ。 
それにしても、そんな「望ましいインフレ」なんてうまく調節できるもんなのかね? 

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