![]() | 日本人はなぜシュートを打たないのか? (アスキー新書 018) (アスキー新書 18)湯浅 健二アスキーこのアイテムの詳細を見る |
著者はサッカージャーナリスト・指導者。
1970年代にドイツにサッカー留学してコーチ・ライセンスを取得、帰国後当時日本リーグの読売クラブのコーチを務めた人物。
ホームページに掲載している日本代表やJリーグの試合評はサッカーファンの間で広く支持されているようです。
こういうタイトルの本ですが、日本人がシュートを打たない理由については然程紙面を割いて論じられているわけではありません。
著者の言葉を借りれば、本著の基本コンセプトは「サッカーを語り合うための基盤整備」。
「基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(ウーマン)の方々をターゲットに」書いた、とのこと。
本著は、サッカーの勝負は「ボールがないところで決まる」ことを教えてくれます。
常にスペースを狙って走り続ける「クリエイティブなムダ走り」、ボールの無いところで忠実に行う全力でのチェイス&チェック。
サッカーにおいてはそういったプレーが決定的に重要であることが、著者のドイツ留学時代の試合中に経験した出来事をベースにして論じられます。
そしてサッカーというスポーツが本質的に有する「心理ゲーム」としての要素。
自由の利かない足でボールを扱うサッカーは基本的にミスが起きやすいスポーツであり、一方で、ミスを犯すリスクを恐れていたら創造的なプレーは何一つできない。
リスクを冒すからこそ自由が生まれる。
シュートを打てる場面でありながらミスを恐れて味方にパスを出してしまう日本選手…(この点がタイトルにつながるのです)。
自分もサッカーを観戦するのは大好きで、Jリーグがスタートした頃から彼これ15年ほど観ていますが、所詮プレー経験のない素人なので、試合の勝負を分けるポイントがどこにあるのかだとか、真にチームの勝利のために価値のあるプレーをしているのはどのプレーヤーなのかだとかを的確に見抜く自身は無いというのが正直なところです。
試合を観ていてもついついボールを保持しているプレーヤーにばかり目が行きがち。
でもここ最近はテレビ観戦しているときでもボールホルダー以外の選手の動きを少し気にかけるようになってきています。
それはやっぱりイビチャ・オシム氏が日本代表の監督となり、その含蓄のあるインタビューを興味を持って聞いたり読んだりするようになったことの影響が大きいように思います。
オシム監督がジェフ千葉に植え付け、そして日本代表でも実現しようとした「人もボールも動くサッカー」。
それこそが著者の理想とするサッカーであり、オシム監督は著者にとっての理想の監督像なのです。
オシム監督が病床にあり、後任の代表監督の選任が進められています。
岡田氏が後任になったらオシム流のサッカーは継承されるのか、守備重視のつまらないサッカーになってしまうのではないか、などといった期待と不安がさかんに語られています。
一方でJリーグは大詰めを迎え、明日の最終節で優勝チームが決まります。
過酷な日程に蝕まれ天皇杯でJ2の愛媛FCに完敗してしまったアジア王者レッズが、J2降格の決まっている横浜FC相手に本来のサッカーができるのか。
この本から得た知見を頭に置きながら、新たな目で試合を観る。
なんだかちょっと楽しみになってきます。