そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「本能はどこまで本能か」 マーク・S・ブランバーグ

2007-07-30 23:36:09 | Books
本能はどこまで本能か―ヒトと動物の行動の起源
マーク・S. ブランバーグ
早川書房

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「本能」というのは我々が日常的に、無意識のうちによく使う言葉です。
「母性本能」「帰巣本能」といったように、学習によって学ぶのではなく生まれつき備えていている性質、といったイメージでしょうか。
我々が「本能」だと信じている動物や人間の行動が、本当に誰からも何からも教わることなく生まれつき備わっているものなのか、そのことに疑問を抱き、そのメカニズムを解明しようとする立場に立つ著者が、丹念な実験を繰り返すことでその解明に努めた先人たちの成果を紹介した本です。

たとえば、孵化寸前の鳥のヒナが誰にも教わらずに卵の殻を破って出てくることができるのは何故か、あるいは、カッコウのように別の種類の鳥の巣に卵を生みつける鳥の場合も生まれてきて別の種類の鳥に育てられたヒナが自分と同じ種類の鳥と交配して子孫を残すことができるのは何故か、など、普通我々が本能的行動と単純に理解しがちな動物の行動についても、おそるべき精密なプロセスを経て「発達」するものであることが実証されます。

ところが、現在、この分野では著者のような立場の学者は少数派だとか。
生まれもった「本能」と、後天的に獲得する「学習」をはっきりと区別しようとする生得論者が多数派を占めているそうです。
さらに、生得論は「遺伝子がすべてを設計(デザイン)する」といったデザイン論と結びつき、その勢いをますます強めているとのこと。
著者は、こういった生得論・デザイン論が、科学的な実証を伴っていないことが多いことを指摘し、合理性に欠けているとして批判します。
生得論は世間的な興味を惹く魅力には満ちているが、複雑なプロセスを単純化して理解しようとする安易な態度である、と。

キリスト教右派が勢力を増している昨今の米国では、「神による創造」と相容れないダーウィンの進化論を否定するような教育がされるようになっている、といった話をきいたことがありますが、こういった「神によるデザイン」といった思考方法は、世間にはウケがいいのでしょう。
(そういえば「設計者」「デザイン」などというと、「マトリックス」を思い出します。)

翻訳本なので学術用語などはいまいち判別がつきにくい(特に「発達心理学」「動物行動学」などの学問名称は何がどう違うのかがわかりづらい)だとか、生得論者に対する著者の批判に皮肉交じりの表現が多いので真意がストレートに頭に入ってこない(まるでオシム監督の記者会見のよう)だとか、という感じはしましたが、基本的には平易な内容で、興味深く読めました。
あと、パッケージ(表紙)が妙にかわいらしい。
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参院選雑感

2007-07-30 19:32:06 | Politcs
自公「安倍続投」を確認 党首会談 改造、来月下旬で調整(産経新聞) - goo ニュース

結局、選挙区は自民党の候補、比例区は民主党の候補に一票を投じました。
自民党にも民主党にも、他のどの政党にも勝って欲しくない、という気分だったので、人物本位で決めました(といっても消去法で仕方なく選んだ、という感じだけど)。

今回の民主党地すべり的勝利の要因は、明らかに地方の一人区で圧勝したことですね。
零細農家の所得保障など、小沢党首の掲げたバラマキ政策に地方の有権者が乗せられた、というか。
小沢さんって、経済的には新自由主義者だったはずなのにね。
旧来の自民党利益誘導政治を民主党が代わりに担ったって感じ。
今後、民主党が本気で政権を目指すなら、そんなバラマキなんてやってる状況じゃないことがだんだんわかってくるだろうに。

かといって、安倍自民党も応援する気にならないんだよね。
安倍首相の標榜する、安保・憲法問題だとか教育問題だとかでの「戦後レジームからの脱却」という志向には基本的には賛同するんだけど、安倍さんの場合そればっかりやろうとしているところに違和感を覚える、というか。
戦後レジームから脱却さえすればすべてうまくいく、みたいに安易に考えてるみたいに見えてしまう。
それよりも、税財政だとか、既得権益だとか、そういう根深い構造問題をこつこつと解決していかない限り、何もよくならないと思うんですがね。

ちなみに、年金記録問題がけしからんので民主党に入れる、という投票行動を自分はまったく理解できません。
年金記録問題ってどう考えても安倍政権の責任ではないでしょう。
民主党が政権とったからって、問題が解決するとはまったく思わんのですが。
こういうふうに世論が情緒にまかせて極端になびくから、ポピュリズム政治がますます蔓延するのでしょう。

まあこれでしばらくは衆参ねじれで、いろんな意味で停滞するんだろうな。
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収穫と課題

2007-07-29 13:56:14 | Sports
日本4位10人韓国にPK負け/アジア杯(日刊スポーツ) - goo ニュース

今大会、徹底的にゴールに嫌われていた羽生が6人目で出てきた時点で、マズイな、とは思ったけど。
羽生本人も、試合後のインタビューで「正直、蹴りたくなかった」と言っていたようだけど、そういうバイオリズムの悪い選手をラインナップした方に責任があるんでしょうな。
まあ、所詮たかがPK戦なので、大した問題じゃないとは思いますが。

オシムも俊輔も「試合内容は良かった」といった主旨の発言をしているようで。
そのへんどうも観ている側の印象とギャップがあるんだけど、冷静に考えてみるとオーストラリア、サウジ、韓国というAFC加盟国のうちトップクラスのチーム相手に、ほとんど試合の主導権を握っていたので(豪・韓については相手が退場で一人減ったという事情はあるにせよ)、内容は悪くなかったといってよいのかもしれません。
が、やはりストレスが溜まる。
熱暑の連戦で選手たちの疲労も極致に達していたのも理解できるので、テレビ解説の松木のように、安易な精神論で「勝負してほしいですね~」というのもどうかと思うけど、それにしても素人目にも「ここはシュートだろ」という場面でリスクを避けたパスを出したり、逆に「ここはパスだろ」という場面で無理なミドルを打ったり、意図のない放り込みにしか見えないアーリークロスを上げたり、というのがあまりに多すぎて。
もうちょっと、どういう状況でどういうプレーに出るのか、という判断基準についてチーム全体で意思統一すればいいのにな、という印象は持ってしまいます。

それと気になったのは、ジーコ時代に戻ったかのような、今大会における選手起用の硬直化。
スタメンも、選手交代のタイミングと起用方法も、ほとんど固定化されていました。
この点については、前回のエントリでも書いたように、選手層の薄さに起因していたと思われ。
オシム自身も試合後の会見で認めていて、

「レギュラーがもう一度、チャンスを与えられるようにした。私が選んだメンバーが、よかったのか悪かったのか、もう一度見たいという考えが方針としてあった。」
「戦術的な選手の配置については、1人の選手が複数の役割を担わなければならないスタイルだ。だから選手がもう少しだけ、個人のテクニックを上げることができていたら、さらに2、3人のよりスピードある選手を使うことができた。さらに、これは極めて大事なことだが、より優れたFWがいたら――。これには注釈だが、今のFWがよくないと言っているのではなく、もっと優れたFWがいたらという仮定の話だ。それに多少の経験を積んだ選手がいれば、もっとよかったと思う。」
「もちろん、もっと背の高くて、ジャンプも強いとか、個人能力が強い選手とか、そういう選手がいれば、こちらがゴールを決めてPK戦の前に試合を決めていたかもしれない。」

といった発言をしています。
一方で、

「もちろん、人間だからミスは出る。サウジアラビアに負けたが、もう一度、同じチャンスを与えた意味はそこにあった。もっとも、そのチャンスを生かせたかどうか。チャンスは3度ないかもしれない。私の故郷サラエボのことわざで「同じチャンスは2度来ない」というのがある。それを2回与えて、結果を出せなかった人間には、もうチャンスはないかもしれない。」

とも言っているので、秋の欧州遠征に向けてチーム構成の見直しも行われるのでしょう。

まあ結果はちょっと残念でしたが、収穫も課題もたくさん出た大会だったように思うので、今後よい方向に向かってくれることを期待しています。
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昨日のサウジアラビア戦

2007-07-26 22:32:35 | Sports
オシムジャパン、守備陣崩壊で最多失点負け…アジア杯3連覇逃す(サンケイスポーツ) - goo ニュース

昨日の対サウジアラビア敗戦についてはいろいろと分析と論評がされてますが、自分が受けた印象を少々。

「事実上の決勝戦」などと言われた準々決勝で、宿敵オーストラリアに勝利(と言っても120分では”引き分け”だけど)してワールドカップでの怨念を晴らしたことで、なんとなくもう優勝は確実、みたいな根拠なき楽観論が漂っていたような気はします。
もちろん選手たちにはそんな緩みはなかったと信じてますが、コンディショニング面でのアドバンテージ(日本はハノイに留まったまま中3日なのに対してサウジは長距離移動ありの中2日)もあって、どこか油断はあったのかもしれません。

試合内容はオシムや選手たちが言うように両チームに力の差は感じられなかったけど、とにかく「後手後手」の一言。
得点経過もそうだけど、攻めでも守りでも日本の選手の出足が一歩遅れ、ことごとく局面での勝負には敗れていたような。

それと、これもいろんなところで言われてるけど、選手層の薄さ。
途中から出てくる佐藤寿、羽生、矢野、水野あたりだと、”切り札”と言うほどのインパクトがなく、三都主とか家長とか、はたまた田中達とか松井とか大久保とか、個で勝負できる持ち駒が無いとな…と感じてしまう。

まあでも、ここで負けたからと言ってそれほど悲観することもないとは思う(世界は遠いな、というのは正直なところだけど)し、だからこそオシム責任論みたいなのもあんまり聞こえてこないのでしょう。

さて、次は三位決定戦で図らずも日韓対決。
韓国も欧州組抜きの飛車角落ち、日本も疲労の溜まった主力組を休ませるとのことなので、わりかし気楽に見られそう。
好ゲームを期待します。
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そのまんまお出迎え

2007-07-24 15:53:56 | Diary
宮崎県庁の正面玄関では東知事がお出迎え。
自分らは仕事で県庁を訪れたんですが、次から次へと観光バスが到着して、一大観光スポットと化してました。

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南国の朝

2007-07-24 08:00:52 | Diary
泊まりの出張で鹿児島に来てます。
昨日の最高気温は35.8℃、こちらはもう真夏です。

今日は宮崎に移動。

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何故日本の政治家はダメなのか

2007-07-21 18:16:39 | Politcs

今日の日経新聞マーケット総合面のコラム「大機小機」は、「政治家を育てる風土」と題して日本の政治のレベルが低下していることに対する人材面からの分析と提言がされていました(筆者は「桃李」氏)。
まさに我が意を得たり、といった内容だったので、引用させてもらいつつ紹介したいと思います。

まず、安倍内閣の閣僚に、失言や事務所経費問題などの次元の低いスキャンダルが続出していることを嘆きつつ、以下のように断じられています。

特に問題のある政治家を閣僚に選ぶはずはないから、これほど問題が続出する以上、統計的に見れば、政治家全体のレベルが相当低下していると考えざるを得ない。

そして、政治家という職業に優れた人材が集まらない原因についての仮説分析が展開されます。

政治家になり責任ある地位に就くと資産公開を求められ、経理の透明性を要求される。だが、その収入は民間の企業経営者に比べれば高いとはいえない。しかも、いったん選挙に落ちればタダの人であるだけでなく、一度政治家になった人を雇う企業はない。
このようなリスクの高い職業に優秀な人材が集まるはずはない。政治家の世襲批判を問題視する声もあるが、それは裏を返せば、政治の世界に、外部から優秀な人材の新規参入を引きつける魅力がないことの反映でもある。

続いて、こうした日本の状況との比較対象として米国の事例が紹介されます。

米国では、自らの主張を実現してくれる政治家を支援し育てるために、個人や企業が献金する文化が根付いている。民間の優秀な人材を閣僚に抜てきし、そのような経験を積んだ人材は政治の世界を離れても、一流企業のトップに迎えられる例が多い。政治家時代の収入は限られていても、生涯所得は極めて高い人が多く、優秀な人材が政治の世界を志望する大きな要因となっている。

そして、政治家だけでなく公務員についても同じことが言えるとした上で、結局のところ問題は日本の国民全体に還元されることを指摘します。

公務員にも給与引き下げや綱紀粛正、天下り規制などばかり強要すれば、優秀な人材は寄りつかない。国民は政治から与えられるものを待つのではなく、自らがコストをかけて良い政治家やシンクタンクを育て、自らの信ずる政策を実現させる監視役でなくてはならない。政治家のレベル低下は国民意識のレベル低下の問題でもある。

必ずしも米国の真似をする必要はないと思うけど、太字にした部分は非常に重要なことを言っているなあ、と。
テレビも世間も、政治家や公務員にモラル面からの批判を浴びせるばかりだけど、もっと建設的に、それじゃあどういうシステムを採れば事態が改善するのか、他人任せでなくみんなが考えるようにならないと、政治のレベルは低下し続けるだけなんでしょう。

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困ったことに

2007-07-21 00:08:53 | Diary
参院選まであと約一週間。
今日、選挙公報が届いたので改めて眺めてみましたが、困ったことに投票したいと思う候補が一人もいない(特に選挙区)。
困った。関心はあるのに。
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リケン支援に思うこと

2007-07-20 23:22:45 | Economics
リケン株が続伸、地震前の直近高値を上回る(ロイター) - goo ニュース

中越沖地震で被災した自動車部品メーカー・リケンの復旧作業に各自動車メーカーが大量の人員を支援のため派遣しているとのこと。
別に資本関係のあるグループ企業というわけでもないのに、ここまで手厚く援助するというのはコーポレートガバナンスの在り方としてはどうなのかな、という気もせんでもないですが、実際問題リケンの部品供給が止まることにより、全メーカーの生産ラインに影響が出ているというのだから仕方がない。

それにしても、このリケンという会社が自動車産業全体においてこれだけ重要なポジションを占めているということは、ほとんど「競合他社」という概念は無いということなんでしょうね(他にも同じ位置づけにある部品メーカーは多数あるんでしょうが)。
そうだとすると、部品の価格決定権も相当程度このメーカーが握っていて、価格が高止まりしてそうに思えるんだけど、実際には外国車に比べて日本車は十分安いわけで。
やはり日本の自動車産業というのは業界としての成熟度が相当高いってことなのかな、と改めて思った次第。
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絆創膏とコミュニケーションセンス

2007-07-17 22:36:26 | Politcs
領収書公開、改めて否定 赤城農水相、顔にガーゼ(朝日新聞) - goo ニュース

ガーゼ(絆創膏?)の理由にはまったく興味がないけど、そんなナリして会見に臨めば理由を聞かれるのは分り切ってるんだから、気の利いた説明の仕方くらい用意しておけばいいのに。
一般人だって、もしそんな大きな絆創膏はって会社や学校に行かなきゃならないとしたら、ウケを狙うなり言い訳するなり何かしら”返し”を考えるでしょ。
ましてや渦中にある閣僚なんだから。

こういうところからして、この人のコミュニケーション力の欠如というか、対人センスの無さを感じざるを得ません。
それとも思わせぶりを狙っているとか、他に理由でもあるんだろうか。
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