この前の日曜、大学時代の友人の結婚式に出席した。
同じく招待された別の友人と久々に会った。
彼の職業は裁判官。現在はある地裁で刑事裁判を担当している。
最近の仕事ぶりなんかを聞かせてもらっていたのだが、ふと思い出し、「そういえば裁判員制度っていつから始まるんだっけ?」と尋ねてみると、「平成21年から」との答え。
平成21年といえば3年後じゃないか。もっとずっと先の話かと思ってた!
で、その後この件について少々話をしたのだが、裁判官である彼自身この制度についてはかなり不安を抱いているようであった。
裁判員は無作為抽出によるクジで選ばれる。
どんな人が選任されるか全くわからず、例外を除けば裁判官も裁判員も選任を拒否することはできない。
裁判官は、法律のホの時も知らないズブの素人を導きながら判決まで至らなければならないのだ。
そんな話をしてから2日後の今朝、朝刊にはハセキョーをキャラクターに使った裁判員制度の一面広告が掲載されていた。
興味が出てきたのでネットでちょっと調べてみた。
最高裁による制度を説明するサイトは
こちら。
日本の裁判員制度は、米国の陪審制とは異なる制度である。
陪審員は、有罪か無罪かの判定のみを行なう。
ハリウッド映画でよくある"Guilty? or Not Guilty?"というヤツである。
量刑判断は裁判官が行なう。
これに対して日本の裁判員制度では、裁判官と裁判員が合議により、有罪無罪だけでなく量刑まで決めることになる。
裁判員が参加して行なう対象となる裁判は、「死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に関する事件」および「法定合議事件(法律上合議体で裁判することが必要とされている重大事件)であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に関するもの」である。
要は、殺人、強盗などの凶悪犯罪が対象になるということ。
裁判員の候補に選出された場合、出頭義務が生じる。
「忙しいから」というような理由では辞退することは許されない。
ある人間が一生のうち裁判員に選出される確率がどれくらいなのかについては、どこにも明確には示されていないが、友人によればその確率はそんなに低くはない(けっこう選ばれる可能性は高い)らしい。
世論調査によれば、裁判員に「選ばれたくない」と回答した人が7割にも上るとのこと。
実際、こんなサイトもある→
裁判員制度に反対する親爺のホームページ
裁判員に選ばれる側にとっての問題点は大きく2点ある。
1.休業補償の問題
裁判員に選ばれると結構な期間拘束されることになる。
当然仕事も休まなければならない。
裁判員になったことによる不当解雇は法律で禁止されているがどこまで実効的か?
米国の陪審制でも休業は企業にとってかなりの負担になっているとの話もある。
また、自営業の場合はそのまんま自己負担になってしまい、大問題になる。
2.裁判員の身の安全の問題
裁く対象は凶悪犯罪である。
プライバシーや安全には配慮した制度になっているというが、どこまで実効的に担保されるのか。
個人的には、裁判員やってみたいなという気もするのだが、身の安全が大丈夫なのかはかなり不安だ。
自分が「やってみたい」と思うのは大学で多少法律をかじったというバックグラウンドがあるからであって、法律や裁判に何の興味もない多くの人たちが「選ばれたくない」と思うのも理解できる。
何より、どうして今裁判員制度を導入しなければならないのか?が納得的でない。
最高裁のサイトによれば、
「裁判を身近でわかりやすいものにする」
「司法に対する国民のみなさんの信頼を向上させる」
ことが導入の目的ということだが、果たして国民は現行制度にそれほど問題を感じているのであろうか?
刑事裁判に対する国民の不満といえば、
(1)裁判(判決が出るまで)に時間がかかりすぎる。
(2)責任能力(心神喪失・心神耗弱)の判断が納得しづらい。
(3)少年犯罪に対する罰が甘すぎる。
といったような点があるのではないかと思うが、(2)(3)は司法の問題というより、どちらかというと立法的に解決すべき問題だし、(1)については裁判員制度導入によって改善されるとも思えない。
伝統的に「お上に裁かれる」意識が強かった日本社会に、司法への国民の参加意識を取り入れようという制度導入の趣旨自体には賛成したいのだけど、どうして今やらなければならないのか、についてはやはり説得力は感じられない。
現状、国民的理解が全く得られていないと思われるこの制度、一体誰が何の目的で導入されることになったのか?
・・・よくわからん。
そうは言ってもこのまま行けば3年後には始まってしまうのだ。
裁判員に選ばれたら、皆さんはどうしますか?