自分たちで住むためにマンションを買うことを「投資」として捉えるという視点で書かれた指南書。
そういう視点で深く考えたことはあまりなかったので、目からウロコなところも多々ありました。
要はこういうこと。
例えば、5000万円のマンションを、自己資金1000万円、借入(住宅ローン)4000万円で買ったとする。
10年住み続けて、その間借入返済により元本を1300万円減らした時点でマンションを売却したら4200万円で売れた。
売却して得たキャッシュで残債2700万円(4000万円-1300万円)を一括返済すると、手元に1500万円残る。
即ち、10年前1000万円だった自己資金が1500万円に増え、これを次の自宅購入の頭金にすることができる。
自宅物件の値下がり額をローン元本返済額が上回れば、売却時手元に残るキャッシュは増えることになる。
これを繰り返していけば「わらしべ長者」のように「住宅すごろく」を進んでいくことができる…というお話。
こう書くと錬金術みたいだけど、もちろんそんな旨い話はありません。
最初の頭金(1000万円)と元本返済額(1300万円)を足したら2300万円。
で、手元に残るのは1500万円なので、ちょうど物件値下がり額である800万円(5000万円-4200万円)分、トータルではお金を失っている。
しかもこの他にローン金利も払っているのでけっして儲けているわけではない。
ただ、もし元本返済額以上に物件が値下がりしてしまっていたら、売却したときに手元に残るキャッシュは当初より減ってしまう。
そうすると住み替えることは難しくなり、一度買った家に一生住み続けるしかなくなってしまう。
要するに、マンションを買う際には、値下がりしにくい物件を選ぶことが肝要。
また、住宅ローンは繰り上げ返済などにより元本を早く減らしておいたほうがよい、ということ。
自分で住む場合、ローン金利は優遇されるし、ローン減税もある。
どうしたって金利は出ていくことになるけど、仮に賃貸に住んだとしても賃料を払わなければならないので、「住む」という便益を考えれば、投資用マンションを買うよりも「自宅に投資する」という考え方をもったほうがよい、と。
なるほどなーと思ったのは、人生のステージによって最適な住まいの要件は変わる、ということ。
結婚して子供が生まれる前なら2LDKくらいで十分なのが、子供が生まれて大きくなると部屋数が必要になってくる。
が、子供が独立して家を出て夫婦だけで老後を過ごすことになれば、そんなに広い家は必要なくなる。
その時々に最適な住環境に合わせて住み替えていくのが合理的であるという考え方には肯かされます。
一方で、人口減時代を迎えた日本では不動産価格がどんな場所でも右肩上がりになっていくわけではない。
上記のように手元キャッシュを増やしていけるような物件選択をしないと、住み替えようにも元手が無く、今の家に一生住み続けるしかないということになりかねない。
物件にも寿命はあるので、老朽化のリスクを抱え続けていかざるを得ないという事態にもなりかねない、というわけです。
ライフプランを考える上で重要な視点を与えてもらったと素直に思いました。
著者は、
住まいサーフィンというサイトを主催していて、本著の中でも再三紹介されています。
このサイト、7年前に自分が住まい探ししていたときにもよく利用させてもらったもので、いいサイトだとは思いますが、本著の中で「あらゆる物件の査定が公開されている」みたいにアピールされているのはやや誇張かと。
載っていない物件もたくさんあるように思います…