「働き方」の教科書:「無敵の50代」になるための仕事と人生の基本 | |
出口治明 | |
新潮社 |
ライフネット生命のCEO兼会長、出口さんの著書。
去年読んだ『仕事に効く教養としての「世界史」』がかなり良くってその後も何度か読み返しているし、いろんなところで著述活動やインタビューなどで語っている内容からも信頼がおける人だと感じていた。
こういうエッセイ風の書き物は、すべてを鵜呑みにするのではなく、ヒントになるような考え方が幾つかでも得られればそれで十分だと思っているが、そういう点では収穫大。
肩の力が抜けていて、それでいて熱い想いも込められているところがよい。
出口さんの人生観は「人間はチョボチョボだ」の一言に込められる。
もともとは小田実氏の言葉だそうだが、人間なんて大した生き物ではない、人生の99%は失敗だし、成功者はよっぽど運の良いほんの一握りの人たちだけ、たとえ人生をドロップアウトしたとしても多数派たる失敗者の一員になったと思えばよいのだ、と。
そしてこの本の中でもっとも共感したフレースは「仕事は人生の3割」。
チョボチョボで3割だからテキトーにやってもよい、という意味ではもちろんない。
自分自身の、そして周囲の人間の不完全性をしっかり認識しながら、その範囲で懸命に考え、正しく行動し、得られた知見を次代に伝え残すことが大事だ、ということ。
歴史の大きな流れの中で人間の営みを考える、出口さんらしい考え方だ。
20代の人に伝えたいこととしては、「やりたいことは死ぬまでわからない」「就職は相性で十分」「考える癖をつける」「仕事はスピード」といったことが挙げられる。
まったく同感。
特に「仕事はスピード」、たとえ完全でなくてもタイムリーに成果を示していくことでレスポンスを得ることができる。
ちょうど自分の年代、40代に向けては、まず、部下はみんな「変な人間」だと思えと。
そう、いくら言っても想いが完全に伝わることはないし、思い通りに部下を動かすことなどできない。
その前提でマネジメントを考えることが肝要。
そして、マネージャーとして広い範囲をみることになった暁には、「得意分野を捨てよ」と。
よく知っていることは放っておき、よく知らないことを勉強する、全体を粗く見る、そしてやはりここでも有限の感覚を持たなければならない。
何もかもできるなんて思ったらあかんよ、ということ。
そして、出口さんが「無敵」の年代と呼ぶ50代。
50代こそ起業にもっとも向いている、という。
50代になれば、人生のリスクがかなり具体的に把握できるようになっており、コストとして算出可能になる。
そして起業にもっとも必要となる「目利き」と「お金」に恵まれているのも50代だという。
50代は「遺書」を書く時代だとも言う。
ここで「遺書」とはそれまでの人生で得られた知見のこと、それを次代に伝えるために起業することで社会と経済に貢献せよ、ということだ。
正直言うと流し読みした部分もあるのだが、やはり総じて出口さんの話は面白い。
真似できるかどうかはともかく、これからの人生が楽しみになってくる。