犯罪 | |
フェルディナント・フォン・シーラッハ | |
東京創元社 |
著者は弁護士にして作家。
デビュー作である本作がドイツで大ベストセラーになったとのこと。
一風変わった「犯罪」の関係者から依頼を受けた弁護士の視点による、11篇の短編集。
個人的に印象に残ったのは、長年連れ添った妻を衝動的に殺めた老夫を描いた『フェーナー氏』、コソ泥たちが制裁の恐怖に巻き込まれそうになる『タナタ氏の茶盌』、正統派ミステリの『サマータイム』、なんだかスカッとする『正当防衛』、主人公の大河で数奇な人生に感動を呼び起こされる『ナイジェリアの男』…
けっこう凄惨な描写も多いけど、どこか喜劇的なおかしみがあるというか。
罪を憎んで人を憎まず、というよりも、罪を憎んですらいない。
罪は罰すべきものであることを肯定しながら、罰することと憎しみの感情はまた別ものなのである。