火花 | |
又吉 直樹 | |
文藝春秋 |
4ヶ月前から図書館に予約していたのだが、なんともタイムリーに芥川賞受賞した直後の先週末に回ってきた。
三連休の間に読み切ってしまった。
表現は平易ではないが、テンポがよいので読んでいて心地はよい。
編集者のアシストもあるのかもしれないが、文章力、語彙の豊富さは秀逸と思う。
まず感じたのは、「神谷さん」は又吉にとって理想の芸人像なのだろうなということ。
全編通じて、自身が棲まうお笑いの世界に対する、底知れなく深い、そして屈折した愛情が溢れている。
そして芸人であり続けることの、とてつもない苦しさも。
一方で、芸人の世界がこのようにピュアで誠実であることは、こちら側にいる我々にもイマドキけっこうバレてしまっているので、意外性には欠ける。
我々素人が想像可能な範疇を打ち破るには至らず、その向こう側を描いて欲しかったという何となしの物足りなさは漂う。
どん底をもっと暴いてほしい感じ。
ラストのボケも嫌いではないが、照れ隠しではぐらかしている感はある。