そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

『平清盛』観了

2012-12-24 17:03:29 | Entertainment
NHK大河ドラマ『平清盛』が昨晩最終回を迎えました。

最初っから最後まで一回も欠かさず大河ドラマを観たのは、自分にとっても初めてのこと。
『龍馬伝』で初めて最終回まで観切りましたが、『龍馬伝』も最初の数回は観ていなかったので。

低視聴率、兵庫県知事の批判など、いろいろと云われた『平清盛』でしたが、視聴率が低かったのは端的に云って女性に受けないないようだったからでしょう。
そもそもが華やかさと縁の無い武士(もののふ)の世界、しかも朝廷を巻き込んでのどんよりとした人間関係など、今どき女性に受けないもので視聴率が上がるはずがない。
来年の『八重の桜』は綾瀬はるかで視聴率回復することでしょう。

「画面が汚い」という批判もまったく意味が分からない。
小奇麗で無菌な人工的な画面みてりゃ楽しいんでしょうか?

登場人物の関係が分かり難いってのはその通りですね。
平のナントカ、藤原のナントカ、源のナントカ…同じような名前の人物がいっぱい出てきて、自分もかなりWikipediaのお世話になりました。

思うに、日本史上、ここまで大きく価値観の転換が生じた時代は他にないのではないかと。
確かに明治維新も大きな転換期でしたが、支配層が幕府から明治政府に変わった政権交代であり、連続的な変化と云えるのではないかと考えています。
一方で、清盛の時代は、それまでずーっと貴族だけでやってきた政治に武士という異物が入ってきて上下をひっくり返した。
その転換の与えた衝撃たるや、どれほどのものだったのか。
武士が公卿になったり、福原に遷都したりなど、今を生きる我々には容易に想像できないほどのショッキングな出来事だったことでしょう。
ドラマはそのあたりの価値観の転換を描くことに力を注いでいたように思いますが、なかなか伝えるのが難しい。
難解だと云われたのはそのあたりの事情もあったのかもしれません。

松山ケンイチも松田翔太も、最後は爺メイクまで、よく演じ切りましたね。
伊東四朗や三上博史の怪演も忘れられません。
聖子ちゃんだけはよく分かりませんでしたが。

個人的に演出面で印象深いのは、平治の乱の回での信西(阿部サダヲ)の無念さの表現、清盛が熱病にうなされる回で白河院が夢に登場して清盛の半生に深みをもたらした表現、鹿ケ谷の陰謀の回で西光を蹴り殺さんとする清盛と伊豆で覚醒する頼朝をカットバックすることで権力者の狂気と没落の予感を描出した表現といったあたり。

とても佳いドラマでした。
コメント (2)
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『企業参謀』 大前研一

2012-12-22 23:03:49 | Books
企業参謀 (講談社文庫)
大前 研一
講談社



大前さんの超ロングセラー。
今回読んだ文庫版初版は1985年ですが、最初に出版されたのは1975年のようですね。
40年近く読み継がれているということだけで驚きです。

教科書的に体系だった構成にはなっておらず、取り上げられている事例にはさすがに時代感を憶えるところもありますが、内容は色褪せていません。

第一章の床屋についての分析はQBハウスの出現を予言しているかのようだし、以下の部分など…

 低成長・不安定化というのは、ひとつの製品のライフサイクルにおいても見られる現象で、成熟期にさしかかった耐久財は、景気の変動を受けて大きくその需要が上下するのが特徴である。一国の産業においても、成熟期にはこれと類似の現象を起こしてくるのではないかと思われる。個人消費は一応充足しているので、不景気といわれれば様子を見ようという心理になり、金がないから需要がなくなるのではなく、買う必要もなく、買う気にもならないから自然に需要が減退する、という現象になる。
 これは、従来の経済学でいわれていたインフレとデフレの繰り返し(景気循環説)の根底にあるマネーサプライという物理量による因果関係に比して、たぶんに心理的なものである。また、従来考えてられていた景気、不景気が資本主義経済の発展途上で、しかも経済の成長期に起こっていたものであるのに比して、今日の先進諸国が経験している不況は、成熟期にあるがための景気サイクルである、という点で大きな差があると思う。 

・・・

 こうした意味で、遠からず、日本においても金融政策主導型の景気対策というものが必要となってくるはずである(あるいは、すでに70年代前半の不況についても、カタクナな公定歩合の維持が、不必要な混乱のもとになっているのかもしれない)。

・・・

 合板も靴も同じである。中国の七億人が第二次産業に集中してきたとき、労働集約型のものでわが国の方が有利なものは、輸送や保存ができないものに限られてきてしまうのは、当然の成り行きである。 

まるで今のことを語っているんじゃないの?と錯覚しそうになるほどです。
こういうのを先見の明というんでしょうね。
こんなの見せつけられると一気に信頼度が増しちゃいます。 

で、本題の企業経営に懸る戦略的思考プロセスについてですが、個人的に心に残ったところを以下列挙しますと… 

・トップの主勢力は中期経営計画の立案と遂行に向けられるべし。日常業務はラインマネージャーに任せる。上から下まで全員が会社の命運に思い悩むべきではない。

・中期計画では「仮定」を明らかにしておく。そうすれば客観情勢が変化したとしても、「仮定」のうちいずれが影響を受けるのかを分析しやすい。

・製品の置かれた位置(業種の魅力度と自社の強さ)によって戦略を定めたら、首尾一貫した号令が出なければ真の効果は出ない。(例えば、設備投資を危険なほどやっておきながら販売戦略では投資を絞って販売会社に一任するなどといったチグハグなやり方を避ける。)

・競合状態の把握=「なぜ現在のようなシェアになっているのか」を把握すること。 

・何よりも大切なのはKFS(Key Factors for Success)を把握すること。

・「これらの制約条件がなかったとしたらどのような可能性が出てくるか?」と考える。 

・ホワイトカラーのブルーカラー化:一国の有する優秀なブレーンの数は有限。大企業がこれを独占すると中小企業に回らない。大企業はブレーンが有り余っているため、これを無駄遣いする。 

そんなに特別なことが語られているわけじゃないんですけどね。
噛み締めてみます。

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何も進んでいないように見えて

2012-12-17 23:19:33 | Politcs

選挙が終わった直後に何か書いておくと、後から見返したときに楽しいということが分かった(参照)ので今回も書いておこう。

小選挙区制というのは元々、英国流の政権交代可能な二大政党制を標榜して(小沢さんが)導入したものだけど、階級・階層対立の薄い日本社会ではそうはならず、浮動票層の振り子の振幅を増幅しボラティリティを高める装置として働くことになるということがよく分かりましたね。 

しかしまあ、こうして振り子があっち行ったりこっち行ったりしてるだけで何一つ先に進んでいないかというと、そうでもないように思います。
古い自民党を象徴するような嘗ての”長老”たちはだいぶ引退したし、与野党とも離合集散を繰り返してきた中で、”消えてほしい”政治家たちは小党に追い込まれ、意外に”淘汰”は進んでいる。 

大勢力を盛り返した自民党も、前回総選挙直後の民主党の”我が世の春”的高揚感と比べると、随分と謙虚で慎重な物言いに終始している。
勿論、それは”戦術”なのだとは思うけれど、調子に乗りすぎて痛い目に遭うことを学んだだけでも進歩とは云える。
心配されているような”右傾化”がそう簡単に進むとも思えない。

何も進んでいないように見えて、ちょっとずつ進んでいる。

そう思わなきゃやってられなくない?

それにしてもさ、安倍サン、顔色悪すぎじゃないの。
あれは典型的な肝臓が悪い人の顔色だと思うけど… 

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日経三題 TPPと再軍備とアルゼンチン化

2012-12-11 23:26:15 | Economics

最近は日経新聞もほとんど流し読みしかしなくっているんですが、今朝の朝刊には「ほぅ」と思わされた記事が3本ほど。

まずは金融面のコラム「風速計」。
JAグループがTPPに反対する最大の理由は農業保護ではなく、稼ぎ頭である共済事業を守るためだとの見方が出ている、と。

 だが保険と共済の事業者には決定的な違いがある。保険会社が生命保険と損害保険の兼営を禁じられている一方、共済には兼営規制がない。法人税率も共済は優遇されている。経営破綻時に契約者を保護するためのコスト負担を保険会社は義務付けられているのに共済事業者にはない。
 米国はTPPで官民、国内外の企業の競争環境を平等にするように求めている。政府出資が残る日本郵政による新規事業への参入動向に注目が集まりがちだが、JAを監督する農水省幹部は「実は共済の扱いは隠れた焦点だ」という。 

こういうことなら米国に云われずとも日本の保険会社ももっと文句云えばいいのに、とも思いますが…

2本目、国際面のFinancial Times配信記事「フィリピン、日本の再軍備支持?」。

 フィリピンは軍事的な自己主張を強める中国と対抗させるために、平和憲法で武力を放棄している日本の再軍備を強く支持するかもしれない。
 フィナンシャル・タイムズとのインタビューでデルロサリオ比外相は「我々は日本の再軍備を大いに歓迎するだろう。地域でのバランス要因を求めており、日本は重要な役割を果たすことができる」と語った。

ここまで踏み込んで語ったとしたらちょっと驚きです。 
こういう後押しがあると憲法改正・国軍化というのも強ち非現実な話ではない気になってきます。

3本目、投資・財務面のコラム「一目均衡」、藤田和明・米州総局編集委員の署名記事。

アルゼンチンと日本。かつて、経済学者クズネッツはこう評したという。「世界の国々は4つに分類できる。先進国、発展途上国、そしてアルゼンチンと日本だ」。没落したアルゼンチンと、工業化で奇跡の成長を果たした日本。この2国は例外との意味だった。

その日本もアルゼンチンと同じ道を歩みつつある…という文脈ですが。 
トリビア的に面白い表現だな、と。 

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批判ではなく、残念

2012-12-09 23:24:48 | Sports
花巻東・大谷が表明「ファイターズの一員として頑張っていきたい」(サンケイスポーツ) - goo ニュース

本人の決断なんだから他人がとやかく言うことではないし、強行指名した日本ハムを批判するつもりも全くありません。

まずは日本でしっかりとプロとしての体力や技術を身につけてからメジャーを目指した方がよい、というのもきっと「正しい見解」なのでしょう。

しかし、残念だ。

何が残念って、結果的に「正しい見解」に沿った結論に至ってしまったことが残念。
成功への道は一通りではない。
「正しい見解」にあえて反逆する姿を見てみたかった、という意味で残念。

繰り返しますが、誰かを批判しているわけではありません。
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