月の満ち欠け 第157回直木賞受賞 | |
佐藤 正午 | |
岩波書店 |
『鳩の撃退法』が傑作だったので次作を期待していた佐藤正午。
本作で直木賞受賞、素晴らしい!
本作でも、時制の制御を軸にした構成力の確かさ、ミステリとしての完成度の高さを存分に味わうことができる。
ただテクニックが秀れているだけでなく、その話法を通じて、時空、そして人格の壁をも超えた想いの深さがぐっと伝わってくるのだ。
レンタルビデオ店での出会いから、2人が想いを深めていく過程、手探りで慎み深く、すれ違いそうな儚さ、それゆえの成就の幸福感、そして喪失感。
愛おしさに溢れる。
またまた傑作。