「あとがき」によれば、村上春樹は、第一部を書き上げたところで一旦目指していたものは完成したと思っていたとのことだが、第一部だけだとしたら、『世界の終り…』の焼き直しと『ノルウェイの森』っぽい恋人喪失の物語だけで、相当物足りないものになっていただろう。第二部、そして第三部が加わることで、本当の意味での「完成」に至った感は強い。
いつもの村上作品の主人公のように音楽の知識をひけらかすスノッブ感は最小限に抑えられ、これまたいつもの男子中学生の妄想みたいなセックス描写もなく、落ち着いて読み進めることができる。
紙幅のボリュームは相当のものだが、劇的な出来事が起こるわけでもなく、不思議なほど淡々と話は進んでいく印象。
『羊をめぐる冒険』以降の長編小説全作品を、1年以上かけて書かれた順に読んできて、ついにこの最新作まで読了した。思えば、村上春樹は全作品を通じてずっと「あちら側」と「こちら側」を描いてきた作家なのだという気がする。この『街とその不確かな壁』のラストに至り、ついに「あちら側」と「こちら側」の関係性に決着がついた印象を受けた。この先、村上春樹に描くべきものは果たして残されているのだろうか。
#ブクログ
いつもの村上作品の主人公のように音楽の知識をひけらかすスノッブ感は最小限に抑えられ、これまたいつもの男子中学生の妄想みたいなセックス描写もなく、落ち着いて読み進めることができる。
紙幅のボリュームは相当のものだが、劇的な出来事が起こるわけでもなく、不思議なほど淡々と話は進んでいく印象。
『羊をめぐる冒険』以降の長編小説全作品を、1年以上かけて書かれた順に読んできて、ついにこの最新作まで読了した。思えば、村上春樹は全作品を通じてずっと「あちら側」と「こちら側」を描いてきた作家なのだという気がする。この『街とその不確かな壁』のラストに至り、ついに「あちら側」と「こちら側」の関係性に決着がついた印象を受けた。この先、村上春樹に描くべきものは果たして残されているのだろうか。
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