小三郎が国防支出をギリギリまで削減しようとした理由は、「口上書」の第6条を見れば分かる。第6条では、ヨーロッパから顧問を迎え入れ、諸国(藩)に工場を造り、産業を振興する必要性が論じられている。小三郎は、殖産興業こそが喫緊の課題であり、ここに国の財力を重点的に注がねばならないと考えていた。そのためには国防に多額を費やすことはできない。これは今日に至るまで普遍的な真理である。
しかし当時の世は帝国主義時代の真っただ中である。いざ戦乱が勃発した場合、小三郎も2万8000人の兵力で事足りるとは当然考えていなかった。戦時にはどうするのか? その回答は最後の行にある。「乱世には国中之男女尽く兵に用立候程に御備之御所置有之候儀、御兵制之本源に御座候」。外国から攻められ戦争になった場合、国中の男女をことごとく徴兵して兵士とし、全国民が一丸となって祖国防衛の任に就くのだと。 . . . 本文を読む