本日は、国交省による「緑のダム否定論」の中で、「森林は、利水の観点から見ると渇水の原因になるので、採用できない」という主張を考察してみましょう。
森林は確かに、蒸発散によって雨水を大気中に返しているので、水を消費し河川水を減らすという側面を持ちます。その事は誰も否定しておりません。
ただし同時に、森林土壌に孔隙量が多いと、雨水を土壌中に貯留する機能や、また雨水を地下に浸透させる機能が高まり . . . 本文を読む
昨日の記事で書いた、「森林が成長し、その質が高まっていけば、森林面積は一定であっても、同規模の雨量の際の洪水流量は低減していく」という論点に関してもう少し加筆させていただきます。
長野県林務部の薄川の研究では、森林を考慮に入れた実際の基本高水流量(想定する降雨の際の洪水時のピーク流量)は、ダム計画において採用されている架空の「基本高水流量」(実際の観測に基づかず、経験値であるパラメーターを用 . . . 本文を読む
「緑のダム論争」は、今も日本で300あまり検討されている治水ダムを建設し続け、何十兆円という資金を環境破壊のために投じるのか、それともその何十兆円を、環境保全や温暖化対策に役立つ、もっと有用な公共投資に転用するのかという分水嶺で展開されている、日本の未来を左右するといっても過言ではない、きわめて重大な論争です。(ところで、国交省の皆様、あと300のダムを建設すると全部で何十兆円かかるのでしょう . . . 本文を読む
小泉政権の成立前後、マスコミは「日本国債が危機だ危機だ」と煽り立てました。それで日本国債は30兆円に減額され、減額された分はそっくりアメリカ国債の購入に回され、アフガニスタン戦争やイラク戦争の戦費になったのです。同じ新聞の政治面で「戦争反対」、経済面で「国債発行30兆円枠を守れ」という全く矛盾した主張が並んでいるのは、日本のマスコミの思考停止ぶりを象徴していたと思います。
どう見たって、世界最 . . . 本文を読む
「戦後の日本は実は社会主義国だったのであり、だから駄目になったのだ」という命題が、市場原理主義者のあいだで今更ながらによく語られています。「日本の官僚たちは、旧ソ連のノーメンクラトゥーラたちのように特権階級を形成し、それが業界と癒着して不効率な産業部門を温存させ、国際競争力を低下させたのだ」と。彼らのいう「社会主義」とは、田中角栄型のケインズ主義のことを指すのでしょう。
しかし、「社会主義」 . . . 本文を読む
昨日の投稿記事の続きを書きます。日本のケインズ派の「量ばかりに注目して質が分からない」という点でもう少し論じさせてください。
この間の日本でケインズ主義の立場から積極財政政策の必要性を声高に叫んできた代表的な論客としてリチャード・クー氏がいます。竹中平蔵氏の主張するサプライサイド政策・緊縮財政政策が現在の日本の状況下に照らし合わせて如何にトンチンカンかという点に関しては、基本的にリチャード・ク . . . 本文を読む
50代後半より上の世代の方々は、ご存知の方が多いと思いますが、かつて「構造改革」という言葉は、現在とは180度違う意味で使われていました。本日は、1950年代後半から60年代を通して一世を風靡した、本来の意味での「構造改革論」について書きたいと思います。
いま私は、1967年に発行された力石定一著『転形期の経済思想 ―その政治力学的考察―』(徳間書店)を読み返しているのですが、その発想の新鮮さ . . . 本文を読む
当面の日本の経済政策として、私が最も重要だと思うことは、明らかに経済波及効果が無くなっている「道路」と「ダム」という二つの無駄な公共事業費を可能な限り削減し、浮いた予算を、持続可能な未来社会を建設するための戦略的な環境プロジェクトに重点的に振り向けることだと思います。
道路とダムの膨大な予算を切り崩さない限り、新しいプロジェクトを実施するための財源を確保できません。無駄なダム予算の一部に関し . . . 本文を読む