代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

農産物関税を撤廃してはいけない理由その3 ―環境破壊―

2011年01月31日 | 自由貿易批判
 前回と前々回で農産物と工業製品の需要特性および費用特性の差異という論点は、いずれも新古典派経済学がほぼ無視している点である。しかし、今回述べる環境破壊の論点は事情が違う。  昨今の環境経済学の興隆によって、新古典派の枠組でも、財の生産から流通・廃棄の過程で発生する環境問題は「外部不経済効果」と定義され、理論に組み込まれている。そして新古典派の環境経済学は、外部不経済効果に対しては環境税を賦課して . . . 本文を読む

農産物関税を撤廃してはいけない理由その2 ―農業にグローバル市場は不要―

2011年01月21日 | 自由貿易批判
 新大陸の農業と競争を強いられたら、旧大陸の国々は歴史も文化も伝統もすべて否定されねばならない。そして大量の半失業プレカリアートを生み出した挙句、新大陸国家の不作により飢餓地獄に至る。  私は思う。農産物の関税撤廃を主張する政治家とマスコミと知識人に対しては、以下のように誓約させるべきである。「もしTPP参加の結果、日本で飢餓が発生し、餓死者が出るような事態になった場合、その全責任は私たちにあります。その場合、私たちは率先して自分の食物を飢えている人々のために捧げます」と。 . . . 本文を読む

農産物関税を撤廃してはいけない理由その1 -飢餓を生み出す- 

2011年01月14日 | 自由貿易批判
******農文協編『TPP反対の大義』9頁の宇沢弘文論文より*** (前略) 自由貿易の命題は、新古典派理論のもっとも基本的な命題の一つである。しかし、この命題が成立するためには、社会的共通資本の存在を全面的に否定した上で、現実には決して存在し得ない制度的、理論的諸条件を前提としなければならない。主なものを挙げれば、生産手段の完全な私有制、生産要素の可塑性、生産活動の瞬時性、そして全ての人間的営為に関わる外部性の不存在などである。しかしこの非現実的、反社会的、非倫理的な理論的命題が、経済学の歴史を通じて、繰り返し登場して、ときとして壊滅的な帰結をもたらしてきた。 (後略) . . . 本文を読む

関税と農業保護が必要な二つの理由

2011年01月11日 | 自由貿易批判
 菅首相が「平成の開国」などというおバカな主張を政権の重要課題に掲げ、6月までにTPP参加の是非を決定するなどと愚かなことをいうもので、どうしてもこの問題を書かざるを得ません。日本を「開国」せなばならないということは、今まで「鎖国」していたとでもいうのでしょうか? 驚くべき常識外れといえるでしょう。首相は財界と米国と財務官僚にシッポを振ってさえいれば政権を維持できると踏んでいるのでしょうが、それじ . . . 本文を読む

やはり戦国村は必要だ(大河ドラマ・江を見て)

2011年01月10日 | 歴史
 年末に書いた記事で八ッ場ダム予定地を国有の戦国村にして、ダムを中止した残金で戦国時代の山岳城郭と城下町と農家などを再現し、「時代劇版ハリウッド」にすべきと論じました。以下の記事です。 http://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/e1c594a81caa64a4d9485f101593d508  昨日放映された大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」を見て、やはり戦国村は . . . 本文を読む

馬淵国交大臣を変えてはならない

2011年01月08日 | 治水と緑のダム
 菅首相が、馬淵国交大臣の交代の調整に入った。この間の私のブログを読んでいる方はわかって下さっていると思いますが、ダム問題に関して馬淵大臣のやっていることは基本的に正しいのです。(スピードが遅く、措置が不徹底な部分はありますが・・・)。  ゆえに、河川官僚(とくに関東地方整備局)にとっては、ただちに変わって欲しい大臣だったのです。今頃、河川官僚たちは馬淵さんを追い出せて「してやったり」とほくそえ . . . 本文を読む

TPPは環境と雇用を滅ぼす  -年頭のあいさつに変えて」 

2011年01月02日 | 自由貿易批判
 元日の各社新聞を買い集め社説を読み比べてみた。びっくりしたのは読売と朝日の社説が内容から論旨までほぼ同じだったことだ。両社示し合わせて書いたのだろうか? いよいよ翼賛体制成立間近かと背筋が寒くなった年頭であった。  両紙社説で共通したのは以下の三つの論点だ。①財政破たんを食い止めるため消費税を増税せよ、②TPPに参加せよ、③そして民主・自民両党は協調せよ(連立政権樹立を意味している)。朝日の場 . . . 本文を読む