代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

アマゾン火災問題の原因は自由貿易

2019年09月21日 | 世界の森林問題
 アマゾンで急増している森林火災。  ブラジルは、2003年にルーラが大統領になった頃、熱帯林保全にも真剣に取り組む姿勢を見せ、実際に効果を上げ、希望の光を感じたものであった。しかし右翼のボルソナーロが大統領になるや否や、絶望の闇に閉ざされたようだ。彼こそは、ネタニヤフや金正恩などの比ではない、世界人類最大の脅威といってよいだろう。アマゾンの熱帯林が消えることは、気候変動をさらに加速させ、この惑星 . . . 本文を読む

国有林コンセッションの悪夢

2019年05月17日 | 世界の森林問題
コンセッションという経営形態は盗人の原理。コンセッションという経営形態は市場原理にも反する。通常の企業であれば、自らが所有する資産を使って、社会的責任を伴って経営するものだ。しかるに、コンセッションという経営形態は、国民の資産に寄生し、リスクは納税者に負わせ、利益だけをかすめ取ろうという経営形態なのである。 新自由主義というのは、その生産手段の所有者が責任をもって生産するという、通常の市場原理にも反するようになる。すなわち、新自由主義の最終形態とは国民の資産と税金に寄生し、納税者にひたすら負担を強いながら、ボロ儲けしようという経営形態が跋扈するようになるのだ。 . . . 本文を読む

『SPA!』(2009年3月17日号)に私のコメントが載っています

2009年03月14日 | 世界の森林問題
 ブログの更新サボっていてまことに申し訳ございません。書かなきゃいけない論文に追われたりしている内に、ブログに時間を割く精神的余裕がまったくなくなっておりました(もうしばらくこの状態は続きそう)。    手前ミソで恐縮ですが、一つ宣伝させていただきます。先日、イラクやレバノンやガザの取材で精力的に活躍されている尊敬するフリージャーナリストの志葉玲さんが私のところに取材に来て下さいました。  何で . . . 本文を読む

学生と間伐実習をしてきました

2007年11月26日 | 世界の森林問題
 今回、私たちが間伐させていただいた材も、やはり泣く泣く山の中に放置してきました。学生たちの中からも、放置されている間伐材を見て、「もったいない、何とか有効に使えないだろうか」という声が上がったのはうれしいことでした。3年生のSくんの出したプランは一考にあたいするかも知れません。S君のプランとは、大学の体育会の合宿で、筋トレをかねて、間伐材の運搬作業をやってしまおうというもの。森林組合の皆様も、「それはおもしろい」と肯定的でした。山から運搬してきた材を森林組合で買い上げれば、宿泊代くらいにはなるのではないかというおはなしでした。つまり運動部はタダで合宿できて筋トレができるという寸法。これは一考に値しそう。 . . . 本文を読む

伐採後植林せず25%! 『西日本新聞』の記事紹介

2007年02月02日 | 世界の森林問題
 現在の日本では、あまりにも木材価格が低すぎて、林家はみな林業の経営意欲を失ってしまっているので、九州ではじつに25%の伐採場所で、再造林がなされないまま放棄され、土砂災害と洪水の危険性を高めています。  日本では再造林費用の70%くらいは補助金として出ますが、木材価格が低すぎて、残りの30%も出せないで、造林が放棄されているわけです。 . . . 本文を読む

地球温暖化対策としての関税政策

2007年02月01日 | 世界の森林問題
一般に、森林を炭酸ガスの排出源から吸収源へと転換し、さらに化石燃料の削減にも寄与させるためには、以下の5点の対策が必要となるでしょう。 ①天然林の土地利用転換(農地・放牧地などへの転用)を可能な限り抑制する。 ②天然林からの木材伐採量を、年間成長量に見合う持続可能な水準に抑制する。 ③荒廃地や生産性の低い農地においては、新規造林・再造林を推進する。 ④天然材供給の減少分は、造林地からの人工材供給で代替する。 ⑤化石燃料の消費を抑制するため、造林地から供給される人工材のエネルギー利用を促進する。  しかしながらこれらは、森林を排出源から吸収源に転換するという観点でのみ展開した机上の空論です。現実には、WTO体制下の自由貿易システム、国の法律や土地制度、政府の財政状況、林産物の市場状況など、さまざまな制約条件があるので一筋縄ではいきません。 . . . 本文を読む

本の紹介: 柳幸広登著『林業立地変動論序説 -農林業の経済地理学-』(日本林業調査会)

2006年11月16日 | 世界の森林問題
 ニュージーランド、チリ、南ア、オーストラリアなどでは農廃地や牧草地での人工造林が進み、人工材の供給国として台頭する一方、わが日本の人工林は相変わらず外材に押されてちゃんと利用されず、日本で消費される木材といえば海外から輸入される天然材(違法伐採材を多く含む)に大きく依存しています。これだけ地球温暖化や生物多様性の喪失が大問題になっているにもかかわらず・・・。  本書は、どうしてこういう理不尽で非合理な現象が起こるのかに興味のある方にお薦めの本です。ここまで地球生態系に悪影響を及ぼす非合理な行為がまかり通る現実を解明するための鍵となるのが、本書で扱う「地代」の概念です。 . . . 本文を読む

森林が増えている国々(中国、ベトナム、キューバ)と減っている国々

2006年08月10日 | 世界の森林問題
 8月9日の記事のコメント欄でChic Stoneさんから以下のようなコメントをもらいました。<引用開始>「本質的に、民主主義+資本主義で「木を植える」ことはできないのではないでしょうか。木が育つまでには時間がかかりすぎますから、民主主義では投票者は自分は損するだけで受益者は孫です。資本主義においても植林に投資するよりどこぞの国債に投資するほうが得です。もちろん原始林を皆伐するほうが得です」。<引 . . . 本文を読む

中国の割箸輸出規制について

2006年04月02日 | 世界の森林問題
 Chic Stoneさんが、「割箸、中国の本気?」というエントリーをトラックバックして下さった。100円ショップで一膳一円の割箸を買い求めようとしたところ、「中国の割箸輸出規制にともない、入荷しにくくなっている」とのことだった。ちょうど先月中国にいた頃、中国の全人代で日本への割箸輸出が問題にされていた。全人代の某議員が、「日本は自国の森林を保護する目的で、中国から割箸として大量に輸入している。中 . . . 本文を読む

レイテ島の地すべり災害と違法伐採

2006年02月21日 | 世界の森林問題
 村を丸ごと飲み込み1400人あまりが行方不明となっているフィリピン・レイテ島の地すべり災害と上流域の違法伐採の関係が論議を呼んでいます。地元住民は違法伐採を非難し、レイテ島の環境省は「違法伐採はあり得ない」と語り、あくまで自然災害との立場を主張しているそうです。(『毎日新聞』2月21日朝刊)。毎日新聞の大澤文護記者は現地まで飛んで精力的に取材しており、その報道姿勢は評価できます。  もっともフィ . . . 本文を読む

FAOの貿易と森林特集

2005年05月19日 | 世界の森林問題
 FAO(国連食糧農業機関)の林業局に『Unasylva』という機関誌があるのですが、その最新号で「貿易と持続可能な森林管理」という特集を組んでいます。その号に「Is free trade compatible with sustainable forest management?」というタイトルで、林産物貿易の自由化を批判した私の共著論文の内容が紹介されています(論文のサマリーなので1ページの短 . . . 本文を読む

明日、NHK総合の「明日を読む」で違法伐採問題

2005年04月28日 | 世界の森林問題
 先週、NHK解説委員の方から、昨年のフィリピンの洪水災害と違法伐採の関係に関して取材を受けました。明日4月29日(金)の11時45分からNHK総合テレビの「明日を読む」で取り上げられるそうです。私の名前は出ないとは思いますが、違法伐採現場で撮影した写真などをNHKに提供しておきましたので、私のコメント内容とともにいくつか紹介されるかも知れません(もしかしたら編集で全部カットされるかも知れませんが . . . 本文を読む

ロシアの天然林と中国の人工林 ―そして両者の不幸な関係を媒介するWTO―

2005年03月06日 | 世界の森林問題
 昨日、大阪の国立民族学博物館で行われた国際シンポジウム「北東アジアにおける森林資源の商業的利用と先住民族」にコメンテーターとして出席してきた。シンポジウムは極東ロシアの森林と先住民族に焦点を当てたものである。私はロシアで調査をしたことはないのだが、何故か、このシンポジウムに呼ばれた。というのも、現在ロシア材をもっとも輸入している国は中国であり、「ロシアの森林資源の持続的利用が可能か否か、その鍵を . . . 本文を読む

森林破壊は政府の失敗か?

2005年01月18日 | 世界の森林問題
 「エコロジカル・エコノミクス」の林産物貿易自由化問題を扱った共著論文に関して、もう少し加筆したいと思います。  私があの中で暗に訴えているのは、「熱帯林破壊は『政府の失敗』の結果であり、各国政府の森林ガバナンスがしっかりしていれば防げる問題である」という支配的言説に騙されるな、ということである。  この言説は、簡単にいえば、東南アジアの森林破壊の責任をマルコスやスハルトやマハティールのような「独 . . . 本文を読む