和風建築の魅力のなかで、木組みの迫力があると思います。
ごつごつとした風合い豊かな自然木が、力強く組み合わされているさまは
まさに「構造」という実感を伴って肌身に伝わってくるもの。
よく、男性の施主さんが、自分の家の構造を見ていてわくわくし、
だんだん、内装仕上げの段階になってくると、気持ちがしぼんでくる、
というようなお話を聞くことがあります。
それって、こういう男性的な、構造の迫力が感じさせる部分なのかなと思いますね。
さて、写真は会津の家の3弾です。
メインの居室のリビングダイニングの豪快な柱・梁の空間です。
ここは平屋なのですが、天井を張らず、構造をそのまま表して、
屋根なりの空間一杯に力強く表現されています。
梁は、端部が曲がっている材料を使っています。
聞いたら、地元の山から使えそうな自然木を選んできて、
その根の曲がり具合を計算しながら、こうして利用しているのだそうです。
写真ではそのウチの2本ほどが見えていますが、合計で3本くらいありました。
古民家などでは、こういう自然木の特性を活かした木組みが
よく見られる、というか、きちんと製材することのほうが難しかったのですから、
大工仕事の、現場対応力として必然的に
こういう曲がった素材を活かす技術が生まれてきたのでしょうね。
しかし、今日のようにプレカットばかりになってくると、こういう技術の延命は難しい。
やはりこの家では、現場で墨付けして木組みの仕口といわれる断面まで
臨機応変に考えて、組み上げていくのだそうです。
まさに、人間が作った、という手業が伝わってくる、
その息づかいのようなものまでが感じられてきます。
それも、自然木の持つ風合い、そのかたちを尊重して仕上げるのです。
考えてみれば、こういう手仕事こそ、もっとも贅沢なものなのかも知れません。
職人、っていうことば、司馬遼太郎さんが
なんて素敵な響きを持った日本語だろうと、書いていたことがありましたが、
こういう空間にたたずんでいると、そんな感慨が迫ってくるものがあります。
職人たちの手業が生み出す、自然木が織りなす空間デザイン。
なんとも、和のすばらしさが伝わってくる住宅でした。